第Ⅱ章 game starts

六話 Number.2の過去


「…ということで、今回のミッションは失敗してしまいました…すみません。」

僕は左肩を抑えながら王牙さんに言う。まだ顔をしかめてしまう。

「…失敗なのは仕方ないんだ。これは失敗前提のミッションだからね。」

僕は目を見開く。失敗前提のミッション?そんなのは初めて聞いた。…まぁ難易度が難易度だから、生存するだけで奇跡なのかもしれない。

「……わかりました。次は必ずや成功させます」

僕は頭を下げる。その時に思わず左肩の圧迫を外してしまった。案の定王牙さんが目を見開く。…王牙さんは暗い顔で

「…銃で撃たれたか?」

と聞いてきた。とても低い声だったため、僕は若干恐怖する。

「…はい。我ながら失敗しました。」

僕はそう答える。王牙さんは顔をしかめ、

「…それじゃ闘えない。完治までの休養を要請する。」

王牙さんは爆弾発言をした。僕は目を見開く。それなら、もう敵も準備が整ってしまう

「…学校を休んで、休養をとるんですか?」

僕は一応聞いた。王牙さんは暗い顔のままで

「…もちろんだ」

と消え入りそうな声で呟いた。

「そんな無茶な?!敵との戦闘はどうするんですか?!僕しかできないミッションなんですよ?!」

と僕は訴えるように叫ぶが、

「疾風の身体の方が大事だ!!!」

王牙さんは悲痛な声で叫ぶ。

僕は絶句した。

「…休め。命令だ」

王牙さんはそう言い残すと立ち去って行った。僕はその背中を見送ることしかできなかった


「…その傷だと全治三週間…といったところでしょうか」

僕は医者から言われた言葉を思い出す。なんとなくイライラしてきた。

「っち……」

僕はベッドの上で舌打ちをする。

何故三週間もこんな生活を……

僕はホントにイライラするったらありゃしない。しかし、

「……痛えよ……」

左肩の傷が痛むのは相変わらずだった。思わず顔をしかめてしまう。

「……いつ治るんだ……」

僕は考えるのをやめ、寝ることにした。今はとにかく何も考えたくなかった。無心になりたかった。だから、寝る。

寝る時には、夢を見る。

それがどんな悪夢であっても…………


夢というのは、時々過去を見せる。今日の夢はまさしく、自分の過去の話だった。……悪夢といえる過去の夢。


「さっさとやらんかい!!!」

父親の怒号が辺りを響き渡る。……この時僕は六歳。こんな時から僕は虐待を受けてたのかと絶望する。今絶望したって過去は塗り替えられないけどね。

「……はい」

僕はボロボロの服を着て、ボサボサの髪で……ととても酷かった。父親が稼ぐATMのため、僕は働くしか無かった。……そう、その時は。

僕は七歳にして学校にも行かず、トレーニングを続けた。身長が高いおかげで、トレーニングをしてもなんとか身長の伸びが止まるのは避けられた。

そして僕は小学校一強くなった。三年生になると、イラつくやつはみんな殴り飛ばすようになってしまったため、友達は少なかった。……今つるんでるやつらくらいだろう。

おっと、何故僕がここまでやったか説明しとこう。

僕には一歳年下の妹が居た。名前は神無月恵。とても愛嬌があり、僕にとても甘えてくる可愛いやつだった。恵が悲しい顔をしない為ならどんな事でもやった。虐めるやつは殴り飛ばす。

''お兄ちゃん!''

''どうしたの?''

''助けてくれてありがとう!''

あたりまえだった。虐めは少なかったが。父親にも反抗し始めた。反抗する度に殴られ、恵は心配してくれたが、僕は大丈夫と言っていた。

「お兄ちゃん、今度どこかに行こうよ。」

「お兄ちゃん、」

そうやって恵のことだけに熱中できた。姉さんや仲良い親友などとも仲良く、恵と一緒によく遊んでいた。…とても幸せな日々だった。失いたくなかった。しかし、まぁそんな生活が続くわけもなく。悲劇としか言えない殺人事件が起きる。なんと道端でいじめっ子が恵を突き飛ばしたのだ。''車が通る寸前の交差点の車道に''。そして僕はその一部始終を見てしまった。恵が車に撥ねられる。僕は発狂しながら恵に近寄るが、もう息をしてなかった。この時僕は決心した。…こんな悪いことする人間が居るなら、

「…死んでしまえばいい」

僕はそう呟いた。とても暗かった。歩道でいじめっ子がギャーギャー笑う。クラクションが僕をどくように促す。そしてその二つは、

「…死んでしまえ…」

いじめっ子を殺す為の感情に火をつけた。

「…殺す」

この時僕はとんでもない顔をしてたと思う。僕は恵を地面に置く。近くの人が通報したのか、救急車のサイレンが聞こえた。だが僕は救急車なんか気にならなかった。

「…人殺しが!死ね!」

僕は未だに歩道で笑ういじめっ子共に発狂しながら走る。いじめっ子達はまだガハガハ笑っていた。とても余裕そうだったため、いじめっ子のリーダーであろうやつの鳩尾に本気の拳を叩き込んでやった。いじめっ子は胃液を吐きながら呻き、そのまま倒れた。

僕は怒り狂い、そのままいじめっ子を殴り続けた。…途中でいじめっ子を殴る手の感触が無くなる。後ろから僕は警察に手を捕まれた。

「…ボク、ちょっと交番来てくれる?」

といじめっ子と僕を連れていった。


こっからは覚えていない。僕はこの時既に生きる意味を失っていたのかもしれない。とにかく交番のことは思い出したくは無かった。さっさと帰ろう。僕はそうやって家に向かおうとする。すると

「…坊や」

後ろから声をかけられた。

僕は後ろを振り向く。そこには見知らぬ青年がいた。

「君、強いね。」

それが青年の最初に言った言葉だった。

「…僕の組織に来ない?」

急に僕は勧誘されたので断ろうとしたが、青年のにこにこした表情には断れなかった

これが王牙さんとの出会いだった。…ここも夢に出るとは…

そして、僕はここでこの夢が途切れた。


次の夢は、どの過去だ。


僕は暗い公園にいた。…父親と共に。

どうやらその時の僕は四年生だったらしい。ナイフを構えていた。そして父親に斬りかかっていた。でも父親はナイフを悠々と取り上げた。僕が絶望していると、それに構わずナイフを振り下ろした。しかし、僕は背中にナイフを隠していたらしい。僕は顔をニヤつかせながら背中に手を回しナイフを取り出した。次の瞬間驚いた父親のナイフを余裕で躱し、地を蹴って頸動脈を斬り伏せた。

これが僕が父親を殺した一部始終だった。

何故ここまでするかって?

