第IV章 raid
十六話 デート
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァ!!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
僕は姉さんと殴り合いをしている。トレーニングである。ジョジョネタ?知るかバカうどん(???)ちなみにオラオラ言ってる方が僕である
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァ!!」
拮抗、中々いい勝負である。
「無駄無駄無駄……無……駄……」
姉さんは疲れてきたのか、繰り出す手の速度が格段に落ちている。僕は落ちてない。逆に早くなってる。
「スピードでは負けねえんだよおお!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
僕は最大のスピードで姉さんにトドメを指した。姉さんは後ろに吹っ飛び、その場で崩れ落ちる。
「いや強すぎでしょ」
その場に居合わせた愁はそう言った。ここはNumber事務所のトレーニングルームである。障害物は無い。筋トレルームは別にある。ここは実戦するための部屋だ。この部屋で僕の犠牲となった人は結構居る。
「姉さん気絶したし、愁やろ?」
僕は愁に向かってそう言い、拳を構える。
「やるか」
愁は首肯し、拳を構えた。今、Number.2とNumber.8の戦いが始まる━━━━━━━━━━━━━━━━━
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
「ポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポル」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
一応拮抗である。ていうかさっきの疲れで若干僕が押されている
「ポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポルポル」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
僕達がやっていると、
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」
と目が覚めただろう姉さんが乱入してきた。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
「ポルポルポルポルポルポル」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」
……なんてくだらない戦いだ。僕は繰り出す手を緩めない。
強くない?ちょ……
「疲れたんだけど」
僕は手を出すスピードを少し緩めながらそう呟く
「甘い!ポルポルポルポル」
手を出す速度を緩めた瞬間、愁の手が僕を襲う。
「グガアァァァ」
僕は吹っ飛び、意識も吹っ飛んだ
「なんでこうなるかな」
僕は先程の稽古の後、帰宅していた。
「あんなクソ稽古しなきゃ良かったわ……腕クソ痛い……」
姉さんが憔悴しきった顔でそう呟いた。僕も正直筋肉痛がやばい。腕が痺れる。感覚が麻痺する。あれ?今気温何度?夜なのに暖かいなあ…月、出てるよね?
な き そ う
「俺は普通かな…まぁ痛いっちゃ痛いけど」
愁は何事も無かったような顔で腕をグルグル回す。この人、鉄の筋肉だから、総合的には僕より弱いが、持続力に関しては姉さんを抜く。姉さんはスタミナは多いけど。まぁ……うん。察してくれ
「あ〜疲れた……折角の休みを不意にした気がするわ()」
今日は土曜日だ……なんつーくだらん事に……
「折角だし飯でも食ってかね?たまには外食もいいだろ」
愁は急にそう言ってきた。あ〜外食かあ……なるべくしたくないんだけd
「行きましょう。」
僕がそう思った瞬間姉さんが固い決意の表情をして、僕と愁の手を引いて走り出した。
「おいおい落ち着けよ……」
愁も困惑していたが、姉さんは気にせず
「インドカレー屋に直行よ!」
と全力疾走し始めた。
「……あの、僕達のリクエストは……」
僕が困惑しながら姉さんに聞くと、
「貴方は決定事項に逆らうの?」
と姉さんはガチトーンで言ってきた。うわマジだ。まじでインドカレー屋しか興味無い人だ。
「……はあ……まあたまにはいいか。愁もそれでいい?」
僕が諦めた表情で愁に言うと、
「ったく……仕方ねえ、別にいいよ。俺もカレー好きだし」
と僕と同じように呆れた声で言った。
「満場一致ね。さあインドカレー屋に行くわよ!」
姉さんは走る足を早め、走り続けるのだった
「はあ、はあ……」
「ううっ……お前早すぎだろ……」
僕と愁はゼェゼェ息をつく。いや、十分全力でぶっ続けで走ったらこうなるわ。それでも
「大丈夫でしょ!店行くわよ!」
とピンピンして、まだまだ走れるような顔した姉さんは化け物だと思う。なんでこの人持久力は高いの???だから僕は姉さんに勝てないんだよ(((((())))))(主が作った序列では僕の方が強いのになあ)
「はあ……はあ……ねえ……さん……すこ…し……待って……よ……」
「り……な……すこ、し……まっ……て…く……れ……よ……お」
愁と僕は歩き始めた姉さんの背中を二人で肩を組みながら全力で歩いて追いかけたのだった
「やっぱここは美味しいわね!」
この人酒でも飲んだんじゃねえの?ってくらいはしゃぎながら姉さんはバターチキンカレー(特盛)にばくつく。
「なんでそんなに食えるんだか……僕には真似できないよ」
僕は呆れながら海鮮カレー(並盛)をちょびちょび食べる。
「……なんでお前ら双子なのに食べる量も性格も何もかも違うんだよ……ったく理奈はめっちゃ食うし……」
愁はそう楽しそうに言いながらナンに食いつく。いやお前も十分重いもん食ってんだろ……なんで冬野菜ゴロゴロカレー(特盛)を速攻で食ってんだよ……
「愁もめっちゃ食うやん」
「俺は仕方ないだろ、こんな身体なんだから」
愁は項垂れながら言う。この人筋肉だけはあるからな(だから脳筋なんだよ)全く、強さ的には僕より強いんだから、もっと頭を使えばいいのに……まぁ人は一長一短か
「人は一長一短だからね」
僕はぽつりと呟く。
「おいお前どういう意味だ?」
僕の言葉に食いつくように、愁が聞く。いや怖い。愁さん怖いから。
「疾風の言ってることは無視していいわよ。多分」
姉さんはホットコーヒーを啜りながら愁に余計なことを吹き込む。この人罪悪感ってモノあるの?
「姉さんには罪悪感ってものはあるの?」
試しに僕が姉さんに聞いてみたところ、姉さんは笑顔で、
「罪悪感なし!」
と叫んだ。
「……なんてやつだ……」
僕は呆れながら姉さんに視線を逸らさずにアイスコーヒーを飲む
「…まあ今の発言は無かったことにしてなるよ」
愁は紅茶を飲みながらそう言った。冗談程度に受け取ってくれたらしい。僕は素晴らしい友人を持った。ああ神様、最高のFriendをありがとうございます。姉さんは……NormalのSisterだね。(なんで僕英語喋ってるのだろう?)
「疾風?絶対今私に対する悪口考えてたわよね?」
姉さんは急にコーヒーを啜りながら(いつまで啜ってんだよ)言った。……この人サイコか何かか?
「なんで人の思考を読めるの?姉さんは」
僕は姉さんに疑問をぶつける。まあそんなことより海鮮カレーが全然食べ終わらないことの方が問題なんだけど
「なんでって?」
姉さんは、笑顔で、
「最も大切な人の考えてることを読めないなんて、姉失格でしょ?」
と、ウィンクしながら言ってきた。この人なんか勘違いしてないか?
「兄妹のことはなんでも分かるってか」
僕は頭をポリポリ掻きながら姉さんにそう言った。
「そういう事よ。全く、疾風はそういうことに疎いんだから……」
姉さんは笑顔で嘆息した。(矛盾たっぷり美味しい牛乳(????))
「ほんと、仲いい兄妹だな。お前らいっそ付き合えよ」
愁はため息をつきながらそんな冗談を言ってきた。……付き合うって、彼方さんどうすんすか……何となく後ろに視線を感じる。いや怖い。なんのホラゲですか?
