第十話『一蓮托生』
「あんっ……あんっ……」
……その夜。
「あっ、気持ち……いい……っ」
東宝ビルは地上三十階……二人しかいない静寂とした空間で、互いの肌がぱんぱんとぶつかり合う音だけが響いている。
普段は独りで使っているのであろう……西洋の城にありそうな、大人三人分であれば余裕をもって一緒に寝れそうな大きなベッド。
「ふっ……んふっ……」
……現在そのベッドに横たわり、俺を自部屋に呼び出した斬江は、その上から俺の局部を挿入させながら、俺の上に騎乗して腰を振っている最中だ。
斬江は不定期で、夜な夜な俺を自分の部屋に呼んでは、こうして俺に夜の相手をさせている。
薄暗い部屋の中で、外から照らされる月明かりが、彼女の裸、ゆさゆさと揺れる二房の大きな乳……顔や肌に流れている汗を白く輝かせる。
そして時節、髪をかきあげながら染まっている頬を晒し、ふふっと笑っている彼女の姿は妖艶さながらであった。
「……くっ」
「大和は……気持ちいい……?」
俺の方に前屈みになり、釘を打つようにして腰を振るだけでは無く……斬江は後ろに手をついて腰をくねくねと動かしながら様々な責め方を仕掛けてくる。
「……気持ち、いい……ですっ……」
「うふっ……大和可愛い……んんっ」
斬江の質問に答えると、彼女は再び前屈みになり、そのまま顔と俺の顔とで近付かせるとディープキスを開始させた。
「うっ……むふっ、んんっ……」
「やまと……ほらっ、もっと……舌とか歯とか……舐めなさいよ……」
「ふーっ……ふーっ……」
本当はこんな事……したくない。
唾液と唾液が交わる下品な音。
しかし、そのように聞こえる音でさえも、今は俺を絶頂へと迎えさせる為の引き金でしか無い。
「やまとっ……やまとっ……!」
「ん……ふっ……!」
されるがままの俺を味わい、犯し、貪り尽くす斬江。
上はディープキスをされる事で責められて、下は釘打ちをされる事で責められている。
本当はしたくなくても、逃げ場の無い今の状況だと、斬江以外の事を考えられなくなってしまう。
……かつての倉庫の更衣室で見た、胸以外はほぼ上裸であった、雪のように白い肌であった真緒を忘れてしまうぐらいに。
……その時に抱いた、真緒に対しての欲情の気持ちを上書きしていくように。
「はぁはぁ……大和……凄い顔っ……ふふんっ……」
斬江は俺の気持ち関係無く、容赦無く快感の海へと引き摺り込ませて俺の事を犯した。
……そして、限界を迎えてその時は突然やってくる。
「ぐっ……ううっ……!?」
「あらっ……!? んんっ……出しちゃったの……?」
「ふっ……ふーっ……!」
「うふふ……まだ私はイってなかったのに、悪い子ねぇ」
「……すみません」
「……じゃあ、私がイくまでもう一回するわよ」
「……!?」
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……そして事後。
「……よいしょっと」
斬江と俺は全裸のままベッドに横たわり、斬江は背後から腕を回して俺を抱き枕にすると、上からシーツを被ってそのまま夢の世界へと旅立とうとしていた。
「はぁ……はぁ……」
……結局、あの後斬江が絶頂を迎えるまでに、戦いは三ラウンドまで行われた。
目を瞑ればこのまま眠ってしまいそう……しかし斬江の会話に付き合う為に、このまま俺の方が先に眠ってしまう訳にはいかない。
「……会社の方はどう? 何か分かった?」
唐突に飛んできた斬江からの質問。
「はい……今日は注文した客に届ける荷物が、沢山保管されてある倉庫を港区にて見つけました」
「その荷物は隙を見て明日……今日は仕事が休みなので、色々と調べてみようと思います」
それに対して、息と心を落ち着かせながら慎重に答える。
「そう……頑張ってね」
真相までは結構駒を進められたと思うのだが、あまり興味の無さそうな、冷めている口調で返事をした斬江。
今は純粋に疲れているだけなのかもしれない……先程に頬を染めて、艶やかに笑いながら感情的になっていた時の斬江は、演技をしていたのでは無いかと思ってしまうぐらいの変わり様だ。