姉さんとお母さんにも酷いDVをしていたからだ。僕だけにしてればいいものを…

僕が後片付けをして、その場から立ち去って行くのが僕の目に洗礼に焼きつかれた。


そしてまた僕は夢から覚める。

「…悪夢だらけだったな」

恵の死亡を見るのは完璧に悪夢である。ちなみに恵は未だに死にもせず生きてもいずベッドに意識不明のまま寝ている。

「…今日の夢?」

今日の夢ではない。これはいつも見る夢だ。

「…僕がどれだけ恵を大切に思っていたか…?」

愚問だな

「…アイツが居なきゃ、今の僕は居ないさ。僕は、恵の意志を継いでいる。」

僕は胸を張ってそう言える。恵の意志、それは

『お兄ちゃん、私以外の人を大切にして、救ってあげて』

…僕はこの言葉を聞いてから、恵を一層大切にした。それでも、恵は死んだ。だから、恵以外の人も大切にして、救う。それがNumberの仕事と僕のエゴだった。だから

「僕は優しい人でもない。誰かのために動いてるのではない。自分の為に動く、偽善者のエゴイストだ」


七話 Number.2の後輩


「もう完治しました。大丈夫です」

先程医者にそう言われ、退院手続きを取った。今は家に帰っている。…三週間学校を休むため、お義父さんに「拳銃の流れ弾に当たった」と言ったらお義父さんが「病気で体を壊したらしい」とユキさん以外の先生に説明してくれた。優しいお義父さんだ。さらにユキさんも、病気とみんなに伝えてくれたらしい。やれやれ、拳銃の弾に当たるなんて恥ずかしい。Numberとしてはずかしいわ…

ちなみにお見舞いに来る人も居たが、姉さんと愁と西賀姉妹と身内以外面会しなかった。もちろん傷がバレると思ったからだ。…今思ったが、僕は誰に語りかけてるのだろう。

「…僕の日記を見てる人が居るのかな?」

まぁそれは置いといて。僕は思い足取りで家に帰る。

「ただいま〜」

僕がそう言うと、あっけらかんと姉さんが

「あ、おかえり」

と返してきた。…元気そうでなによりだ。まぁ僕も肩撃たれただけだし心配されることも少ないだろう。あと、姉さんは僕が絶対戻ってくると信じていたんだろう。我ながら幸せである

「まぁ今回は失敗しちまったよ」

僕は頭をカリカリかく。マジで左肩ぶち抜かれたのはヤバすぎる。アホにも程があるわ。てか胸じゃなかっただけマシか?まぁ生きてるから関係ないか

「…次変なミスおかしたらぶん殴るわよ」

姉さんはドスの効いた声で言ってきた。やだこのこ怖い

「左肩くらい何ともないんですがそれは」

「仕事できなくなるでしょ?」

姉さんは優しい声音で、笑って言う。…目が笑ってねぇ(((())))

「…それに皆が心配するし」

ん?何故か聞こえなかった。ボソボソと呟いているようだ。

「…まぁ…すんまへん」

僕は頭を下げる

「次から気をつけるように!!!」

もう姉さんは笑顔になっていた。しっかり目も笑っている。いつもの姉さんの姿に僕はホッとする。その日は姉さんにご馳走を作ってもらい、ゆっくり休んだ。え?勉強?それはねぇ、もう僕は高一レベルの勉強してるから大丈夫。王牙さんが一応として教えてくれたのだ。ほんと、感謝してもしきれないわな。あの人は優しすぎるんだよな…まぁそれが僕が王牙さんを好きな理由だが。…ホモじゃないからな?

てかいつも思うんだけど僕は誰に語りかけてるんでしょうかね。僕の日記を見てる人でもいるのかな?

まぁそれは置いといて。今日は彼方と愁と由香里とユキさんも来て退院祝い(?)をしてくれた。まあ楽しい夜だった。幸い今日は日曜日なので明日は学校に行けそうだ。…お義母さんとお義父さんにも報告しなければ…ということで朝一に校長室に行くことにした。



「…まぁ、ということで僕は完治したよ。」

僕は今校長室にてお義母さんとお義父さんに会っている。で、完治した報告と次いでにNumberとDreamerのことを話に来た。

「疾風〜!無事でよかったわ〜」

お義母さんー霞雨葵(かすみさめあおい)ーが僕の背中をバンバン叩く

「…せめてもっと音小さくしてよ…ユキさん以外にバレるでしょ()」

僕とお義母さんとお義父さんの関係はユキさんと西賀姉妹、姉さん、愁しか居ない。ってことであまり学校内でスキンシップをとられるとバレてしまう。

「…まあ葵、落ち着きなよ。疾風の完治祝いはまた楓も合わせて皆でやればいいさ」

お義父さんがそうお義母さんをなじる。

…ほんとお義母さんは若いなぁと思う。なんでこんな元気なんだ?若干呆れながらそう思う

「まぁ怪我には気をつけてよ。死ぬとは思ってないし。胸を貫かれるとかいうアホらしい怪我はしないように。」

お義父さんが僕を叱る。あぁ…こんなめんどい事になんなら二度と怪我しねぇと心中で苦情を述べるのであった……

まぁ教室に入ると大丈夫?大丈夫?とか尋問されたり色々されてクソだるかったのは言うまでもないだろう……



「疲れた…」

学校が終わり、僕は独りごちりながらバイクを走らせる。え?何故バイクかって?Numberのアジトに行ってんだよだよ馬鹿野郎

「あんたが怪我するからでしょ…」

隣で姉さんもバイクを走らせる。ちなみに愁も居る。

「左肩損傷で三週間はアホだろ」

愁が真顔で言う。左肩損傷じゃなくて左肩ぶち抜かれただけだからなぁ…そこまで…ってか三週間も休まなくていいのにぃ…って感じに心の中で苦情を述べながら僕達はNumberのアジトに向かうのであった。