「あっはっは!私達は付き合おうにも付き合えないわよ。疾風は恋人居るんだし」
姉さんはサラッと冗談をつきながら僕が恋人(彼方)居ることを暴露しやがった。ぜってー✕してやる。そう思った時、愁は目を見開いて、
「疾風に恋人?!あの疾風が?!」
と驚いていた。あの疾風ってどういうことだよ。舐めてんのか(ふんぬ)
「……説明めんどいんだけど……」
僕はめんどくさくなったため、海鮮カレーを食べる手を動かし始めた。
「ふふ……疾風、顔が赤いわよ」
姉さんが笑いながら言った。僕は、
「…うるせえ…」
と消えそうな声で呟いた。
「可愛いわね。」
「可愛いな。男とは思えねえぜ」
愁と姉さんはニヤニヤしながら僕に可愛い可愛い連呼してきた。僕は耐えきれなくなり、
「いい加減にしてくれぇぇぇぇ!!」
と大きめな声を出すのだった。(今の時間混んでて話し声が結構大きくて助かったわ)
「あはっ、疾風をからかうのは楽しいわね」
姉さんは今日一番の笑いを上げながらそう言った。この人死にたいの?何?僕に殴られたいの?
「……はあ…もういいよ。愁にも説明してあげるよ」
僕は姉さんに話した事に彼方と付き合ってるという事実を加えて愁に教えた。はあ、恥ずかしいったらありゃしない……鮭、食わずにはいられない!あのクソ親父のような事をしているっ!クソっ!(言いたかっただけ)
「まぁこんなもんよ」
僕は愁に一部始終を話終わり、憔悴したためアイスコーヒーを飲み、海鮮カレーを食べ始めた。愁はシンキングタイムの後、
「…彼方は、昔っからお前が好きだったんじゃねえの?」
と言ってきた。僕はアイスコーヒーを吹き出し、むせ込んでしまった。姉さんすらも目を見開いていた。
「ど、どういうこと…?」
僕は愁に震えながら聞いた。すると愁は、今まで見たことないようなまじめな顔で、
「だから、彼方は、すごい前からお前が好きだったんじゃねえの?じゃ無きゃ、そんな大胆な事しないだろ」
愁は、一拍置いてから、
「大胆なこととか、自分の身を削ることは、自分の大切な人の為だからできるんだよ。ほんとうに大切な人じゃなきゃ、あいつはそんな大胆に告白なんてしないし、まず告白なんてしていないだろう。あいつの性格ならな」
と、中々にかっこいいことを言った。…愁、たまにはいい事言うじゃないか。姉さんの方を見ると、ウンウンと頷いており、愁の言葉に同調するのと同時に僕と同じことを思っているということを示していた。
まぁそんなこんなやってたら、いきなり愁が、ぱあっとした笑顔で、
「彼方のこと、デートにでも誘ってやったらどうだ?」
と言ってきた。僕はまたもやアイスコーヒーを吹き出し、
「デ、デートォ?」
と仰天して言った。姉さんも
「そうよ。デートの一つくらいしたらどうよ」
とにこにこしながら言ってきた。
「デートって、どうやって……」
僕が項垂れると、愁が、
「デートって言うのはな?」
と、デートに関して教えてくれた。
「ありがとう。愁。誘ってみるよ」
と僕はあまりやる気ではなかったが、やってみる価値はあると思い、そう言ってみた。すると、
「良しじゃあ明日誘え!明日は定休日だしよ!」
と愁が提案してきた。僕は仰天して、
「いや早いよ……心の準備が」
と言ったが、愁は
「それが悪いんだよ!善は急げだ!」
と愁は背中を押してきた。
「……わかった。やってみるよ」
と僕は項垂れながら言った。すると姉さんは
「よく言いました!」
と言った。全く、この人は……
ということで(どういうことでだよ)姉さんと愁の提案により、明日、彼方をデートに誘ってみることにした
「ピンポーン」
僕はガクガク震えながら西賀家のインターホンを押した。現在時刻正午過ぎ。こんな時間からデートとかそりゃ緊張するでしょ?
「はあい、どなたですか〜?」
と、彼方のお母さんと思わしき人物が反応した。
「神無月疾風です。彼方さんは居ますか?」
と、僕は覚悟を決めてそう言った。
「彼方ですね?わかりました」
その人物はそう言った。その後、彼方〜と大声で呼ぶ声が聞こえた。僕は瞑想を始めた。瞑想をし始めた五分程度たった頃、ドアが開いた。中からでてきたのは、
「なによ、疾風。」
と私服を着た、髪も整った彼方だった。五分で支度をしたのだろう。凄いな。女は。
「唐突だがどっか出かけないか?」
僕はそう言った。彼方は一瞬首を傾げたが、すぐ次の瞬間、
「良いわよ、丁度私も暇だったし。他に誰かいるかしら?」
と言ってきた。僕は
「二人だけだよ」
と言った。すると彼方は、
「デートって事ね〜。疾風もそういうこと考えるようになったんだ」
とふふふと笑いを零しながら言ってきた。からかわないでください彼方さん。
「…顔は可愛いのに性格は悪魔なのな」
僕が思わず呟くと、彼方は顔を赤らめて、
「あなたらしくないこと言うわね」
と笑った。
「じゃあ決まりってことで。何処行きたい?」
僕が彼方に聞くと、彼方は、
「貴方のバイクでドライブしたいわねえ」
と爆弾発言をした。
「バイクかあ……二人乗りだし大丈夫だけど、彼方何処行きたいの?」
僕はため息をつきながら彼方に聞くと、
「港の見える丘公園」
と言ってきた。僕は、
「わかったよ。じゃあドライブと行くとするか」
僕は彼方の手を取った。
「わっ、いきなり何よ……」
彼方は恥ずかしげにそう言ってきた。僕は、
「普通じゃねえのか?昔もやっただろ」
と、真顔で言った。まぁ心の中では照れてる彼方可愛いなあと思ってるんだけどね。ということで、彼方の手を引きながら僕は僕の家の駐輪場に向かった
「なんでこんな速度出さなきゃいけないんですか???」
僕は高速道路を時速百キロ近くの速度で走っていた。これで二人乗りとか怖すぎて笑えないんだけど
「良いじゃない。私が疾風にくっつけるんだし」
彼方は恥ずかしげもなくいってきた。全く彼方ときたらと思う。正直前とほとんど関係変わってねえなあ……昔もこんなだったなあ。僕がそう昔に思いを馳せていると、
「ふふっ…私たち、何も変わってないわね」
と彼方が言ってきた。…この人も僕の思考が読めるのか?多分そうなのだろう。
「…変わってないのはお互い様って…成長しないガキなんだな。僕達」
僕は忍び笑いを零しながらそう言う。正直付き合ってなくても僕たちこんな感じだったわ。いや〜恋人ってめんどくさいかもと思ってたけどそんな事ないね!(但し相手は彼方に限る)
「貴方が彼氏なんて信じられないわね〜……」
彼方は調子に乗り始めたのか、そう呟いた。いやこの人顔は可愛いのに、やっぱ中身悪魔じゃん
「…性格は鬼、悪魔の二連打のままだな。彼方」
僕は嘆息しつつもそう言った
「デジャブ感があるわねえ」
彼方はそう笑ってきた。なんなんだマジで……彼方は人の心をつかむのが得意だ。まあ僕はそこに惹かれたんだけどね
「まあデジャブを感じようとなんだろうと、僕の言うことは同じだよ」
僕は冗談を言いながら笑う。こいつと居たら楽しい。僕は本気でそう思えた。愁と姉さんみたいに、一緒に居て、本気で楽しく思える。そんな人間が、僕は好きだった。僕はとても正直な人間だと思う。
「まったく、貴方って人は。なんて自分に正直なのかしら」
彼方は呆れながら、でも笑いながらそう呟いた。僕はその問に対して、
「自分に正直じゃ無きゃ、何事も始まらないだろ?」
僕はそんなクサイセリフを放った。正直僕もクサイセリフだなと感じる。なんてアホらしい。自分が悲しくなる。かつけ(かっこつけ)なのか?僕は。いや。
「かっこつけたり、自分に正直じゃないと、Numberはやってけんわな」
僕は独り言を呟く。何故か彼方に聞こえる。僕は知らん。
「それが既にNumberの素質よね〜」
彼方はそう呟いた。
「褒めるなよ…照れるだろ?」
僕はそう答えた。
「満更でも無さそうね」
彼方はこちらからでもニヤついてると取れるような声音でそう言った
「当たり前さ。僕はなんてったってNumberだからな。NumberがNumberって言われて嬉しくないわけないでしょ」
僕は微笑みながらそう答えた
「港の見える丘公園…綺麗なのか綺麗じゃないのか…それでも激混みなんだよな…何でだよ」
僕は港の見える丘公園にて愚痴をついていた。なんで苦労して楽しみに来たのにこんな人だらけなんだ
「人混み苦手よね…疾風って」
彼方は若干呆れた様子でそう言った。
「仕事柄とか昔からのトラウマとかで苦手なんだよ…勘弁してくれ……」
僕は項垂れる。今は人が少ない場所に移動している。
「マジで…人口減ればいいのに……」
僕は弁当として持ってきたおにぎりを貪りながら言う。(現在午後三時過ぎ)
「それは世間的な問題発言よ…疾風…」
彼方は呆れたような口調でおにぎりのラップを剥く。あはは牛すじうめぇ(精神崩壊)
「らりほ〜wwwww」
僕は何もかもに諦めた無気力ボーイのような言語を発する(?????)
