劣等紋の超越ヒーラー 〜無敵の回復魔法で頼れる仲間と無双する〜
蒼月浩二
第一章
第1話:回復術師は虐げられる
「おい給料泥棒、早くこっちを治せ」
「ああ、今行く。でもアルク、いいかげんちゃんと名前で呼んでくれ。俺にはユージって名前があるんだし」
冒険者に怪我は付き物。
戦闘中の怪我はもちろん、戦闘後も目立った外傷以外に損耗した筋肉や骨にはヒールが必要になる。
回復術士としてパーティメンバーの生命力・魔力の管理と戦闘後のケアをするのが俺の仕事になっている。
高度なスキルが必要とされるため尊敬される存在なのが回復術士だが、俺はとある理由でパーティからぞんざいな扱いを受けていた。
でも、それに不満はない。
俺は大切なパーティメンバーが元気に明日を迎えられればそれでいい。名誉になんて興味がないし、やりたい仕事に誇りを持ってできているので気にしないことにしている。
「へっ、劣等紋が偉そうに人間面してんじゃねーぞ。うちはSランクパーティだ。そしてこの俺は次期サブリーダー有力候補! 劣等紋を、それもヒーラー待遇で入れてやってることに毎日感謝しろっ!」
「わかってるつもりだよ。薬草で回復するよりも安くヒールを提供するのが務めだ。でも、俺だって頑張ってるんだから給料泥棒は酷いと思うな」
俺は左手の甲に浮かぶ紋章を眺めた。
この世界には七つの紋章があり、どれか一種類の紋章と生涯付き合うことになる。
『火の紋章』『水の紋章』『地の紋章』『風の紋章』『聖の紋章』『闇の紋章』……そして、俺が持つ『無の紋章』——通称劣等紋である。
それぞれの属性ごとに特徴があるのだが、『無の紋章』は特徴がないということが特徴になる。
全ての属性に特化する反面、他の紋章と比べて成長限界がかなり低いのだ。
「劣等紋をSランクパーティに入れてやってるのはうちくらいのもんだ! どう頑張っても劣等紋じゃBランクが限界。それを俺たちアタッカーの腕でカバーし、古参だからと守ってやってる。その自覚があんのか? ああ?」
劣等紋が良く思われていないことは重々承知しているが、何もこんな言い方をしなくていいんじゃないか?
こいつは後輩なんだし、さすがにカチンとくる。
俺はこのパーティがEランクだった時からずっと務めてきたのだ。
それに——いや、べつに話す必要はないか。そもそも信じてくれるかわからない。
わざわざアピールしなくても、日々のパフォーマンスを見ていればきっとみんなわかってくれるはずだ。
「俺だって紋章を言い訳にせず、コツコツ技術を磨いてきたんだ。能力以上に技術がモノを言う職業だし、その結果がSランクパーティで回復術士をやれていることだと思っている。じゃあ、他にもヒールしなきゃいけないメンバーがいるから、これ以上何かあるなら後で言ってくれ」
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