「ご苦労だったな、Number.2、Number.0(霞雨真理奈のことね)、Number.8(愁ね。)」

Numberのアジトに着いた僕は、出迎えをされる。…いやちょっと待て

「すみません、王牙さんはどこですか?」

僕は怪訝な顔をして目の前の女の人に聞く。

「…その前に私がいることに驚けよ…Number.2」

目の前の女性はそう呟く。

「えぇ、そうですね。舞さん。…いえ」

僕は目の前の女性ー葉月舞ーさんを見つめながら

「Number.81さん」

と呼ぶ。愁と姉さんはけっこう目を見開いて驚いてるようだ。まぁ、Number.81、葉月舞さんがここに居るのは中々ないからだ。

「…舞さん、王牙さんはどこですか?私と愁と疾風が呼び出されたんですけど…」

姉さんが舞さんに尋ねる。

「いや、私も呼び出されたからなぁ…」

舞さんはいかにもめんどくさそうな顔で呟く。…ってことは、舞さんも王牙さんの居場所を知らないのか…

「俺ならここにいるよ」

後ろから声がしたため振り返ると、そこには王牙さんが居た。

「…どこにいたんですか」

僕は一応王牙さんに聞く。

「そうだぞ王牙。何故私達の前に居なかったんだ。自分から呼び出したくせに」

舞さんも不機嫌そうに言った。

「…心配しましたよ。王牙さん。」

姉さんも同調した。

「ごめんごめん。新人と色々あってね」

王牙さんは頭をカリカリかく。

「…俺が言うのもなんですが、遅れそうなら事前に連絡ください…」

愁は明らかに不機嫌そうに、呟いた。と、待て。一つだけ触れてないことがある。

「…新人って…まさか」

僕は震える声でそう尋ねる。姉さんと愁と舞さんはキョトンとしていたが、王牙さんはため息をついて、

「…察しよ過ぎない?」

と呟いていた。簡単の声か呆れた声かよくわからない。

「…まぁ要するに、君たちの後輩さ。」

僕ははぁとため息をついただけだが、姉さん達は驚いていた。

「後輩?!六階層ってことですか?」

「五階層か?」

「…後輩って…そんな急に…」

まぁ三人はそれぞれの回答をしていた。

「…後輩が入ってきたんだよォ…階層は一応六だね……とても強い子だったよ。」

いかにも嬉しそうな表情だった。それほど強かったんだろう。僕は七階層に来れるだろうかと期待する。

「……王牙さん、その新人に会わせて下さい」

僕は王牙さんに言う。その新人とやらのレベルを確かめたかった。

「僕に匹敵するか見てみたい……」

僕は腕の裾をまくる。やる気満々だ。

「……あんたがやると気絶するでしょ…てか新人が怖がるからやめなさい」

姉さんが止めてくる。舞さんも愁も同調していた。

「疾風……やりたいならいいけど、程々にね」

王牙さんは許可をくれた。姉さんたちは心配してたが、僕を誰だと思っているのか……

「じゃあ先輩達にご挨拶してね。入ってきて。」

王牙さんはその新人に向かって

「天ノ川深雪君」

と呼んだ。……その新人ーいや、天ノ川深雪とはどんな人なのだろう

ドアが遠慮するように開かれる。ゆっくりと。そしてドアが全開になり、人影、天ノ川深雪の姿が見える。その容姿は、朗らかな童顔と、上品なワンピース、白い靴という、見たものを引きつける美しさを持ってるようだった。端的に言おう。

ロリコン歓喜である。

「……幼そうですみません」

天ノ川は怒った口調でそう言う。

「僕はそんなこと思ってないぞ。さっさと準備してくれ」

僕はぶっきらぼうに言う。これがいつもの新人が入ってきた時の対応だ。姉さん達も黙って見ている。……まぁこれは演技だが

「……準備とは?」

天ノ川はそう聞いてきた。

「決まってんだろ。僕と闘うんだよ」

僕はそう突き放すように言い、腰を下ろす。天ノ川はため息をつき、

「……それだけですか」

と呟き、腰を落とした。

「……行くぞ」

僕は地を蹴った。間合いを詰める。天ノ川との間合い約5m。約1mになったとき、天ノ川は足を思いっきり払った。僕はその足を避けるが、不覚にも態勢を崩してしまう。天ノ川は右足でかかと落としをきめようとしてきたので、僕は足を上に払う。しかしそのかかとは落とされず、右足を横に振った。僕はその足に衝突する。また態勢が崩れる。僕は地面に倒れた。天ノ川は近づいて、またかかとを上げた。そして振り下ろされた瞬間、僕は足を曲げ、思い切り地を蹴る。そのままバク転をする。そして足が地に着いた瞬間、僕はまた地を蹴り、頭から天ノ川に突っ込む。天ノ川は呆気にとられ、そのまま頭が鳩尾に入る。

「ガハ…」

そのまま天ノ川は倒れた。やべえ気絶してる。やりすぎた……やべえ

「……疾風、やりすぎ」

まぁこの後姉さんに散々怒られたのは言うまでもない



「昨日はすまなかったね」

僕は第七階層の部屋で後輩となった天ノ川に謝る

「いえいえ…私が弱いのが悪いですし……」

まぁやりすぎたからなぁ……弱い強い関係無いわ……

「君の技量は素晴らしい。これからよろしく頼むよ。後輩くん」

僕はわざと色っぽくウィンクしたのだった

「……よろしくお願いします」

天ノ川はにこやかな笑顔でそう答えた。ふと窓を見ると、空には雲がなかった



八話 沈黙


「今日は素晴らしい日だ…」

僕は窓の外を眺めながら呟く。

窓の外では、青い風景が広がっていて、心地いい風が、空いた窓から入ってくる。

「…澄んだ空気、心地いい風、雲ひとつない空…う〜ん、今日はいい一日になりそうだ。」

僕はのびをしながら呟く。

今日は日曜日だから学校は無い。…Numberの仕事は変わらずあるがね!!