「アホじゃないのあなた」
彼方はマジで呆れた声で言う。
「…心にくるわ…」
僕はその言葉の後に項垂れ、その後はしばらく無言の時が続いた。僕は、彼方が何故ここに来たのか、理由がわかっていた。何故なら、今まで愁、姉さん、僕、彼方、由香里で毎日、この頃に来てたからだ。僕はどうせあの人達も来るんだろうと思った。いや、来なきゃおかしい。それがあの三人というものだ。まったく、面白い三人組だ。僕は昼ご飯のおにぎりを食べ尽くす。彼方もほとんど同じ時間に食べ終わっていた。…遅い昼飯だったため、若干物足りなさがあるが、
「…眠いから寝るわ…''あの''時間まで。」
僕は疲労による睡魔に耐えきれず、彼方に断って寝ることにした。''あの時間まで''僕はたったまま、目を閉じる
「おやすみ。」
彼方は、僕にそう言った。その後の記憶は、僕には無い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「…寝る顔が可愛いのは昔から変わらないわね」
私━━━西賀彼方━━━は疾風の寝顔を見ながらそう思った。''あの時間''まで約二時間。そろそろお姉ちゃん達も来る時間だ。あと一時間といったところだろう。それまで、疾風にはゆっくり休んで欲しかった。正直無理を強いたため、若干罪悪感がある。まぁ、
「疾風も楽しそうだし、私に非はないわね?」
私は自己完結することにした。私は疾風の髪を撫でる。サラサラとした綺麗な髪だった。
「…なんで立っているのでしょう…疾風は。」
疾風は何故立って寝てるのかが私には解らなかった。しかし、理解した。というより、疾風の気持ちになればすぐわかった。
「Numberっていうのは、本能一般人を守る…そういう人達。だから、本能が一般人に迷惑をかけてはいけないと言ってるのね。」
なんて優しい人だろう。疾風は。私はもう一度疾風の髪を撫でる
「おやすみ、疾風」
私はそのまま疾風の肩に頭を乗っけて寝る事にした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「…ふああ」
僕は起床する。何故か目の前では姉さんと愁と由香里がキャーキャーはしゃいでた。
「…何してんの」
僕は動こうとしたが、何故か動けなかった。肩を見ると、彼方が僕の肩に頭を乗っけて寝てるのだ。
「…彼方は横になって寝てればいいのに。」
僕は彼方をおんぶして、
「何してんの、三人共」
僕は三人に戒めるように声をかける
「あと三十分だよ。人も集まり始めたし、そういうのはやめた方がいいんじゃない?」
僕が腕時計を見ながら声をかけると、愁は、
「そうだな。そろそろ人も増えるし、彼方も寝てるし、素直に大人しく待ってるか。」
と言った。物分りのいい人だ。
「そうね。特等席は取ったんだし」
「ね〜。いい所よ。ここ。さああと、お茶でも飲みましょうか」
姉さんも由香里もブルーシートを引き(何畳だよこれ…五畳はあるだろ)座った。愁も靴を脱いで座った。僕は彼方を寝かし、座った。
「…お茶ってこれ紅茶じゃない……」
姉さんは紅茶の入った紙コップを見て絶句する。
「え、なんか問題あった?」
と由香里が言うと、姉さんは
「大問題よ!」
と叫んだ。周囲の人の視線がこちらに向く。僕は目を逸らした。本能だった。姉さんは肩を竦めた
「…どうしたの理奈」
彼方が起きた。うわあ起こしたよこの人
「いや…ごめん」
姉さんが謝ると隣の愁が笑いだした。
そんな感じでわいわいやって、三十分を過ごした(デートってなんだっけ?まあドライブデートしたし、まあいっか)
あの時間になった。
「遂に来たぜ、この時が…一年にいちどの…」
愁は震えていた。そんな感動するか?僕は胡座をかき、空を凝視する。僕達は無言だった。僕の腕時計の秒針はゆっくり時を刻む。ゆっくり、ゆっくり…そして何分か経った。
空で爆発が起きた。とても綺麗な爆発が。周りから歓声が聞こえる。
「…綺麗な花火だなあ…今年も」
僕は気づかない間に呟いていた。
花火は音を立てて散る。何個も、何個も。花型の花火、動物型の花火。色々な花火が、空に散った。だんだん赤く染まる空に花火が一つずつ丁寧に散る。これがほんとの花火。沈黙は続く。
「疾風」
彼方が急に僕の名を呼んだ。僕は、彼方がなにか言いたそうな様子だったため、僕は黙る。
「この花火には、見た恋人を一生結びつける効果があるらしいわよ」
「……」
僕は黙る。前の三人も黙っている。
「私達、不滅ね。」
彼方はにっこりして、僕に言う。僕はフッといい、
「何言ってんだ」
僕は一拍置いて、
「恋人になったということは、既に結ばれたということ。運命(さだめ)だろうと偶然だろうと必然だろうとそれは一面性だ。結局、恋人というのは、切れないものだ。切れたらそれは恋じゃない」
と僕は言った。彼方はクスッとわらい、
「疾風も偶にはいいこと言うじゃない」
と僕の頬に人差し指を立ててきた。姉さんは
「…疾風、見直したわよ」
と言ってきた。僕はフッと笑い、
「姉さんにだけには言われたくなかったな」
僕はそれを最後に黙り込み、五人で三時間ある花火を見続けた。僕は、これで僕は神様の加護というものを受けたのかもしれない、と感じた
十七話 襲撃
疾風達がデートしている間、Dreamerでは……
「Number.2の正体がわかったぞ!」
俺は部下達に大声で声をかける。Number.2。俺達の最大の敵だ。Dreamerにとって最凶の相手。この男にだけは勝てないのだ。
「Number.2の正体?!」
「いったいどこのどいつなんですか?!」
「殺りに行きましょう!」
部下達が大声で喚きたてる。
「興奮するな。お前ら」
俺は部下達に静止をかける。
「今から順に説明する。」
俺は、黙って俺を真摯な目で見つめる部下達に、Number.2ー神無月疾風ーについて話し始めた。
「という事だ。」
俺が部下達に話終えると、部下達は大声で、
「すぐにあいつの学校に行きましょう!」
と興奮した様子で言ってきた。俺は
「落ち着け。すぐに行くのは準備が整わない」
と部下達に静止をかけた。俺は部下達に
「しっかり計画も立ててある。」
と言い、話し始めた。
「わかりました。三日後ですね?」
と部下は確認をとった。俺は、
「ああ。今度こそ潰してやる!」