「……あとは真緒ちゃんが警察の人間だったとはねぇ」
「……はい」
「極道の親が嫌で……それで真緒ちゃんは対称的に警察になったという事かしら」
「……ですが相手が警察であったとしても、帝組の存在が身近にあるのは確かです」
「……引き続き油断はしないように、こちらの情報は漏らさない程度に、彼女とは協力し合いながら捜査を進めていくつもりです」
……これまでに斬江に報告したのは、怒澪紅と思われる組織が設立している会社が、オンラインショップを運営している事業であったこと。
詳細不明な商品を届ける際に、何故だか宅配業務まで自分達でやっているという事。
……そしてその場所には真緒さんも潜入していたという事だ。
「本当に用心しなさい……何度も言っているけど、危ないと思ったらすぐに逃げても大丈夫だから」
「……ありがとうございます」
斬江は監視役を通して、俺と真緒さんが仕事以外でも一緒にいる所を認知している筈なのに、その事に対しては何故だか指摘してこない。
……という事はこれからも真緒さんと一緒にいて構わないのか?
とにかく彼女とは付かず離れずの関係を保ちつつ、何か仕掛けてきたら何時でも盾で防げるように心構えておこう。
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……翌日。
斬江の相手をした日の朝は、兄貴達に飯を作ったりしなくてもいいという点では楽だ。
いつもなら周囲にあるソファで寝ている、兄貴達の気配を一切感じないままで迎える新鮮な朝。
パンツを履いて、斬江が目を覚ますよりも先にベッドから離れて、顔を洗ったり歯を磨いたりして身支度を整える。
スラックスも履いて、ワイシャツのボタンを結びながら、朝日が降り注いで銀色に染まっている東京の都景を見て気持ちを引き締める。
いい眺めだと余韻に浸っている場合では無い。
……今日も俺は、あのビル群に紛れて活動をする社会人の一人となるのだ。
「んん……おはよう、大和……」
「……おはようございます」
それから斬江も目を覚まして、ベッドから体を起こした。
目を擦りながらシーツを抱き締めて大きな胸を隠し、むにゃむにゃと言いながら大きな欠伸をする斬江。
彼女とは何だかんだ言って五年ぐらいの付き合いとなる。
……この普段はふわふわとしている彼女が、歌舞伎町を統べる極道の組長だとは今でも信じられない。
「あら……もう行くのね?」
「はい……そろそろ調査に向かいます」
「行ってらっしゃい……今日はいいお土産話、期待しているわよ」
「……行ってきます」
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その後……先程空高くから見下ろして、ジオラマのように感じていた、背の高い建物に囲まれた地上へと戻ってきた。
夜の歌舞伎町はお祭り騒ぎのように賑やかだが、昼間は社会人達の抜け道として利用される。
ひとまず社会人達を避けながら、朝飯を食べる為に近場のコンビニエンスストアへと向かう。
歌舞伎町を通る人数が多ければ、そのコンビニを利用する客も多い。
今日は何かのイベントなのかと思わせるくらいの長蛇の列に、俺も今から並ばなければいけないのかと思うと溜息が漏れる。
眠気覚ましにアイスコーヒーでも飲むか……ここのコンビニは氷に入ったカップをレジに持って行き、会計した後にコーヒーマシンにてセルフで抽出するというシステムだ。
まずはその氷カップを手に取ろうと、アイスケースに触れようとしたその時……別の者もまた、カップを取ろうとしていたのかその者と手が触れ合ってしまった。
「あ、すみません……」
「こちらこそ……む、仁藤か」
反射的に手を引っ込めて、その者の方を見ると……刑事らしい緑色のコートを着た、寒さで頬や鼻を赤くさせている真緒さんが立っていた。
「真緒さん……おはようございます」
「どうした、今日は休みであろう……それともこれから別の仕事があるのか?」
「いえ、少し調べ物を……」
「とにかくここで話していたら他の客の邪魔だ。 続きは外に出てからにしよう」