まぁNumberの仕事はそこまで負担じゃないし勉強も負担にすらならないので、今日はゆっくり過ごせそうである。

「まぁこんな日に限ってなんか事件とか起きそうだなあ」

死亡フラグだろうか?まぁフラグ回収とかヤバい話にならなければええんやがなぁ

まぁ大丈夫だろう。日曜日に事件起こす暇人なんて居ないだろ

「う〜ん」

僕は思いっきり伸びる。やはり窓から心地いい風が入るのは良い。

「…ああ、仕事は無い…けっこう暇やな」

僕は暇なので、彼方とか愁の家に行こうかなと検討する。まぁあいつらどうせ暇だしいいか。

「…そういや今日何日だ?」

僕はカレンダーを見る。今日は六月七日。僕が転校してからちょうど二ヶ月経った。(学校名言ってなかったな…転校する前が県立平塚中等教育学校で、転校してからは横浜サイエンスフロンティア高校だ)ちなみに主は全然違うところの学校だぞ

「…ふぁー…眠い〜」

昨日は夜に事件が起きたため徹夜で仕事を終わらせた。だから恐ろしく眠いのだ。ましてや今日全然寝てないんだよなあ……最近仕事のあとは眠れないので、今日は、というより今日も眠れてない。

「…そういや、五月雨丸を研がないと…」

昨日の戦闘でけっこう五月雨丸を使ったので、刃が若干刃こぼれしていた。ちなみに死人は居なかったため、血や脂は着いていない。多少負傷者は出たが全員駿河に撃たれたからだ。(可哀想に。)Numberにも負傷者が出たためちょっとヤバかったけどね。…ヤクザとの闘いだったが、まぁ組長は逮捕されたし、結果オーライである。僕は戸棚から包丁研

ぎを出し、五月雨丸を研ぎ始めた。その間は基本的に無心で取り組んでいた。そうじゃなきゃ五月雨丸がまた刃こぼれするからね。ちなみに姉さんはその間も寝ていて、研ぎ終わり起こすときに恐ろしく苦労した。あぁ、この人マジで休日寝すぎでしょ…まあなんやかんやあって、僕たちはご飯を食べて愁の家に向かうことにした



「……で、何処へ行くの?」

僕は愁と彼方の家に向かい、二人を連れて歩いている(由香里は…居なかったんだわ…)で、行くあてもなかったため、今こうやって彼方が僕に聞いてきているのだ。

「…あはは…どうしよ」

僕は笑いながら行く場所を考える。

「…あそこでいいだろ」

愁がそう言う。僕は首を傾げた。姉さんも彼方も頭にクエスチョンマークを浮かべている。

「あそこって?」

僕は愁に聞いた。そしたら愁は

「小鳥遊組(たかなしぐみ)」

と答えやがった。

「…あそこ行くの?」

姉さんは怠そうに呟く。

「小鳥遊組?行こうよ!!」

彼方は大はしゃぎである。全く、困った人だ。

「…まぁ久しぶりに行こっか」

僕は頭を掻きながらそう言ったのであった



〜小林圭の独白〜

俺は小林圭。小鳥遊組の組長である。小鳥遊組というのは、普通の暴力団である。俺達はヤクには手を出さないし、抗争はしても死者は出さない。それがうちらのモットーだ。更にNumberの主要メンバー、Number.2の古い友人であるため、Numberとも仲がよかった。何回手伝って貰ったか覚えてないくらい共に闘った程俺達はNumberと仲がいい。でも、Numberには入らない。今の仲間達とヤクザのシノギをやるのが楽しかったのだ。Numberはどんだけ強くても事務仕事はやる。俺達はNumberに入って義務の仕事をやるより、自由に働きたいのだ。更に俺は人の下につくのは嫌いだ。だから俺はNumberの管轄には絶対入らなかった。

まぁそんな平和な小鳥遊組でも、遂に若い奴がヘタこいてしまった。なんと強盗をやっちまったのだ。そのせいで俺達は捜査されている。俺は何もしてない。何も知らない。俺は即その若い奴に指を詰めろと言い放った。しかし、手下の一人が止めたため、組を追い出すだけにした。そしたらなんと、俺の他の手下がやった、と思いっきりサツにホラ吹きやがった。ったく、あいつ次会ったら絶対指詰めてやる……ってまあそんなこんなで今思っくそ家宅捜索&職質を受けている。ああめんどい。俺は一度も歌った事がなく、それが俺のモットーであった。俺に非が無いなら、事実を言ってあとは沈黙を守る。