と叫ぶのだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……何もかもおかしい」
僕──神無月疾風──はそう呟いた。
ここ1週間、Dreamerの動きが無い。今までは二、三日に一回でなにか行動してたはずなのだ。なにかがおかしい。
「くそ!」
僕は机を叩く。クラス中の視線が集まった。
「…クソが」
僕はそのまま立ち上がって、教室から出た。行く場所は屋上。屋上で、独りになって考えたかった。何故、Dreamerが動かない?何故だ、何故。何もかもおかしい。
「ちっ……Dreamer…如月敦人め……」
僕はそう、Dreamerのボス「如月敦人」の名前を呟いた
何故僕がDreamerのボスの名前を知ってるかだって?それは少し前の話になる。そうあれは二週間前の話。
僕はDreamerの幹部の一つ下──所謂準幹部の連中と戦っていた。Number側は僕と姉さん、愁のみで、Dreamer側は八人とかなりの人数だった。
僕達はその戦いで、準幹部の一人を捕虜として捕まえた
そして僕は、捕虜に尋問した。
ボスについて。
「僕はボスの名前に検討がついている」
僕は拳銃を掲げながら徘徊しながらそう言った。捕虜は怯えている。こんなやつが準幹部か……Dreamerも堕ちたな
「僕が聞きたいのはただ一つ。」
僕は拳銃を捕虜の頭に突きつけた。捕虜はヒエッと声にならない悲鳴をあげ、震えた。
「Dreamerのボスの名前を言え。そしたら解放してやる」
僕は突きつけた拳銃を離さず言った。すると捕虜はブルブルと震えながら、
「如月敦人!如月敦人です!言いました!解放してください!」
と大声で叫んだ。なるほど、如月敦人ね……
「ありがとう。では」
僕は無線を取りだし、とある場所と繋ぎ、
「連行してくれ」
と言った。捕虜は驚いた表情をした。そして後ろからゾロゾロとNumberの第五階級のやつらが現れ、捕虜を担いだ。
「解放するって言ったじゃないか!」
捕虜が叫ぶが、僕は身を翻して、
「解放してやるよ。刑務所にな。」
僕は一旦振り返り、捕虜に
「罪を償え」
と言い放ち、去っていった。後ろから捕虜の発狂が聞こえたが、僕は無視して先に進んだ。
とまあ、一部始終はこんなもんである。僕はこうやってボス──如月敦人──の名を手に入れた。しかし、それ以降、如月敦人の動きは無い。それどころか、Dreamerの動きすらない。何もかもおかしいのだ。
「何故Dreamerは、準幹部との闘いの後から、何も動いてないんだ……」
僕は屋上のフェンスによっかかりながらそう呟いた。僕はDreamerに動きが無いことに関しては、嬉しくは思っている。しかし、
「何も動かない…そんな事あるか?」
僕は何も動かないことに対して不信感が募っていた。何かがおかしい。
「襲撃の準備でもしてるのか……?」
僕は頭を抱えた。次の瞬間、屋上のドアがバンッとあいた。ドアからは、一つの人影が見えた。…フードを被っている。黒いフードのせいで、顔が視認できない。僕は頭を上げた。その人影は、段々僕に近づいてくる。人影は僕の半径5mに入った。僕は「はぁ」とため息をついて、
「趣味が悪いぞ、姉さん」
と言った。目の前の人影は驚いて、フードを外した。
「えへへ……バレちゃってた?」
フードを外した顔から視認できたのは、いつも見ている姉さんの顔だった。まったく、悪趣味な人だ……
「で、何の用だ」
僕は姉さんに聞く。すると姉さんは真面目な顔をした。
「疾風…貴方、Dreamerに関して悩んでるでしょ?」
僕は無論悩んでいたが、姉さんには嘘をついても仕方なかった。
「悩んでるよ……アイツらに動きが無いからね…如月敦人の、動きも……」
僕は大きくため息をついた。もう嫌だ……Dreamerは懲り懲りである。
「クソ……ああ……」
僕は項垂れる。すると姉さんが、
「……Dreamerの次の動きが掴めたわよ」
と憂鬱そうに僕に言った。僕はガバッと頭を上げ、
「い、……今、なんて?」
と言った。姉さんははぁ、とため息をつき、
「Dreamerの次の動きがわかったのよ」
と言った。僕は目を見開いた。
「わかったの?!」
僕はそう叫んだ
「教えてくれ!」
僕は姉さんの胸ぐらをつかみ、ブンブンと揺らした。姉さんは慌てて
「わかったわかった、教えるから落ち着いて」
と言った。僕はハッと我に帰り、姉さんの胸ぐらから手を離した。
「ご、ごめん……」
僕は頭を下げた。姉さんは
「いや、平気なのよ。疾風の気持ちもわからんではないし」
と言ってくれた。僕は顔を上げた。
「で、次のDreamerの動きってなんだ?」
と姉さんに聞いた。姉さんは、今まで見たことの無いほど真面目な顔をして、
「…この学校の襲撃よ」
と言った。
「……は?」
僕は惚けた声を出す。姉さんは真面目な顔を保ちながら、
「私達の身元がバレたのよ……多分だけど、次はここが狙われるわ。」
と言った。嘘だろ……バレたのか?Numberに内通者が居たとしか……内通者は、最近入ってきたに違いない…まさか
「天ノ川……」
僕は項垂れた。僕の後輩、天ノ川深雪。(七話 Number.2の後輩参照)最近入ってた人で、僕のことを良く知ってるのは、天ノ川だけだ。僕か天ノ川と呟くと、姉さんは
「深雪がどうしたの?」
と聞いてきた。僕はプルプル震えながら、
「多分だけど…天ノ川が……内通者……」
と言った。姉さんは目を見開いて、
「嘘ッ?!深雪が内通者?!」
と叫んだ。僕は頭を抱えながら、
「……僕の情報が漏れるはずないんだ。僕の後輩とか以外からはね……なら、内通者しか居ない。そして、最近入った僕の後輩……天ノ川が内通者と思ったわけよ」
と言った。僕は正直気分が最悪だった。……自分の後輩が、Dreamerの内通者だったのだ。そりゃ、気分落ちるでしょ?僕は精神崩壊寸前だった。何故だ……何故、深雪が……
「クソッ…今日中に対策しなければ……」
僕はそう呟いた。姉さんは
「そうね。早めに深雪をとっ捕まえた方がいいのかもしれないわね」
と僕に同調した。僕はけっこう慌てていた。だから自分がどれだけ危険なことをしているか、わからなかった。
「…早めにとっ捕まえて、真相聞くしかないか……」
僕はそう呟いた。唇を噛む。もうやるしかない。今からでもやるか……?