「了解です」
それから真緒さんと共にレジに並んでいると、会計直前で彼女は奢ってくれるという事で俺からカップやサンドイッチを取り上げてしまった。
「すみません、ご馳走になってしまって……頂きます」
「ふふっ、構わんさ。 会社の先輩らしいだろう?」
互いにコーヒーを入れて、真緒さんと共にコンビニの出入口横でコーヒーを飲む。
本来なら真冬に飲む物では無く、アイスコーヒーは冷たいのに、誇らしげな笑みを浮かべている真緒を見ていると体が温まっていくようだ。
先輩や歳上としての包容力なのか……俺に姉がいたらこんな感じなのだろうかと、彼女と会う度に思う。
「……しかし、何故真緒さんもコンビニに?」
「私はコーヒーを飲みに来ただけさ……日課にしていてな、毎朝コーヒーを飲まなければ仕事をする気になれないのだ」
「……ただのカフェイン中毒かもしれないがな」
むにゃむにゃと目を擦りながら、欠伸をした真緒さん……本当は眠いのに無理矢理カフェインを摂取して、活動をしようとしている所から社会人としての意地を感じる。
「という事は、これからお仕事ですか?」
「あの会社での仕事は休みだ……だがお前と同じように、これから色々と調べ物をしようと思っている」
「……ならば今日の仁藤は、実質は暇だという事か」
「……え? はい」
「折角会ったのだ。朝飯を奢った礼として私に少し付き合え」
「ちょっ、えっ……!?」
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真緒さんに手を取られ、言われるがまま彼女の後に着いていく……
俺達が向かっているのは、歌舞伎町から見てゴールデン街の方角……昨夜に真緒さんと別れた区役所通り前を横切り、そのまま靖国通りを突き進んでいく。
「あの、付き合うのはいいのですが……俺は俺でこれから調べ物をしないと……」
「だから私と一緒にやろうと言っているのだ。 二人の方が色々と、情報も共有が出来る……それにお前には見せたい物もあるのでな」
「俺にですか?」
「……それとも、私と行動を共にするのは不服か?」
一度手を離し、立ち止まって俺の方へと振り返る真緒さん。
折角誘ってやったのに何だその態度はという事か、彼女の表情の方が不服そうだ。
「それは……」
だが単独で行動をするにも、これといった計画は立てていない。
単独で工場に潜入しようにも、そういう技術や知識も無い。
むしろこれからどうやって調べていこうか迷っていた所だ。
警察で調べ物には経験豊富そうな真緒さんと一緒にいれば、情報が沢山手に入る……帝組が身内にいるのに、斬江も認めていたならば答えは決まっている。
「……いいえ、ご協力感謝します」
「ああ、ありがとう……あと誘い方が強引であったな、すまない」
「そんな事無いですよ」
……それから真緒さんの後に着いて行き、住宅街にやって来て、やがて真緒さんは二階建ての白いアパートの前で立ち止まった。
「……着いたぞ、ここだ」
「ここは……」
「ここが昨日話した私のアパートだ。 寒いからとっとと入ろう」
「あの……お邪魔して大丈夫なんですか?」
「ん? 構わんさ。 逆に公共の場所で話をすると、どのような奴に聞かれているか分からんからな」
仕事的な理由とは言えど、女性が暮らしている部屋に男の俺が侵入して大丈夫なのであろうか。
しかし真緒さんは、最もな理由を述べている所から全然気にしていないようだ。
「……なるほど」
「だが部屋の中が散らかっているかもしれん……少し待っていてくれないか?」
「はい」
「すぐに戻ってくる」
真緒さんの部屋の扉前にて、彼女は俺よりも先に部屋に入り、どったんばったんと物音を立てながら片付けを開始した。
そうして五分後……。
ゆっくりと扉を開けながら、真緒さんが隙間から顔を出すようにして現れた。
「お待たせしたな……どうぞ入ってくれ」
「はい……お邪魔します」
「うむ……」
「……どうされましたか?」
「実は緊張していてな……親父以外の男を、自分の部屋に入れるのは初めてなのだ」
