あの大空の下で

KsTAIN

第Ⅰ章 Huppy Starts

プロローグ


「だから、お別れだ。僕らはここで終わり。」

「……なんで、なんでよ!!!」

私は精一杯目の前にいる恋人……いや、恋人だった疾風を睨みつける。

「……説明する義理はない。」

「……なんなのよ、なんなのよ!!!」

「なんなんだ、と言われてもなぁ……」

そう言うとなんと疾風は頭を掻きながらこう聞いてきたのだ

「逆に恋人が死んで居なくなるのを目の前で見るのと勝手にどっかで死ぬのどっちがいいと思う?」

「えっ……?」

疾風の口から零れた「死」この言葉は、私の全身を震わせた

「死ぬって……どういうことよ!!!」

私は怒鳴りながら聞いた。疾風は、

「そのままの意味だ。」

と、私に絶望を押し付けてきた

「なんで死ぬのよ!!!」

私は耐えられなくなり、溜まった怒りを爆発させた。

疾風が、死ぬ──そんなことしんじたくなかった。疾風と私が別れたって、絶対私は彼のことを想うだろう。

それなのに……

「……なんなのよ…ホントに…なんなのよ」

私はとうとう耐えられなくなり、涙を流した

「ごめんね」

疾風はそういって私を抱きしめてきた。

久々に感じた温かみだった

「…僕は人の気持ちが理解できない。空気が読めたとしても、人の感情は読み取ることが出来ないんだ。だから、僕は皆に嫌われるし、僕も皆が嫌いだ。…でも、彼方だけは違ったらしいな…僕にはわからないけどね」

疾風も泣いているようだった

「……」

私はもうなんの言葉も出なかった。

出るのは、嗚咽だけ。

しかし…私は、隼風が何を言いたいのか、遂に理解した。

「…生きて帰ってきてよね」

疾風は、私の為に命を懸けている。

『人を殺し、また私の為に戦闘することで。』


一話 素晴らしき新天地


『プルルルル!』枕元にある携帯電話が振動した。「んだよ朝っぱらから…」

僕は眠かったため普通に無視をした。

…しかし

「鳴り止まねぇ…」

2分くらい鳴り止まなかったため、怒りは最頂点に達した。

僕は、通話ボタンを右にスクロールする。

「…もしもし」

恐ろしく低い声で僕はそういった。

「…え、なんか怒ってる?」

と、聞き慣れた声が聞こえた。

「…なんだ姉さんか」

電話の相手は姉、霞雨真理奈である。

「そうよ、疾風。今日は知らせがあるから伝えに来たのよ」

「朗報?悲報?」

「朗報よ!」

姉さんは、随分ご機嫌な様子だった。…なにか、僕の背筋に汗がツーーッと通る。嫌な予感がした。姉さんがこんなにもご機嫌な様子の時は、必ずと言っていいほどなにか裏があるのだ。