「…早退する?」
姉さんは僕の心を取ってくれたのか、そう聞いてきた。僕は今はまだ決めきれてないので、
「まだだ…まだ、早まっちゃダメだ」
僕はそう言った。強く噛んだ唇から鉄の味がする。
「……やる時はやる。でも、やっちゃいけないときにやったら、絶対にへまする」
僕はそう言った。正直、今の僕は完全に思考停止している。
「わかったわ、じゃあ、放課後に念入りに作戦をたt」
姉さんがそこまで言った、その時だった。バァンといういつも聞く銃声音が響いた。僕達は間髪入れずフェンスから下を見る。そこは、既に戦場だった。
「……Dreamer!」
僕はそう呟いた。
襲撃が始まった……
「…どうする」
ここで僕が出たら、Number.2であることが周知の事実となる。しかし、そんな事言ってられない。ここには、
「……彼方……」
ここには、彼方が居る。僕が本気で大切だと思える何人かの人間のうちの一人、彼方。僕の彼女。僕は次の瞬間、姉さんに、
「武器を取りに戻るぞ!」
と叫んで、屋上を去った。
「…俺に勝てると思うな?Dreamer……」
僕──俺は、そう呟いて、階段を駆けた。
十八話 At the end of the deadly battle
「え、疾風君?どうかしたの?」
僕が廊下をかけ走っていると、チャイムが鳴り、教室から生徒が出てきた。僕は大声で叫ぶ。
「外へ出るんじゃねえ!」
僕が大声で叫んだため、僕に視線が集まる。が、そんなことどうでもいい。そろそろ姉さんも追いついてくる頃だ。僕は廊下にあるロッカーのパスワードを合わせ、中を開いた
「これだ……」
僕は中から縦長の箱を取り出し、開けた。
「へっ……これだ」
僕は箱の中にあったライフルを取り出した。僕は
「絶対外に出るんじゃねえぞ!」
と叫んだ
「ちょ、どういう事よ!」
中から女子の声がする。僕はロッカーにある武装品を装着しながら、
「下はもう戦場だ!死にたくないなら外へ行くな!先生にも言っとけ!これは戦争だ!」
僕は叫んだが、皆は、嘘ついてんじゃねえと言った。仕方ない。僕はライフルをクラスメイトに向けた。教室の喧騒が一気に静まる。僕は
「Number.2に逆らうな」
と静かに言い放った。
「この羽が俺の象徴だ…てめえらは殺させねえよ。死なせるもんか」
僕は
「ま、お前らが死にたいなら外へ出たらどうだ?武装隊が何十人もいる外に。」
と言った。銃声音が聞こえる。僕は間髪入れず走り出した
「…たかが何十人程度で俺に勝とうなんて百年は早いわ」
僕は、走った。息が切れてもどうでもいい。僕はそれほど覚悟していた。ここで僕が死んだら、確かにDreamerの思うツボなのかもしれない。しかし、
「お前らは彼方を傷つけようとした……」
僕は静かに言った。昇降口に来た。僕は一歩外に出る。もう敵は目の前だ。
「てめえらは彼方を傷つけようとしたんだぜ?」
僕はライフルを構える。敵も拳銃を向けてきた。だが無意味だ。拳銃を持つ手をライフルでぶち抜くだけだ。簡単な話である。僕はその程度余裕だ。だから僕は余裕を持って、
「お前らは彼方を傷つけようとした。よよって」
と一拍置いて、
「死に値する!!」
と力いっぱい叫んで、発砲した──
「オララララララララララララララララララララララララララララ」
僕はライフルをバンバン発砲する。敵が悲鳴をあげて倒れていく。滑稽だ。あんなに調子に乗っていたヤツらが手を撃ち抜かれてドンドン倒れていく。面白すぎる。
「クソっ……Number.2を無視して校内を占領しろ!」
敵の主はそう叫んだ。そして何人かが昇降口に走っていく。しかし、皆も忘れてないか?
「構内には姉さんも居るぜ」
完全にアイツらは気づかなかったようだ。アホめ。
昇降口に走って向かう何人かの男がギャァァ、と叫んで倒れていく
「ナイス狙撃」
僕はそう呟いて、後ろを振り向いて屋上にスコープ付きのスナイパーを持って足を組んでカッコつけながら立っている姉さんの方を向いた。姉さんはウィンクした。色女め……僕は微笑んで、前を向いた。
「で、どうするんだ?まだ犬死する気か?」
僕はライフルを地面に置いた。すると、敵は待ってましたと言わんばかりに敵は拳銃を取り出し、セーフティを外した。しかし、
「お前らは駿河のことすらも知らなかったのか?」
実に滑稽だ。僕はポケットからリボルバー──自作のリボルバー、愛銃駿河を取り出して躊躇なく発砲した。敵が1人悲鳴をあげて倒れる。全員驚いた顔をしていた。
「お前らがセーフティ外して発砲するより僕の早撃ちの方がはええんだよ」
僕は静かに言い放った。
「さあ、降参するか、それとも死ぬか選べ」
残りの人数は少ない。しかし、他の人が起き上がっている。殺した方がいいだろうか?いや、
「姉さん、起き上がってくるやつは任せたよ」
僕は叫んだ。次の瞬間、後ろで銃声音と悲鳴が聞こえた。どうやらやったらしい。それが何度も続く。
「さあ、降参するか?死ぬか?」
僕は一歩前に進む。敵は何もしない。
沈黙が流れる。響くのは、後ろから聞こえる銃声音と悲鳴だけだ。敵も僕も何も喋らない。そうして何分かが経つ。何も聞こえなくなった。そう、何も……聞こえないはずだ。なのに、草を踏む音がする。気のせいか。
「さあ、選べ!早く!引き金を引かれたいのか?」
僕は最後の脅しをかけた。その十秒後、敵はニヤリと笑った。そして大声で笑いだした。僕は顔をゆがめ、
「何が可笑しい」
と言った。敵は笑いを止めない。少し経って敵が笑いを止めると、敵は、
「降参するのはお前の方だ。気づかないバカめ。」
と言って、
「やれ!」
と叫んだ。どういう事だ?あの足音は空耳じゃないというのか?僕がそう思考をめぐらせた瞬間、足に激痛が走った。
「グアァァァァァ!」
僕はあまりの激痛に叫んだ。この激痛は…
「狙撃銃……!」
僕はそう呟いた。そして音的には僕の左斜め後ろから撃たれたらしい…あ〜めんどい。僕は無線を取り出した
「撃て!」
敵はそう叫んだが、僕は銃声と共に身をひねり、とある人の番号を入力し、
「僕の左斜め後ろに1人。殺れ」
ととても小さな声で言った。
敵に聞こえないレベルに小さな声で。
『了解』
返事が来て、通信が途絶えた。そして敵はニヤニヤしながら近づいてくる。そして僕に拳銃を向ける。
「さぁ、しn」
と敵が言った瞬間、またいつもの銃声が聞こえる。そして一人敵が倒れる。
「ドンマイだな。姉さんのこと忘れて」
僕は呟いた。そして次の瞬間には
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
という叫び声と、
「オラァ!」
という聞きなれた愁の声がした。
「…どうやら殺ったらしいな」
僕はそう言う。敵は最早唖然として、突っ立ってるのもやっとという程だった。
「調子に乗るのが悪い。雑魚共が」
僕は地面に手を着いて立ち上がる。片足立ちだ。結構辛い。だから、
「早めにカタをつけてやる」
僕は、駿河を持ち、冷静に、正確に敵の脳天にぶち込み、全員殺した。
「…この辺り血の海だし…後片付け辛いなあ……」
僕はそう言い、倒れた。まったく、僕もアイツらも困ったもんだ。
「天ノ川め…覚えてろよ……」
僕はそう呟いた。そこで意識が途絶えた。
「起きた?」
僕は目を覚ます。僕は病院のベッドに居た。近くに三人…
「愁と姉さんと彼方か?」
僕は質問をした。
「うん」
と彼方らしき声がする
「やれやれ…僕は重症患者か」
僕は起き上がった。僕は足を触る。激痛が走った。僕は顔をしかめる
「入院してるのに治ってないとかある?」
僕は項垂れた。もう悲しいよ僕。足だけなのがまだ救い……か
「安静にしてなさいよ…」
彼方はため息をついた。僕そんな危ない人なの?
「安静にしなきゃ仕事もできないさ。遠距離狙撃の仕事も復帰には時間がかかりそうだな…はあ」
僕はマジで気分が落ち込んでいた。今回で何人か殺ったし……まぁそりゃそうかもしれねえや
「まぁまぁ落ち込むなよ!お前らしくないぞ!」
愁は胸をド突いてきた。僕は後ろに倒れる。
「おい地味にいてえぞ…」
僕がそう言うと三人が笑った。とても大きな声で、愉快そうに
「…まったく、やれやれだぜ」
僕は思う。こいつらは居て楽しいけど、なんか頭がおかしい。でも、憎めない。良い友達を持ったなあ…僕は
十九話 疾風の決断
「これは酷い……」
僕は松葉杖をつきながら学校に向かっていた。(姉さんと。彼方達は…ちょっと察してくれ)つい昨日退院したばっか。一週間強入院したし…しばらくは戦闘はできなさそうだ……ちくせう。王牙さんも心配してくれてお見舞いに来てくれたけど…大丈夫かな……
「仕事できないじゃん」
僕が項垂れると、姉さんが心配そうに、
「少しは自分の体を心配しなさいよ……はあ……」
と言ってきた。僕は真顔で
「死ななきゃみんな同じだ」
と言った。姉さんは盛大なため息をついた。何この人。僕のこと煽ってんの???