「ほう……それは光栄ですね」
「どういう意味だそれは……」
「いえ、そう言いたかっただけです」
俺にまで感染してしまう程の、真緒さんの緊張感だが……部屋の中は客人を入れても全く恥ずかしくないぐらいに、清潔で片付けられていた。
ワンルームの部屋にはソファ、ベッド、テレビなど……生活に必要な物が一通り揃っているが一切無駄な物は無く、散らかっていた頃の状態が想像つかない程だ。
「……」
「……あまり部屋をじろじろと見てくれるな、恥ずかしい」
「あっ、違います……考え事をしていただけですから」
「考え事だと?」
「はい……皇組で男の俺を勝手に部屋に入れたら、貴方のお父様がどう思われるかが心配で……」
「ああ、それなら心配しなくてもいいぞ。ここは私の家だからな、誰を入れるかは私が決める事だ」
「はい……」
「取り敢えず座ったらどうだ?」
「え? あっ、はい……失礼します」
「私は飲み物を取ってこよう」
「お構いなく」
「遠慮はするな、お前は一応客人なのだからな……紅茶しか無かったのだが、それで良いか?」
「はい、大丈夫です……頂きます」
台所にて紅茶を淹れている真緒さんの背中を見ながら、ソファに座って紅茶が運ばれて来るのを待つ。
「……それでは本題に入るぞ」
……やがて紅茶の入ったティーセットを二つ運びながら俺の元にやってきた真緒さんは、俺の隣に座ってテーブルに置かれていたノートパソコンに手を取った。
「はい、お願いします」
「お前も気になっているだろうが……まず最初にはっきりさせておきたいのは、あの倉庫に積まれていたダンボールの中身だ。 そうだろう?」
「……そうですね」
緊張気味の雰囲気は一切消えて、真剣な顔つきになった真緒さんに合わせて、俺も気持ちを切り替える。
「更衣室での会話は覚えているか?」
「配達中に中身を開ければ、客からのクレームに繋がって会社側にバレるかもしれない……ですか?」
「その後に私は、自分達で買えば問題無いが、そういう訳にもいかないと否定をしたが……」
「……結局その方法は採用する事にした」
「そうなんですか?」
「ああ……上司にその方法で調べていいかと聞いたら許可が降りたのでな」
「中身が麻薬であった場合でも、所持し続けない限りは速やかに
「なるほど……」
「分かってはいようが、勝手に中身は盗らんようにな」
「盗りませんよ……」
そう警告をしながら真緒さんはノーパソを開いて、インターネットブラウザを立ち上げて、検索欄にカタカタとアドレスのようなものを入力している。
「……それで、どうやって購入をするのですか?」
「勿論オンラインのショップから購入をするのだが……そのサイトにはサイトの名前では無く、アドレスを入力しないと辿り着けないのだ」
入力した後、トップ画面から暗転して、読み込みが終わったと同時に、黒と赤色を基調とした初日に社長に見せられていたサイトにジャンプした。
「これだ、見覚えがあるだろう?」
「……こんなの、よく分かりましたね」
「アドレスはさくら通りの事務所の方で、隣に座っていた従業員のパソコンから拝借したものでな……ウイルスなどは入っていないようだが、それでも怪しさてんこ盛りのサイトだ」
「そのようなアドレスでしかアクセス出来ないサイトに、新規の客達はどうやって商品を購入しているのでしょうか?」
「誰かにアドレスを教えて貰った以外あるまい……それが会社の関係者からなのか、オンライン上でのただの知り合いからなのか、はたまたそれ以外の誰かからなのか……その事は考えてみるとキリが無いから後回しにしよう」
「はい」
二人で宇宙並に果てしないインターネットの広さに途方に暮れながらも、真緒さんはサイトのメニューから商品リストを開いた。
「英語でどれがどれだか分かりませんね……」
「どれでもいいさ、なるべく安い物がいい」
「……てか事務所でも思ってたんですけど、何で英語なんですかね」
「日本人だけでは無く世界中の人々もターゲットにしているという事か……」