「…で、朗報っていうのは?」

僕は、恐る恐る手を震わせながら聞いた。

「なんと。…………」

姉さんは、「朗報」の内容を伝えてきた。僕は呆気に取られた。こんな馬鹿げたことがあるのか。

「んな馬鹿げた話…」

「あったのよ!」

もう何も言えなくなってきた。ちょっと一発ぶん殴りたい……

「決定は誰がしたの?」

「お義父さんと、お義母さん。」

「ファッ?!」

「当たり前でしょ、校長なんだから‪w」

「………」

お義父さんとお義母さんに決定されたなら仕方なかった。僕はガックリ肩を落とす

「……なんで、なんで、僕は、女子校に、行かなきゃ、ダメなんだ…」

僕は膝を地面につけ、悲嘆した。

「大丈夫よ。貴方が来るから、もう共学よ!」

「フザケルナァ」

「愁だって来るんだから我慢しなさいよ」

「( 'ω')ファッ?!」

愁とは、幼馴染の文月愁である。愁までお義父さんの被害者になったのか……

「愁もかよ……」

「しかも他の学校からも来るのよ!有志だから結構来るのよ!」

「……は?」

最早人の了解を得ずに決めたお義父さんとお義母さんを殴りたくなってきた。

「……僕、これからほぼ知ってる人が居ないところで生活するの???」

「いや、そういう訳じゃないわ」

じゃあなんなんだよ

「優斗は居るの?」

「居ないに決まってるじゃん。」

「愁と姉さんしか居ないわけ???」

「いや、そういう訳じゃ……」

「誰が居るんだよ他に(((())))」

なんかもう諦めた。

「……言わないでおくわ」

「マジで覚悟しとけよ」

「わーこっわーい★」

「……首へし折るぞ」

「えっ、何そのガチトーン…」

「てめぇは死ぬんだよ^^」

「やめ…」

ガチャリ

電話を切った。

「……マジあいつ覚悟してろよ…」

次会った時は地獄車してやるわ

『ピンポ-ン』インターホンが鳴った

「……はいはーい」

僕はドアを開ける。

「よう疾風^^」

「よお、愁」

「お前のお義父さんはいい人だねぇ^^」

「え、まさか、お前も…」

「真理奈から聞いてるわ^^」

「…あいつしばくか」

「せやな^^」

僕の前に居るこいつが、文月愁である。

真理奈被害者会作るしかねぇよなぁ!

「まぁ、上がりなよ」

「へい」

僕は愁を家に上げる。

「お茶飲むか?」

「いや、要らん」

「そうか」

「水をくれ」

「了解」

僕は二つコップを出し、水を注ぐ

沈黙が続いた

「疾風」

沈黙を破ったのは愁だった

「…どうした」

「いや、お前、どうするんだ?」

「どうするんだって?」

「転校するんだろ?」

愁は舌打ちをした

「そんなイライラするか?」

「俺・は・女・子・が・嫌・い・な・だ・よ」

「んなん僕もだよ(((())))」

「だろ?!まぁ俺はお前程じゃないけどな」

「僕は女性不信だからね仕方ないね」

「初対面の女子はキツイって…」

「思春期だねぇ」

「のんびり言ってるのも今のうちだぞ??お前もいつか彼女できるって」

「できないよ」

僕は苦笑する。僕はトラウマがあり、女性不信なのである…いや、女性恐怖症だな

「お前イケメンだろ」

愁が爆弾発言を投下する

「(´^ω^`)ブフォwww」

「いや、普通にお前イケメンだぞ」

「(´^ω^`)ブッフォwww

僕より愁の方がイケメンだよ?」

「いや、お前の方が…」

「満更でも無さそうだね★」

「んなわけ(((())))」

「(´^ω^`)ブフォwww」

「えぇ…」

「でもホントに愁イケメンだからモテてたでしょ〜?」

「……この話止めようぜ」

「始めたのは愁の気が……」

「悪かったって!すまんって!」

愁は顔を真っ赤にして言ってきた。

「ふふ…やっぱ愁をからかうのは楽しいなぁ」

「……まったく、誰に似たんだか」

「姉さんじゃない?」

「西賀姉妹の影響もあるだろ……」

「ま、確かにね」

西賀姉妹とは同じく幼なじみの姉妹である。

「ったく…」

「まぁいいじゃん。」

「良くない!!!」

まぁこうやって、僕は愁と他愛のない話を繰り広げ、結局愁は寝落ちしてうちで寝ることになりましたとさ。…お母さんに迷惑かかりました。ってことで叱られましたとさ。



そして月日はたち、僕らは姉さんの学校の近くに引っ越した。さてさてこれからどうするものか……


「久しぶり姉さん」

「おっ久しぶりだね〜疾風」

「よっ」

「愁も居るじゃない」

「「……殴っていい?」」

「え、急に何って殺る気マンマンじy……」

「おらぁ!!!」

「はぁぁぁ!」

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」

姉さんがちょっと失神しかけたので殴るのを止める

「痛っ…ひっどーい★」

「…流石真理奈の耐久力だ。僕らの本気を耐えやがった…」

「ホントに姉さんどんな身体してんだよ…」

「こ〜んな身体★」

「「もう一発殴らせろ」」

「えっだm」

「うりゃあ!!!」

「ガアアアア!!!」

「ちょ、やめ、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」

今度は本気で叫んでた。…可哀想に(実行犯僕だけど‪w)