「黙ってんじゃねぇよ!!!」

警官が怒鳴るが、そんなのお構いなく、俺は沈黙を続けた。俺は黙る。小鳥遊組は俺が守るんだ。てか何故俺は小鳥遊組のアジトで職質受けてるんだよ……ったく

俺は沈黙を破ることにした

俺は大きくため息をつき、

「貴様達があんなクソ野郎の言葉信じてんのが悪いんだよ」

俺は舌打ちする。まずまず戦闘で負けるはずないから大丈夫だろう。俺は産まれてこのかた戦闘しまくったが基本的には負けない。大丈夫だろう。

「…てめぇ立場わかってんのか!」

警官が台パンする。

立場?冤罪を押し付けられてる俺の方が上だわ。

そうやって泥の職質を続けていると、

「……圭、お前何したん?」

前から聞き覚えのある声がした。小学校時代以来の旧友の声が。

「……お前、なんでこんな時に来た?」

俺はそいつを見ないようにしながらそう聞く。

「暇つぶし。」

そいつは何気なくそう言いやがったのだった。



「なんで職質受けてんの?」

僕は圭にそう聞いた。

「…濡れ衣だよ」

僕は圭の回答にとてもビビった。

「……彼方達を外に置いといてよかったわ」

僕は頭を掻きながらそう言う。

「…ったくどこの馬の骨ともわからんやつが…俺の遊びを邪魔しおって…」

僕は思わず口調を変えてしまう。

「だっ、誰だ!」

警官は僕に銃を向けてきた。

「…俺に銃は無効さ。な〜に。俺はNumberのやつだよ。小鳥遊組のこいつと仲良いんでな。遊びに来たんだ。で来たらこのザマ。ったく、お前らヤクザを信用しろよ……」

僕は呆れてため息が出る。

「…で、そのヘタこいたやつは誰?圭」

僕はNumberと聞いて硬直している警官を尻目に圭に聞いた。

「…和田恵一。そいつが俺に濡れ衣かけたやつだ。」

「了解した。このザマ、僕がどうにかしてみせるばい。」

「…頼んだぞ」

「僕を誰だと思ってんだ?……世紀のNumber.2様やぞ」

僕は口角を上げ、その和田恵一とやらをしばき倒す計画を考えながら彼方達の元へ行くのだった


「……ったく、圭ってやつはこんな時に迷惑かけやがって……」

僕は地団駄を踏む。

「…圭に何が起きたのよ」

彼方が不思議そうに聞いてくる。まぁ僕がキレてるし仕方ない…か

「実はな」

僕はさっき圭に説明されたことをそっくりそのまま話した。

「…は?」

愁は口をぽかんとさせ、姉さんは無言で口をつぐみ、彼方は下を向いて俯いていた。…あ〜あ、その和田ってやつめんどうごと作ったなあ……

「ってことでそいつ特定してシバく。」

と僕は宣言する。三人は顔を見合せたあと、こくこくと頷いた。

「まぁ今から特定するからお出かけ中止かなあ…てか行く場所無いし特定次いでに雑談するか()」

僕はそう提案した。彼方は「雑談するんならいいわよ」といい、愁は「特定してやらあ……」と言い、姉さんは「シバキ倒してやる……」と言っていた。あれ待ってまともな返事したの彼方だけ???その他の二匹唸り声立てて殺意剥き出しにしてシバキ倒そうって呟いてるんですがそれは…まぁいい意気込みか。…一体そうなのかなあ?まぁ、なんでもいいや。てか正直僕もキレてるからなあ……なんてったって圭が迷惑蒙ってるし…てか小鳥遊組崩壊の危機だわこりゃ……

「まぁ圭が沈黙を保ってくれるなら…これで特定はできるか……」

まぁ結局時間は圭に任せられる。圭が沈黙を保たないなら時間ないしなあ……

ちなみにこの後和田恵一の件を解決した(話し飛んでるけど、ここ別に面白くないしいいよね)僕らは普通に帰宅していた。え?和田恵一はどうしたって?察にぶち込んだわ。これで圭の罪は晴れるだろう。

さあさあこれにて小鳥遊組崩壊の危機は脱却と。さあ久しぶりにほのぼのLIFEが送れそうだぜ


九話 Summer vacation〜First Helf〜


「起立!礼!」

僕は一学期最後の礼をする。これで一学期終了。夏休みだ。え?成績?

オール3だ当たり前だろ

てか姉さん酷かったな……オール1て……まぁ仕方ないのか?あのアホ姉は……まぁ過ぎたことは知らん。それが僕のモットーだ。え?恵?お前マジでぶっ飛ばすぞ?

「やっと夏休みや〜」

僕は思い切り伸びをする。今日は快晴。只今の時刻10:45。高校一年生が帰る時刻は11:00のためあと十五分は暇なのだ。ってことで僕は愁の席へ向かう。

「愁〜!」

僕は愁の背中を叩く。しかし愁は反応しなかった。机に突っ伏してる。耳を澄ますといびきが聞こえる。この人まさかだけど寝てんの?嘘やん……僕暇なん?十五分?マジで?彼方他の友達と話してるのに?姉さんはいつも通り寝てんのに?僕Alone(孤独)なの?(唐突な英語)

まぁそんなこんなで僕は結局愁の、席で寝たんでこの話終わり!




「海行きましょ海!」

家に帰った僕は、姉さんにそう言われた。いや急に海って言われても…マジで言ってんのこの人?

「いや別に良いけどどこ行くん?」

「某いもけんぴよ」

なるほどね。昔よく行ったあそこの海か。まぁ良いでしょ。てか何人で行くんだよ

「彼方と愁は?」

「一緒に行くに決まってるじゃない」

はい。断言されました。マジで海行くなら有給取らなきゃいけない件について…一週間でいいか。一年に一ヶ月未満だし。あれ、そういや左肩の傷で3週間使っちゃってるやん…あ〜二日で有給取るか…あと水着の新調もしなきゃダメやん?交通手段考えなきゃじゃん?で愁と彼方と予定合わせるじゃん?どんくらいかかるんだよ()

「…僕有給どうすんの」

僕はため息をつく。

「はぁ?左肩の傷の件は有給じゃないに決まってるじゃない」

ちょっとまて。

「え、あれ有給じゃないの?」

僕はきょとんとする。てか有給じゃないとか初耳なんですけど?!いや…王牙さんは有給取るって言って…ああ、そういえばあの人病人とか怪我人に対して有給としてカウントしなかったなあ。優しすぎるだろ……マジで。王牙さん、敵に情けはかけないで欲しいけどなあ…僕は心中で呟いた。いやマジで……あの人優しすぎるのが玉に傷……なんてね。

「…もちろん行くよ。いもけんぴの所なら楽しめるだろうし」

「やったー!ちなみに日程は…」

姉さんは意気揚々としながら僕に予定を告げる。最初から無理やり行かせるつもりだったのかよ……ったくこの姉は……!変なところは用意周到だな!!!クソが!!!……まぁ優しいし役にもたつし頼りになるし…姉さんは素晴らしいと思う。僕はどーせエゴイストだし姉さんには勝てないよ。純粋に人を助けたいという姉さんには。僕は自分のために人を助けるからかぁ

あっ、口が過ぎたな

ともかく僕は、というか僕達は2週間後と決まっているビーチへのバカンスを楽しみにするのだった。



「久しぶりだな……この海」

ここの海のビーチは温泉街で、近くに愁の実家がある。で今は僕、姉さん、由香里、彼方、愁でビーチに来ている。この海は昔みんなでいもけんぴを食べた所なので隠語で僕達は「いもけんぴ」と呼んでいる。で今僕は水着に着替え、ビーチに三畳のレジャーシートをひいて寝ていた。着替え終わったのは僕だけなので、僕は日焼け止めを塗り、残りの四人を待っていた。ちなみに日陰に居る。それでも暑いし、潮の匂いがする。やはりいもけんぴは素晴らしい場所だ。昔来た時も感動したもんだ。こんな素晴らしい所が愁の実家の近くにあるのか、と目を輝かせていた。

「昔の思い出も良いもんだなあ」

僕が回想をしていると

「お待たせ〜」

と彼方が来た。

「よっ。遅かったね」

「…遅くて悪かったわね」

彼方は顔を赤くしていた。やはり彼方をいじるのは楽しい。(まってなんか僕ドSになってない?)