因みに俺は、今までに客が利用しているサイトのアクセス方法は分からず、商品も全て従業員用のアプリケーションから、アルファベットと数字が組まれた四桁の番号で管理をしていた。
何もかもが怪しいと感じていたのに……しかし俺は、感じていただけで後で纏めて調べればいいだろうと思い行動には移さなかった。
それに対して隣に座っていた従業員から情報を盗むという、真緒さんの発想力と行動力。
己の非力さを感じながらも……同時に会社についての新情報を吸収する度に、それは真緒さんが入手して俺に教えてくれている物だという事実に虚しい気持ちになる。
「……真緒さん、すみません」
「……どうして謝る?」
「真緒さんは、俺と情報を共有しようと仰って頂けましたが……俺から提供出来る情報は、実は何も無いのです」
「……」
「それなのに、真緒さんは既にこれだけの情報を集めていて……何だか一方的に情報を教えて頂いてるみたいで、申し訳ないです」
「……」
そうして落ち込んでいると、真緒さんはそっと俺の頭に触れてきて慰めるように撫で始めた。
「……真緒さん?」
「情報を一方的に教えたと言うよりは……私はその情報を共有できる仲間が欲しかっただけだ」
「仁藤は会社にいる時は緊張気味であったし、調査の仕方が分からなかっただけかもしれん……だが私は私の方で、真相を知れば知る程に不安になって来ていたのだ」
「警察で調査をしている身としては、どのような事実でも受け入れなければならないのだが……どうしても精神的には応えてしまっていてな」
「……」
「これまではそうした気持ちの中で調査をしてきたが……今回は仁藤、お前がいた」
「本来なら独りで活動出来るようにしていかなければならないのだが……どうやら私は仕事中でも、頑張りを評価してくれる常に親しい者といなければ落ち着かない奴らしい」
「……」
……その言葉はつまり、俺と一緒にいると落ち着くという事を意味しているのか?
いやだが彼女にとって相手が親しい者であるならば、別に飯田さんでも誰でも良かったのかもしれない。
俺からそっと手を離しながら、恥ずかしそうにふっと笑う真緒さんの笑顔を見て……彼女が放った言葉に、どういう意味が込められているかの討論が脳内で始まる。
……男とは勘違いをしやすい生き物だ。
少々の優しい感じの言葉を女からかけられただけで、この者は俺に好意を持っているのかと勝手に思い込んでしまう。
とにかく今までは、仕事に対してエリートだと思っていた真緒さんの印象は、意外とデリケートだという事も分かった。
そもそも警察という職業が、ストレスが溜まりやすいというのもありそうだが……辛い時は親しい者の傍にいたくなるという気持ちは分かる。
「……と、すまない。話がズレてしまったな、本題に戻るぞ」
「ああ、はい……」
はっと我に返り、俺から顔を逸らすようにして、パソコンの画面の方を向いた真緒さんに合わせて、俺も気持ちを仕事のモードへと切り替える。
「では早速、商品を購入していこう」
「はい」
商品リストに書かれてある商品の名前は不明だが、商品一個一個に表示されている画像は、どれも抗生物質やカプセルといった医薬品のようなものばかりだ。
「……さて、これで後はここに荷物が届くのを待つだけだぞ」
「本当に、あの薬の正体は麻薬なのでしょうか……」
「それは届いてからのお楽しみという奴だな」
……薬の正体が違法薬物だとしても、それを斬江に報告したら、彼女はどのような行動に移すのか。
この任務の最終目的は、半グレの集団である怒澪紅が行っているシノギの正体を暴き……潰す事。
……そうしようと思った理由は違えど、目的は同じだという事で、今は真緒さんと協力して怒澪紅が営業していると言われている会社の調査を行っている。
だが本来なら共に行動するべきでは無い、警察と極道というイレギュラーな組み合わせ。
今は味方だが、いつ敵に回るかが分からない……先程の真緒さんの言葉が、彼女からの本音の告白だったとしても、引き続き油断はしないようにしていこう。
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