「ごめんって」

「ごめごめ」

「……失神しかけたわ…」

「脳震盪起きてて草」

「笑い事じゃねぇ……」

「マジ頭フラフラするんだけど」

ねえなんか姉さん脳震盪起きてるんだけど大丈夫なの???まぁいいか

「乙です★」

「草」

「愁、一撃蹴らせてもらうわね」

「え、お前の蹴りはやばいんだって……」

「問答無用!」

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」

「…ご愁傷さま。」

姉さんの蹴りをすねに受けた愁はふんぞり返って仰向けで暴れている。

「僕蹴られそう」

「やっていいの?」

「やめてくださいお願いします」

とまぁ、騒騒しい夜だった。


〜翌日〜


愁は今日未明新しい家に帰った。

そして、今は七時半である。

僕はハムエッグとトーストを作っていた。

「おふぁよ…」

上から姉さんがおりてくる。

「おはよ姉さん。顔洗って髪溶かしてきな」

「ふぁい」

「ご飯はそろそろ出来るから待っててね」

「ふぇい」

姉さんは朝に弱い…忘れてた。恐ろしく寝惚けている。

「いたっ!」

「大丈夫〜?」

「だ、だいじょうふ…」

「眠気覚ましてきな…」

「ふぁあい」

なんかタンスの角に足ぶつけたらしい。まったく、困った姉さんだ。

「で、ご飯は?」

「マジ貴方どんな体質なの?」

「いやなんかさ、顔洗うと目が覚めるんよ」

「…凄いよね」

「その代わりいつも眠い」

「ダメじゃん」

「エヘ★」

「褒めてないです」

「エヘ★」

「ご飯ですよ〜」

「あれ、無視…?」

「無視もくそもないわ時間やばいよ?」

「えっホントだ?!」

姉さんは時間のやばさに気づいたらしい。なんと今七時四十五分。…のんびりし過ぎである。

「…八時に家を出るんでしょ?」

僕は確認した。

「え、えぇ…」

「学校の支度できてるよね?」

さも当たり前のように聞く。

「…できてないわよ」

やっぱりできてなかったらしい。…マジでこの姉は馬鹿なのでは?……いや、馬鹿なのだろう。

「さっさと食べて、支度すれば?」

僕が言い終わる前に姉さんは朝ご飯をガフガフ食べ始めた。まったく、そんな急ぐと喉詰まるって…

「姉さんの支度はしておくからもう少しゆっくr…」

「モグモ…グッ…ガハッ!オエッ!」

ほら言わんこっちゃない

「…落ち着きなよ。はい水。」

「ふぁふぃふぁほう(ありがとう)」

「飲み込んでから喋る!」

「ふぁい!」

「人の話を聴く!」

まったく、困った姉さんだ。…あれ前もこんなこと言ってたような

そして慌てて僕も準備を手伝う。え?僕の準備?もうできてるに決まってんじゃん

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

僕は支度を終わらせ慌てて玄関から出る姉さんを見送る。僕はこれから転校生として始業式に出るため少し遅めに行くのだ。しかも普通の転校生ではないから。

「はぁ…」

なんでこうなったんだろ。学校の共学化って言われてもなぁ…

「まぁ、よくあるアニメ的漫画的展開だな。」

しかし、僕は人付き合いが苦手だ。狭く、深く関わるのが得意で、広く関わるのがとても苦手。そんな人なんだ。愁、西賀姉妹、姉さん、そして紹介してないけど西園寺瞳、睦月優斗。これ以外にも沢山いるが、まぁ多くはない。…あとあと紹介することにしよう。

おっとそろそろ家を出る時間だ。愁が来るはず……

僕は、とりあえず愁が来るまで今までの思い出に想いを馳せる。まぁ、いや〜な思い出もあったけどね。大半いい思い出だったよ。僕の周りには良い人しか居ないからね。

特に僕は昔西賀姉妹と愁と姉さんと瞳と優斗で昔良く色んなところに出かけたりしてたなぁと幼き頃に想いを馳せた。…あれ、僕それ以降は「アレ」しかやってない……あれれ?おかしいな。