「だから貴方は前みたいな負傷をするのよ…今度腹ぶち抜かれたらどうするの?」
姉さんは心配そうな顔で、そう言ってきた。僕は顔を歪める。…腹をぶち抜かれたのは二年前の話だ。なんで姉さんはそんな時の話を掘り返してきたんだ?僕は疑問に思った。しかし、それほど心配なのだろう。それが姉さんの性格だから。
「…二年前の事を繰り返したりはしないさ」
僕はこう言ったは良いものの、もちろん本当は腹をぶち抜かれようが僕は闘う。それくらい覚悟はある…ただそれだけの話さ。まぁ、脳天ぶち抜かれたら流石に死ぬけど
「まぁ、死ぬくらいの覚悟はなきゃやってけないわよね。Numberは。」
僕はNumberと言われて、ハッととあることを思い出した。
「…天ノ川はどうした?」
僕は姉さんに聞いた。すると姉さんは笑顔で、
「既に愁が処したわ。」
と言ってきた。まさか殺ったのか?怖すぎるだろ愁。僕は殺る気無かったんだけど…
「…まぁ良いや。愁がやったなら」
僕はそう呟いた。まぁ……愁なら信用できるし…ね?姉さんは信用できないけど。
「まぁそんなこといいから早く行きましょ?貴方わざと遅く移動してるでしょ」
姉さんは急にそう言ってきた。姉さんの指摘は的を得ている。僕はわざと遅く移動してるのだ。雑談するために。まぁその為にちょっと時間が逼迫してるんだけどさ
「まぁそうだね。早めに行くとするか。姉さん、追いつける?」
僕は今のスピードの二倍の速度で松葉杖をついた。僕にはこの程度余裕じゃい。
「ちょ、少しは待ってよ…」
姉さんは少し早歩きでこちらに向かってくる。僕はニヤリと不敵な笑みを浮かべて、
「後から学校に着いた方が先に着いた人にカフェオレ一本な」
と言い、少し無理をしてでも松葉杖を動かして、少しスピードをあげた。
「もちろん走るなよ」
僕は姉さんに釘を指した。姉さんは、
「勝てるわけないでしょおおお?!」
と思いっきり早歩きでこちらに向かってきた。…愉快な人だ
「僕の勝ちだよ。姉さん」
僕は教室に入ってきた姉さんに不敵な笑みを浮かべて、そう言った。姉さんは絶望しきった顔で、
「…カフェオレ…買ってきて…やった…わよ」
と、ショージアのカフェオレを差し出してきた。僕の一番好きなカフェオレである。姉さんも意外に気が利くんだ…
「気が利くねぇ〜姉さん」
僕は冗談を言って、カフェオレを貰い、自分の席に向かった。
「私は貴方の姉よ。当たり前でしょ?」
姉さんはニヤリと笑って、そう言ってきた。いや、恐怖だろ…
「そしたら僕も姉さんの弟だけどね〜…ん?」
僕は自分の席に来て、机の中を覗いてみると、
「…なんじゃこれ」
手紙が入っていた。僕は取り出し、差出人の名前を見る。
「…学年主任じゃねえか…」
差出人は、学年主任だった。いやいや、怖すぎだろ。僕なんかした?いや怖…
「今すぐこい…って僕なんかした?しかも校長室…まってお義父さんも?!」
もう恐怖である。
「…行くしかねえか…」
僕は松葉杖をついて、教室から出ようとドアに向かった。すると、
「あら疾風、どうしたの?」
と彼方が寄ってきた。僕はため息をついて、
「…小早川貴大(こばやかわたかひろ 学年主任の名前である)先生直々のお呼び出しだ。ちょっとやばい…」
僕はそう言い残して教室を去った。もうヤダ……僕は大きくため息をつきながら廊下を歩いた。後ろから視線と畏怖の視線を感じる。まぁ、そんなことどうでもいい
「…お義父さんと学年主任直々のお呼び出しだと…僕はどうすればいいんだ」
僕はそう呟いて、松葉杖をつき続けた。
「私になにか御用でもおありでございますか?」
校長室に着いた僕は、座っている学年主任に向かってそう言った。次の瞬間、学年主任が激昂して、
「お前には心当たりというものすらないのか!」
と叫んだ。隣に座っているお義父さんは黙り込んでいる。
「…Dreamerの件でございますか?」
僕は学年主任にそう聞いた。すると学年主任は、
「Dreamer?お前はなんのことを言ってるのだ!」
とぶちギレしてきた。そうだ、学年主任はDreamerを知らないんだ…僕は落ち着いて
「前の賊の事でございます。貴女方にはわからない単語を使用してしまい申し訳ありませんでした」
と頭を下げた。まったく、面倒な事を……そういえば愁と姉さんはバレてないよな?バレてないだろう…多分
「お前はふざけてるのか!」
学年主任は机を思いっきり叩く。ヒビくらい入っただろう。何をしてるんだ、こいつは
「…僕は学校を守るために賊と闘ったまでですが?」
僕がそう言うと、お義父さんは、残念そうに、
「疾風…前の事件が、テレビニュースに取り上げられたんだよ…」
と言った。僕は目を剥いた。
「なんで?!Number.2の個人情報が漏れるじゃないか!」
僕は思わず叫んだ。すると学年主任が、
「ふざけてるのも大概にしろ!お前がやった事だろうが!お陰で先週はマスコミがすげえ来たんだぞ!!!」
と激昂した。どうやら五日程度の休校もあったらしい。しかし、僕も限界が近い。僕は
「…あんたは、生徒を見殺しにしようとしたと?」
僕がそう静かに言い放つと、学年主任は黙り込んでしまった。僕は畳みかけた。
「あんたは僕に入学するなと言いたかったのか?」
学年主任は冷や汗を流した。お義父さんは目を瞑っている。
「てめえは俺に死ねと言いたかったのか!」
僕は本気で叫んだ。しかし学年主任は、
「お、俺はそんなこと…」
とうろたえながら言った。しかしそんな言い訳通用しない。僕は、
「僕はNumber.2なんだよ。Number.2が一番の敵に捕まって殺されないとでも?」
学年主任は本気で焦っていた。僕はトドメに、
「もういい。貴方の思う通り退学してやるわ。僕は学校を守る為に闘ったのに、自分の保身のために走るお前がイヤだ。そんな学校、うんざりだ。僕はNumberの仕事に専念させていただく。お義父さん、退学届けを」
僕は最後に言い放って、お義父さんに退学届けを取るように促した。お義父さんは頷いて、校長室の重要書類が入っているところに向かった。学年主任は凍りついている。僕は何も言わない。小早川も何も言わない。僕は化けの皮を剥いだ。自ら。僕の本性だ。…本気でキレることは無かったが、まぁ手を出しかけた…僕は心の中で反省する。正直殺してしまう可能性もあったため、ちょっとキレすぎである。もう少し冷静さを保てるように成長しなければ……
「疾風、退学届けだよ」
お義父さんが目の前に来て、僕に退学届けを差し出してきた。僕は、
「ありがとう。ここで書いていいかな?」
と聞いた。お義父さんは首肯した。
「わかった。今書く。ペンは持ってるよ」
僕は机に紙を置き、ペンを走らせた。
「お、おい……早まるな、神無月……」
学年主任がなにかほざいている。僕は、
「人に死ねっつったやつの話を聞く意味は無い」
と冷たく一言言い放ち、書くスピードを早めた。少しの間沈黙が走る。そして僕のペンも止まることなく走った。
「書けたよ」
書き終わった僕は、紙をお義父さんに渡した。お義父さんは
「了解。楓にも伝えておくよ。」
と言った。僕は、
「ユキさんにも伝えておいてくれる?」