「あはは。まぁ残りの三人はどうせアイスでも買ってるんでしょ」

「えぇ、そうね…あの人たち暑い暑いってヒーヒーしてたからねw」

「早いなあwここに海の家があってよかったねえw」

「あの人たち暑がりだからねえ。」

「流石だなあw」

「やっぱ理奈はチョコで愁がバニラでお姉ちゃんがストローベリーなのかしら…w」

「いもけんぴの時と一緒じゃんw」

「いもけんぴは黒歴史よw」

「あははw」

「てかやっぱ潮の匂いが良いわねぇ〜」

「そりゃ良いさ!僕の最高のお気に入りだよ」

「海なんて久々だわ〜」

とまぁ、僕は彼方と雑談をしながらアイスを買いに行った残りの三人を待っていたのだった。ちなみにあまりに遅かったので僕達も飲み物を買いに行きましたとさ。



「お待たせ〜」

「待たせたな」

「遅れてごめ〜ん!」

で僕達が話していたらいつしか三人が来ていた。何故かアイスが握られていなかった。この人たちまさかもう食ったのか?

「……もう食べたの?」

彼方がにこにこした顔で問う。

「え、そうだけど……あれ、地雷?」

「…すみませんでした」

「何分待たせとんじゃわれえ!」

彼方がキレながら愁の肩を掴んでブンブン振り回していた。いや怖ぇよ彼方さん。僕は持ってきたスイカをムシャムシャ食べてた。あ〜美味しいんじゃ〜(*^^*)

まぁ彼方が暴れてるのを片目に僕はスイカを食べていたわけだが食べ終わったんで持ってきたバレーボールをオーバーで投げる。そしたら何故か今土下座している愁にぶち当たった(ちなみにわざとである)で球を拾ってサーブで姉さんにボールをぶち当てる

「少しは反省しなさい。」

僕は温かい目でそう言った

「「「はい」」」

三人はハモってそう言うのだった



「冷たぁい!」

「冷たっ」

「冷てぇ……」

姉さんと愁と由香里は海に足をつけて冷たいと言っていた。迷惑極まりないわぁ…てか真夏の海ってそんなに冷たいか???ったく、この人達は……

「早く来なよ〜」

彼方が声をかける。僕はバレーボールでオーバーをしていた。まぁ動けないから全然続かないけど(笑)

そんなこんなやってるとヒーヒー言いながら三人がやってきた。もちろんその三人の顔面にスパイク撃ち込んだのは言うまでもない

「一キロ泳いでくれば〜?」

僕は鬼のようなことを言った。彼方はクスクスと笑っており、三人は震え上がっている。なんでそんな僕を鬼みたいな目で見るの???まぁこの後普通に海で楽しんだけどね。(別にエロ同人誌みたいな展開なんてないぞ?お前ら期待してたやつ絶対居るだろ???)

海で遊ぶのは楽しいなぁ……と思える一日だったんだお!




海に遊びに行った日から2日後、僕達はショッピングに行くことにしていた。正直何買いに行くんだ?と思ったが、なんか服買いに行きたいらしい(僕欲しい服ないんですが?!)まぁ服以外にも色々買いに行くらしい(色々ってなんだよ…)あとランチも行くらしい(多分僕の奢り)なんか色々酷いなあ……何となく僕はめんどくさいと思っていた。てか海行ってから二日後だぞ?!なんでそんなしか経ってないのに大型ショッピングモールに来てんだよ?!少し休ませて?!(まぁ有給一週間しかないからなあ…はぁ……また有給取るか…)ちなみに今はなんかみんな各々好きな服を選んでんので、僕はベンチで待っていた。でもこの服屋には服以外にもネクタイ等もあるらしい。…ネクタイが最近ボロボロになってきたと感じている僕はネクタイを二着買うためにネクタイを選ぶことにした。そうしてネクタイコーナーに来て、ネクタイを選び始めた。けっこうな種類があるため、時間がかかりそうだ…はぁ…で、僕好みのネクタイを探してると、

「お前もネクタイ買いたかったんだな」

後ろから急に背中を叩かれた。この声といい背中を叩く強さといい、この人物は

「…なんだよ、愁」

愁だろうと考えた。

「俺もちょうどネクタイを選びに来たんだが、そこに疾風が居たもんでな」

「背中を叩くな。」

僕は感動の再開のようなテンションの愁と裏腹に恐ろしく低かった(眠いのだ)眠いったら眠いんだよごら

「てか愁もネクタイ選びに来たんだな」

「…ボロボロになったからな」

どうやら愁もくそボロになったらしい。まぁ戦闘ばっかしてたからなぁ…仕方ないか。

「おっこれ良いじゃん!」

僕は赤と青のチェックのネクタイを見つけた。値段は…いや高っ。24,000だってさ。あはは笑えねえ。まぁ24,000なんて払えるか…ったくネクタイで二万も消費するなんて…まぁ耐久性も高そうだし、品質も良さそうだし、よしとしよう。

「たけぇ!」

隣で愁が絶叫する。どれどれ、と値段を覗いてみたらなんと40,000円。いや高すぎて草

「草」

「草生やすなよ……」

「僕24,000のやつ買うわ」

「俺もそれにしよ…はぁ…」

ブランド物とは、とてもめんどくさいものである。 僕は心中でだからブランドは嫌いなんだと思う。てか今思い出したけど、僕ネクタイ以外にパジャマも無かったんだわ…今夏やし、薄いパジャマ探そ…

「僕パジャマコーナー行くけど愁来る?」

僕は愁を一緒にパジャマコーナーに行こうと誘うが、

「俺は他のコーナー行きたいから、すまんが行けない」

と返ってきた。

「了解した。じゃあまたあとで」

「またな〜」

僕は愁と一旦別れ、パジャマコーナーに向かうのだった



(…ここは高い物しかないのか?)

僕は心中で苦情を述べる。いやパジャマ一着8,000円って何事?高いとかいう話じゃない件。あ〜辛いめぅ

「何故僕よの好きな白の無地が無いんだ???」

ここはブランド物なのに白の無地は無いのか?頭狂ってるだろ。と思いながら探していると、赤の無地があった。

「無地あるじゃん」

白の無地があるのを期待するが、悲しいことに期待は裏切られ、無地は青と赤敷かなかった。いや怨むわ。しかも上下合わせて12,000…違う店で買えばよかったわ。そういや言うの忘れてたけど、彼方と姉さんと由香里は違う安い店に行ったらしい。ああ服屋なんて使わないから高い安いとかわからねぇよ…女は服屋にちょくちょく来るらしいから安いところがわかるらしい。凄いよな。僕はそこまで服屋来ねぇんだよぉぉおおおなんで女は服屋に良く来るんだよおおおおかしいだろおおおおおお

とまぁ心中で発狂するが、どうせ白の無地なんて無いと吹っ切れたので僕は諦めて青の無地を買うことにした。いやダサい…と途中で赤の無地にしたけど!まぁ買いたいもんも買ったしさっさと愁と合流して、彼方と由香里と姉さんの居る所へ行かなきゃ…と思い、愁に僕は電話をした。

「おお、疾風、今どこだ?」

電話に出てきた愁は開口一番そう聞いてきた。

「レジで金払って、今店の前」

「さっきネクタイ買った店だよな?」

「うん」

「了解。俺も同じ店にいるから、すぐレジ済ませて行く。」

「わかった。」

愁もまだ同じ店に居たらしい。で、レジ済ませてこっち来るらしい。で僕は待っていた

「お待たせ」

愁がきた。

「おかえり。今から彼方達と連絡とる」

「了解」

僕は愁と事務的な会話をした後、彼方に電話をした。

「彼方、今どこだ」

「お姉ちゃんと理奈と一緒に最初の店にいる」

「了解。僕は愁と一緒に今から向かう」

「わかったわ」

僕は彼方との連絡を終え、愁に彼方達の場所を告げ、さっさと行くことにした。

「にしてもお前も彼方好きだよな〜」

急に愁がそう話しかけてきた。

「お前しばかれたいの?」

僕は思いっきり睨んでやった

「そう怒んなって…でも少なくとも彼方は疾風のこと好きだろ」

「友達としてだろ?」

「さあな」

愁は終始ニヤニヤしていたので、

「覚悟!」

僕は水月に膝蹴りを叩き込んでやるのだった。




「「すみませんでした」」

僕と愁は彼方達に頭を下げていた。あの後愁が気絶したため、僕は65キロある愁の体をおぶって彼方達のところへ向かったため、恐ろしく遅れてしまったのだ。そしてたいそう怒られたので今頭を下げている──────────という事だ。誰だよ膝蹴り叩き込んだやつ…

「いやマジでなんで気絶してたん…」

由香里が呆れた口調で聞いてくる。正直くだらな過ぎたし、彼方の前で話すのも恥ずかしかったので二人で一緒に「ぶつかったんだよ」と嘘をついた。我ながら酷いなと思った。(実際愁に睨まれたしな)ああいとをかし

「まぁ気にしてないしいいわよ。これから気をつけてね」

彼方が優しい声音で言う。(若干呆れた顔してたけど黙っておこ!)てか目が笑ってない気が…いやそれは姉さんだわ

「てか貴方達何円使った?」

彼方は急にそう聞いてきた。

「ちなみに私は五千円よ」

姉さんはパンパンの袋を出してきた。…え待ってこれで五千円?!差が酷い……

「36,000円」 「40,000円」

僕達はハモって言う。すると

「「「貴方達どんな店行ったらその量で合計76,000円かかるのよ!!!」」」

と三人に怒鳴られ、服選びのいろはを教えられた。いやめんどくさすぎて草も生えなかった。トホホ、今日はとことん不幸だ、と自分のアホさと彼方達から溢れ出るオーラに震え上がりながら僕はそう心中で悲しく言ったのだった。ちなみにこの後、服屋のいろはを叩き込まれた上、さらに僕はネクタイとパジャマ、愁はネクタイと私服しか買ってないのがバレ、罰として更なる女子達の買い物に付き合わされ、帰る時には空はオレンジ色に色付いていた。で家に帰ると、三日月が空を覗いていた。もう遅い時間だから、ということでみんな僕の家に泊まることになった。僕は綺麗だなあと考えながらフラフラになった足を動かし、家のドアを開けた。そして疲れた体のまま夕飯を作り、気づけば時計は神も認めた四十五度を作り上げていた。飯が食い終わった時には時すでに八時半でしたとさ。こっからは僕はぶっ倒れて皆が風呂入ったあとに入ったという始末。もはや皆元気すぎて僕はさっさと寝たが、なんか皆は深夜二時くらいまで騒いでたらしい。いや頭おかしいだろ僕十時に寝たぞ。そういやあの人たち夜行性だったわ…と、僕は朝起きて朝食を作りながら由香里に昨日の話を聞いたのだった。



十話 Summer Vacation〜Letter Helf〜



夏休みも後半に差し掛かった。正直お泊まり会ばっかしてた記憶。てかずっとお泊まり会してたけど、なんかお母さんとお義母さんとお義父さんとユキさんが来るらしい。いやマジで?と思いながらその三人が来る日には彼方達とのお泊まり会も入れ、僕は歓迎の準備をした。てか酒買わなきゃあかんやん。これは王牙さんからもらうか…五万で買えるかな?そういや家計が最近若干苦しいんだが……いや多分ほとんどは昨日の買い物のせい。あとお泊まり会しまくったから食材費がヤバかったのだろう。僕はヒーヒー言いながら姉さんとお母さん達が来る日に備えて準備を進めていたのだった。ちなみに部屋は若干足りなかったので僕と姉さんと愁は同じ部屋で寝ることになった。いや狭すぎてわろうわ。ちなみに今までは愁と僕が同じ部屋なだけでみんなそれぞれの部屋で寝ていた。なんかくそ広くねえかこの家。まぁいうて部屋は七つしかない。まぁここには姉さんの研究部屋もあるから、そこで寝てもいいんだよなあ……マジで僕はヒーヒー言うのだった




〜霞雨楓の独白〜


久しぶりに疾風の家に行けることが決まった時、私は発狂するほど喜んだと思う。まあいうて四ヶ月ぶりだが、それでもとても嬉しかった。いや正直葵と聖菜とユキと愁君達と疾風の家に泊まれるのはマジで幸福だと思う。優しいいい息子になったなあとしみじみ感じた。さぁ疾風の家に行く時のために服選びとお酒を選ばなきゃ…てか私今何歳だっけ??……37歳だわ。まだ四十路手前かぁ…まぁそろそろ体力落ちてくるだろうし今のうちに楽しんでおこう。私はそう思った。さぁさぁお酒はどこかな〜



〜霞雨聖菜の独白〜



「…僕達疾風の家に泊まって何すんの?まぁ疾風の家に泊まるのはクソ久しぶりだけど」

僕は葵にそう問うていた。いやもう疾風の家に行くのが久しぶりすぎて泣きそうなんだが葵がおおはしゃぎしてるのでなんか気持ちを葵に持ってかれた気がして…まぁ嬉しいのは変わらないが!いや当たり前だろ楽しみじゃなかったらこんなこと葵に聞かねーっつーの