と言い残し、校長室を去った。僕は清々しい気分だった。別に僕が小早川に恨みがあった訳では無い。人の逆鱗に触れた。あいつは。僕は松葉杖をついて教室まで帰る。幸い、まだ休憩時間だったため、僕は荷物をまとめた。教室の視線が僕に集まる。そりゃそうだ。一時間目すら始まってないのに、もう帰ろうとしてるんだから。彼方が僕に近付いてくる。
「…何かあったの?」
彼方はそう聞いてきた。僕は飛びっきりの笑顔で、
「大丈夫。彼方の気にすることじゃないさ」
と思いっきり嘘をついた。正直彼方に嘘をつくのは辛いが、彼方にはまだ知られて欲しくない。しかし、
「姉さんには…言わなきゃいけないことかもしれないけど…」
と僕にしか聞こえない声で呟いた。
「ん?なんか言った?」
彼方が頭にクエスチョンマークを浮かべて、首を傾げながら僕に聞いてきた。僕は首を振り、
「なんも。まぁいいや。また後でで」
と言って、教室を去った。廊下の視線が一気に僕に向く。松葉杖をつきながら一時間目すら受けないで帰る生徒なんて、前代未聞だろう。しかし、僕には関係無かった。
「さよなら…」
僕は少し寂しくなったため、そう呟いた。昇降口まで来た僕は、少し止まる。未だに少し登校してくる生徒が居る。僕は松葉杖を置き、壁によっかかる。そして何分かを過ごした。何もせず、ただ、ただ、待ち続けた。あの時を。最後に聞きたかった。
そして誰も登校してこなくなって2分程度経った時、チャイムが鳴った。始業時間のチャイムが。僕は目を瞑る。最後のチャイム。心にひびかせたかった。
「…Numberとしての人生の、送迎のチャイムだな。これは。」
僕はチャイムが鳴り終わるまで立ち尽くした。そして、チャイムがなり終わると、僕は目を開け、
「行きますか…」
と昇降口から出た。僕は固い決意を持った。絶対、Dreamerを潰すと。一人残さず、狩り尽くしてやる。あいつら…あいつらは、
「本気で僕を怒らせたんだよぉ…」
と呟いて、僕は松葉杖をついて家路についた。
二十話 愛すべき仲間
「あいつ何帰ってんのよ……」
私──霞雨真理奈──はそう呟いた。マジで疾風は何一人で帰ってんのよ…めんどくさくでもなったのかしら
「ほんとだよ…一人で帰りやがって」
愁も私と同じようなことを呟いていた。
「あいつどうしたのかしら」
私はため息をついてそう言った。机に左肘をついて、頭を手に乗っける。考える時の癖だ。科学の研究中もこんなもんである。あ、説明し忘れてたわね。私はNumberのエンジニアよ。それに加えてNumber.0。結構凄いわよね?私
そこらの研究者よりは頭良いわよ
「あいつの事だし、停学とか?w」
愁は笑いながら冗談を言った。私は吹き出して、
「それもあるわねw」
と言った。私達は少しの時間爆笑していた。クラスの喧騒に負けないレベルである。それくらい面白かったのだ
『カーンコーンキーンコーン』
始業時間のチャイムが鳴った
「座ってくださ〜い」
チャイムが終わった瞬間、ユキ姉が入ってきた。
「じゃ、戻りなさい。愁。」
私は愁に戻るように促した
「へいよ。」
愁はそう言って自分の席に戻って行った。なんでチャイム鳴る前に戻らなかったんだ……?私は疑問に思ったが、まぁ良い。忘れよう。
「え〜…皆さんに悲しいお知らせがあります」
ユキ姉は少し、というか無理やり何かを抱え込んでいるように引きつった顔をしていた。
「先生、どうかしましたか?」
私は危うく「ユキ姉どうかしたの?」と聞きかけたが、急いで脳内で訂正して言った。危ない危ない……
「…霞雨さん、とりあえず聞いてください」
ユキ姉は私に「霞雨さん」と言った。…余程隠したいのだろう。それは私も同じだ。
「皆さん、本当に残念な話です。少し覚悟をしていてください」
ユキ姉はそう言った。私は目を剥く。教室になんだよと言うような声による喧騒が起きた。ユキ姉はそんなヤバい事を隠しているの?ユキ姉は、何を聞かされたの?ユキ姉は、何を思ったの?
私は思考をめぐらせる。私は愁の顔を見る。愁はこちらを向いてきて、首を縦に振った。……疾風関連である確率が高い。疾風に何があったのだ。マジで停学したの?あの人
私がそう結論づけた時、ユキ姉は目を瞑って深呼吸をしていた。それ程重い話ってなによ……と思っていると、ユキ姉は覚悟をしたように目を開けて、目一杯息を吸い込んで、こう言った。
「神無月疾風君が……自主退学しました」
そんな、最低最悪の事実を──────
「どういう事よ、先生!」
私はユキ姉という単語こそ使わなかったものの、激昂してしまい、敬語を使わないで大声で叫んでしまった。
「……言った通りよ。疾風が自主退学したの」
教室に凄い喧騒が起こった。嘘だろ、とか、あんな優しい人が?という会話でいっぱいだった。そう、疾風は、急に攻めてきた賊を対処した英雄なのだ。
「……あいつはいつでも人気者ねぇ〜」
私は気持ちを抑えるためにそう呟いた。おかしい。絶対あの件だ。……
「Dreamerめ……」
私は愁を見る。愁はこちらを振り返ることも無く唖然としていた。愁にとってこの事件は相当心にきてるはずだ。多分、私くらい。でも、一番心配なのが……
「彼方…」
私は彼方を見た。すると、彼方は下を向いていた。よく見ると、彼女の顔が光を反射している。……泣いているのだろう。本当に可哀想だ。彼方は、あいつの彼女なのに、学校という長い時間関われる場所から──しかも、Dreamerの件のせいで、居なくなってしまうのだ。そりゃ、私達の悲しみとか、そんなもの比べられないほど辛いだろう。
「……Dreamerめ」
私は、そう呟いた。もう限界だ。あいつらめ……
外で何かが地面を激しくうちつける音がする。私は窓を見た。外は、私たちの心のように……
「え〜……みんな辛いだろうけど、一時限目は待ってくれないわ。ここら辺でHRは終わりにするわね」
ユキ姉は、そう消えゆくような声で言った。学級長が覇気無く号令をした。もちろん、皆の覇気もない。あぁ、このクラスダメだな。疾風が中心だよ……女子は男に飢えてるのか?てか愁可哀想だな……
「まあいいわ。最終手段をとってやるわ」
私は号令が終わった瞬間、生徒手帳を出し、とあるページを開いた。そして、シャーペンを持ち、「あれ」を記入していた。あれひど激しく降っていた雨が、もう止んで、晴れ晴れとした青空が広がっていた。
━━━━━━━━━━━━━━━
「なんで、このタイミングで、雨が降るかな」
僕──神無月疾風──はそうゴチっていた。けっこう強い雨だ。最悪……です……〇ね!
「なんでこんな時に……はあ…」
ばりクソ寒いんですがそれは。帰るまであと十分はかかるよ?ねえ?少し考えよ?
「…おっとっと!危ない危ない」
僕は松葉杖が濡れた地面に滑ったため、転びかけた。今でさえ少し痛む足に激痛が走るところだったぜ……
そんな感じにスリップしながら歩くと、
「……なんやねん」
急に雨が止んで、快晴が広がった。なんやねん。数分出終わったぞ、この雨。僕の苦労は意味無かったってこと?数分待ってればこんな寒い思いしなくてもすんだってこと?