「何する…って疾風達と雑談するんじゃないの?」

葵は首を捻りながら言ってきた。まぁ普通の答えだわな。

「まぁそうだよな…」

「そんなことより疾風の家行けるんだからもっと喜びましょうよ!」

マジで葵はなんでこんなはしゃいでるんだ?まぁ楽しみなのは僕も同じだけど、流石に元気すぎて……

「葵も元気だよなあ」

「私は永遠の三十歳だもん!」

僕がため息をついても葵は元気良くそう返してきた。いや葵お前もう三十五でしょ…と心の中でツッコミを入れる。まぁ口に出すと命が危ういので心の中だけに留めている。葵マジで怖すぎるんだよなあ…

「ともかく、疾風の家に泊まりに行く日は近いんだから、準備進めるよ」

僕は葵に呼びかけたが、葵は

「酒と洋服以外終わってるわよ」

と言ってきた。…この人元気なだけじゃなく仕事も家事も両方こなすから凄いよな…と僕はいい嫁を持ったと思ったのだった



〜神無月疾風視点〜



「神は僕を殺す気か?」

僕は苦情を述べる。お泊まり会は今日だ。で昼ご飯からここに滞在するみたいなので今速攻で昼飯を作っている。正直クソ疲れている。

「私も手伝おうか?」

意地でも一人でやる僕に姉さんが呆れた口調でそう聞いてくる。いや姉さんは休んでろっつっただろ…と僕は心中で言い、建前として

「大丈夫だよ」

と投げかけた。いや姉さんさっき食材の仕入れでやばいほど疲れてるのになんでこんな元気なん?僕同じ年齢なのに疲れやすいなあと思ったがすぐに原因がわかった。多分前行った海とか色々の準備で体を酷使していたからだろう。僕の心身はけっこうボロボロだった。まぁ僕、姉さん、お母さん、お義母さん、お義父さん、愁、彼方、由香里、ユキさん、総じて八人分の昼飯を作ってるから疲れるのは当たり前…か。八人ってそこまで苦労しないと思ってたが、前作っていた五人分の倍近くあるのでクソ辛かった。ちなみに昼飯は麻婆豆腐にした(みんなで訳あって取る中華料理の方式にした方が正直クソ楽だった)で、麻婆豆腐八人分なのでけっこうやばい量だった。まぁ麻婆豆腐以外にも豚肉の生姜焼きとか一応副菜は作っている。サラダも作ってるのでまあ負担と時間はヤバかった。

「神は僕を殺す気か?……」

僕はそう神を恨みながら呟いたのだった



「おかえり〜」

「ここあなたの家じゃない件」

お母さんが普通に自分の家発言したため僕はツッコミを入れる。この人何ちゃっかり……お義母さんとお義父さんは姉さんと話していた。姉さんは心底楽しそうだ。ちなみに愁と彼方と由香里はまだ来ていない。あの人たち何してるんだ???今もう十二時……いやはよ来いよ

「久しぶりね〜疾風」

お義母さんが近づいてくる。

「久しぶり。」

お義父さんも近づいてくる。(いや言い方悪くて草)ちなみにお母さんは今姉さんの所へ向かった。

「久しぶり二人とも……って前左肩損傷したときの報告以来だからけっこう最近にあったよね?」

「「あはは!確かにそうだね)」」

僕がツッコミを入れるとしっかり肯定してきた。いやこの人達認めたよ。久しぶりじゃないって認めたよ。 僕が怪我した時の話認めたよ。

「……怪我の時…まぁ嫌だったなあ」

はぁ、と僕がため息をついていると、ピンポ-ンと聞きなれた音がした。

「はいはい今行きますよ〜」

僕は玄関に向かい、ドアを開ける。

「「「来たよ〜」」」

予想通り愁と彼方と由香里だった。ほんと、この人達元気だなあ。

「上がって〜」

「「「お邪魔しマース」」」

三人が家にあがり、手を洗ってそのままご飯を食べた。

「そういや疾風、高校では彼女できた?」

急にお母さんが聞いてきた。僕は思わず吹き出してしまった

「できるわけないじゃん‪w」

僕が笑いながら言うと、

「「「「「「「貴方イケメンだから一人は居るもんだと」」」」」」」

と、その場に居た七人が同意した。この人達死にたいのか?僕は思っくそ不機嫌な顔を奴等に向けた。てか実際不機嫌な件。ぶち〇したいわ(過激過激ぃ)

「…彼女ねぇ…いつかできたらいいな?」

僕は半ギレしながらそう言った

「冗談だってw」

お母さんが言い訳をする。…冗談でも許せる冗談と許せない冗談があるんだよ。と心の中でキレながら僕は顔ではハハハ、と笑っていた。(多分目は笑ってなかった。)我ながら怖いな。と思考を巡らせていると

「そういや高校の時の武勇伝聞かせてよ!」

とお母さんが言ってきた。お義母さんもお義父さんもユキさんもうんうんと頷いていた。武勇伝って……あれ待ってデジャブ半端ないんだけど(三話:翡翠の刃参照)ねぇなんでこの人達愁と同じような質問してくるの?てかお義母さんとお義父さん、ユキさんに関しては

「中学の時のも聞かせて」

と言わんばかりだった

「……中学まずクラスメイトへの顔面骨折、靭帯損傷、ヤクザへの脳震盪とくも膜下出血、先生へアキレス腱断裂、先輩への脳震盪等等…高校の時はヤクザの組の破壊、虐めっ子の退学、小鳥遊組の一人を刑務所にぶち込み……」

とまぁやばいほどの黒歴史を語った。正直アホらしい。まあ皆さん「いかにも疾風らしい」という顔をしていた。

「……貴方達は私の黒歴史を聞いて何が楽しいんだァァ!!!」

僕の怒りは頂点に達し、大声で雄叫びを上げるのだった。



ちなみにこの後夕食を取ったり、恋バナをしたりと色々あったが、主の疲労と日記の付けずらさから省略するとしよう。夏休みの思い出はこれで終わりだった。

まぁ色々濃い夏ではあった。(まあ秋の方が濃い生活だったけど)久しぶりにお母さん達に会えたからもうよしとしよう。僕的には満足できる夏だった

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