「〇ね」
僕は素直に暴言を吐いた。いやまじでキレそう。ガチで。
僕は憂鬱な気持ちに支配されながら家路を辿った。そして、数分松葉杖をカンカンカンカンついていると、
「やっと家だよ……」
家に着いた。僕は今日、いや、今日から何をしよう。松葉杖を使っているから、バイクにも乗れない。
「…学校っていい暇つぶしやったんやなぁ……」
僕は椅子にデカデカと座り、そう呟いた。僕は学校生活を思い出す。
「楽しかったのか……それとも、」
僕にとってどうでもよかったか……まあ、そんなことがどうでもいい。
「学校よりDreamerを潰すことだけを考えなきゃ……」
僕は思考する。何故Dreamerは僕の本当の名前を知らない?そんなものすら知らないか……僕は王牙さんに電話をかけることにした。
「もしもし」
王牙さんは三秒で通話に出た
「Number.2にてございます。このような時間に申し訳ありません」
僕はそう断った。
「学校はどうしたんだい?」
王牙さんは心配そうに聞いてきた。僕は冷静に、
「退学しました」
と告げた。王牙さんは、さほど驚いていないように、
「まぁ、そうだろうね。あの事件、『十一月のバーニング』は相当重い事件だったからね。Number.2が居たって話もマスコミに流れたし」
と言った。僕はため息をついた。僕の名前がバレようとなんだろうと別に関係ない
「本名さえバレなきゃ問題無いですよ」
僕はあくびしそうな眠い声で言った。
「まあね。それで、要件はなんだい?」
王牙さんは要件について聞いてきた。僕は、
「僕は現在足を負傷中です。そして戦闘に行ける状況でもありません。マニュアル通り、」
僕は一拍置いて、
「狙撃の仕事をしようと思うのですが、どうでしょうか」
と王牙さんに聞いた。王牙さんはあ〜…と言ったあと、
「破壊科と殺害科、どちらだい?」
と聞いてきた。僕は俯いた。殺害科…正直外すかもしれない殺害科には入りたくない。しかし、やる事もそれくらいしかない…僕は顔を上げ、暗い声で、
「独自に動いてもよろしいですか?」
と聞いた。王牙さんは電話先でもわかる程嬉しそうな声で
「もちろん!今人手不足だったからちょうどいいよ!君は第七階層だ。独自に動くくらいのカリスマ性はあるだろう!頑張ってくれ!」
と言った。僕は、
「ありがとうございます!」
と嬉しく思って言った。王牙さんは、
「それじゃあ、今日はゆっくり休んでてくれ。任務は明日からだ。頼んだよ」
と言って回線を切ってきた。僕ははぁ、とため息をついた。
「……負傷しなきゃよかった……」
僕は俯いてそう言った。正直負傷したからこんなことになってるし……普通に姉さんに狙撃を任せた方が良かったか?まぁ後悔しても今更だ。僕は自分がやった事に間違いは無いと思っている。その時僕はハッと思い出した。
「……ロッカーの私物、持ち帰ってねえ……」
僕は項垂れた。ロッカーの中には、たった一丁のライフルが入っている。ギリギリ駿河は持ち帰っているが、 ライフルとサブマシンガン、SHG(サイレントハンドガン)を持ち帰るのを忘れた。うう……姉さんに頼もうかな……
「……マジ萎えるわ」
寝よう。そうしよう。僕は決意して、二階の寝室に向かった
『ガチャッ』
僕はドアの開く音で目を覚ました。
「いや誰だよ」
僕は眠い眼(まなこ)を擦りながら寝室を出る。下ではカン、とバックを置く音がした。しかも二回。……彼方達か?と思ったが、僕は二階の廊下にある時計を見ると、
「……は?」
現在時刻午前十時であった。
「何もかもおかしい」
僕は一気に目が覚めた。なんでだ……ほんとに。色々おかしい。何もかも。なんなんだ一体。僕は怪訝な顔を浮かべて下に降りた。階段にも響く笑い声が聞こえる。僕は下に来て、リビングを覗いた。僕はリビングの様子を見て目を剥いた。そこには、お菓子と飲み物を出してドンパチやっている男女が居た。僕はその場に固まる。知らない人だから?違う。カップルだから?違う。何故、何故、
「……姉さんと愁が?今は二時限目終わったばっかでしょ?」
と、言った。あちらの二人組は僕に気づいたらしく、振り向いてきた。女──姉さんは、
「私達、退学したのよ」
と、笑顔で言ってきた。男──愁も頷いている。僕は混乱する。何故二人も退学するのだ?というより、この人たちは何を言ってるんだ?僕は絶句した。なんだ、この人たちは。嘘でもついているのか?僕がそう思うと、姉さんが微笑んで
「嘘じゃないわよ。ねぇ〜愁♪」
と言った。僕は、
「…マジ…かよ」
と消え入りそうな声で言った。今まで黙っていた愁は、
「マジだぜ。大マジ。」
と言った。僕は数秒沈黙した後、
「なんでだよ!!」
と叫んだ。姉さんと愁は驚いていたが、僕は、
「姉さん達まで退学する必要無いだろ!」
と叫ぶ。精神状態はもうぶっ壊れている。目から涙がこぼれた。正直僕はこの人達に退学して欲しくなかった。彼方のためというのもあるが……ほんとは僕のようになって欲しくなかった。この人たちには楽しい学園ライフというものを楽しんで欲しかった。姉さんは、微笑み続けた。僕は一歩前に出る。愁は笑顔になる。この人たちはサイコパスなのか?僕達の間に沈黙が走る。すると姉さんがこちらに来る。僕は、
「……なに、姉さん」
と掠れた声で言った。姉さんは微笑み続ける。姉さんは僕とゼロキョリまで近づいてきた。少し沈黙が走る。すると、
「……姉さん?」
姉さんは僕を抱きしめてきた。久しぶりだった。四年前の時だっけか──そんくらい前だ。最後は。暖かい抱擁の中で、姉さんは、
「私には疾風達しか居ないのよ?」
と、優しく言ってきた。この空気が和らぐ声、ゆったりさは健在である。……姉さんは
「疾風は退学した。それは、事実。そして、私達も疾風と同じことをした。だから、退学したのよ?」
と言ってきた。僕は思考を巡らせる。……姉さんは、こんな人間じゃない。これは僕の15年の姉さんとの付き合いが証明していた。姉さんは、正義感に駆られて動くとか、そんな生易しい人間じゃない。僕は、
「ただ単に僕と離れたくないから退学したんでしょ」
と言った。姉さんは抱き締める力を強くして、
「…お見事。貴方にはなんでもお見通しなのねぇ〜」
と笑って言った。僕は全てを理解した。僕は姉さんの背中に手を回す。
「ラブラブ姉弟なこと。彼方が嫉妬しちゃうぞ〜?」
愁はニヤニヤしながら言った。僕は、
「シスコンの姉に付き合ってるだけだよ」
と言った。姉さんは、ガチで困惑してるようで、
「え、疾風、私の事そんなでしか思ってないの?!」
とまじで強く抱き締めてきた。僕は呼吸が苦しくなってきたため、
「ちょ、苦しい…少し緩めて」
と言った。姉さんは、
「絶対離さないわよ〜♪」
と言っていた。僕は、愁も姉さんと同じ理由だと思った。この2人、本質的なところは同じだからね。単純なところは。僕は、
「持つべきものは愛せる仲間だな」
と呟いた。すると姉さんは、笑いながら、
「恋人も、でしょ?」
と言ってきた。僕は高笑いして、
「ハハハ!それはそうだ!」
と言った。外は晴れる。Numberと言うのは、絆のNumberか……僕は高笑いする。
「Numberってやっぱやめらんねえなあ」
僕は心の中でそう呟いた。僕の心は凄く晴れていた。僕と姉さんはこの後も何十分か抱きしめあい続けた
四章 Raid 完
作 TKGーカシイナル
著 TKGーカシイナル
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