「…僕、人付き合い変えようかな」

これを機に人付き合いを変えようと思った。……有名人になるのはアレだけどね。まぁいいでしょう。

「ピンポーン!」

インターホンが鳴った。

「ちょっと待っててね〜愁。今出るよ!」

僕は玄関の前で待つ愁との思い出の感傷に浸りながら、靴を履き、ドアを開ける。

「疾風、行くぞ」

「行こっか。愁。」

今日の天気はとても陽気だった。


二話 Huppy starts


「これで、第28回、始業式を終わります。」

「礼!!」

教頭先生の指示で僕達は頭を下げる。

そのままアリーナから生徒が出ていく。

始業式が終わった。…はぁ、疲れた

まさか実験台として全校生徒に紹介されるとは思わなかった。けっこう恥ずかしかった……

そして僕らは若干遅れてクラスの前に来る。中ではHRをやっているようだった。

「え〜例の転校生の紹介です」

先生の声が聴こえた。

「入っていいよ〜」

先生の言葉を合図に中に入る。

「…え?」

僕は小さく呟く。隣の愁も口を開けて驚いている。正直仰天しそうだ。

なぜならここには西賀姉妹の妹、西賀彼方が居たからだ。更に姉さんも居る。どうなってるんだ…

僕らは混乱しながら教壇の上に立つ。

「転校してきた神無月疾風君と文月愁君です。自己紹介をお願いします」

先生が自己紹介を促す。

僕は愁の脇腹を肘でつつく。愁は顔をしかめたが、すぐ納得したようだった。

「……文月愁です。これからよろしくお願いします」

僕は愁の自己紹介に続く。

「神無月疾風です。よろしく。」

みんなの間からヒソヒソ声が聞こえる。

僕は地獄耳なので「あの人たちイケメンだよね」という会話が聞こえてしまった。

「…先生、僕達の席はどこですか」

「あ〜、疾風君の席は…」

先生が僕たちの席に案内してくれる。…僕は窓際だった。とても心地いい風が吹く。僕は快い気持ちになれた。愁は僕の右隣だった。姉さんはというと…廊下側に追いやられてた‪w

「姉さん廊下側においやられてて草」

「アイツだから仕方ないんだろ…」

「(´^ω^`)ブフォwww」

残りのHRを僕らは雑談によって過ごすのであった

「起立!礼!」

級長の号令がかかる。ここから学年別下校まで時間がある。だから僕は「あいつ」の席へ行こうとする。が

「なによ疾風、そんなによそよそしくて!」

「うわおびっくりした!」

既に先手を取られていた。

「なんだよ急に…彼方。」

「急にって、貴方私の席に来ようとしてたじゃん」

図星だったので僕は黙り込む。

「お前、まさか、投稿初日に…」

「そんな野暮なことしない!!!」

愁にからかわれた僕は、クラスの全ての喧騒に負けないくらいの怒号をあげた。

「前の仕返しができたな」

「…愁、根に持ちすぎだ」

「愁は執念深いからね〜」

「いや、そこまで執念深くは…」

なんか図星だったのでもう少しつつこうかなとして、一人の存在を思い出した

「姉さんどこだ?」

「理奈?理奈ならさっき先生に連れ去られてたよ」

「あいつなんかしたん?」

愁が尋ねる

「…先生しかわからんよ」

僕に聞かれてもなあという本音は捩じ伏せた。はあ全く家の姉はこれだから……

あの人可愛いし優しいからモテるはずなのに天然が過ぎるからモテないんだよなぁ…可哀想な人だ。それに比べて僕なんて陰キャだから…ね?泣きそうだよ。

愁とか彼方みたいな陽キャは凄いよなと感じた。…まぁ陰キャも陽キャもクソもないんだけどね。語り出すと恐ろしくなるからやめておこう。

「…はぁ…全く家の姉さんはあれだから…」

「理奈可愛いし優しいのにねぇ」

彼方が僕の思考と同じことを言う。……あの人マジ可愛いし優しいという印象で通じるのやばいと思う。…もっとモテろや………

「あいつモテてるんだろ?」

愁がまた僕の思ってたことをそっくりそのまま言った。

「文化祭の時にはモテモテよ!」

知ってた。

「ここ桜ヶ丘女学院は可愛い子がいっぱい居ることで有名なのよ!だから他の私立男子高校生とか男子中学生がいっぱい来てナンパ目的で来たりすんのよ‪w」

ナンパ目的で来たりって豪語したよこの人。

「ナンパ目的でって…私立男子高校生とかは野獣しか居ないの?」

「…男は大半野獣じゃないの?」

「疾風と俺は野獣じゃないよ。」

「…優斗も野獣じゃないって。」

「あぁ、そうだった。」

「…貴方達この世の中の大半の男が野獣だって言いたいの?」

「「うん!」」

僕らはハモって言う。だって実際野獣じゃん。W氏とかはトイレで不倫したらしいし。結局野獣なんだよねぇ…

「…すごいこと言うわね貴方達」

「そんなに?」

僕は普通だと思うなぁ…

とまあ、僕らはこんなくだらん雑談を姉さんが来るまでしていたのだった。


姉さんはあれから二時間でやって来た。

「…先生と話してたわ…」

と、姉さんはとても疲れた様子だった

「お疲れ様」

「乙〜」

「お疲れ、理奈。」

僕らは労いの言葉を添える。

「…疾風」

僕は姉さんに呼ばれる。

「ん?」

「どうした、理奈」

姉さんにそうきくと、なんと

「貴方達先生に呼ばれてたわよ」

と爆弾発言をした。

「は?!」

「( 'ω')ふぁっ?!」

僕らは混乱しながら控え室に行くのだった。


「…柊先生。」

僕は先生、柊先生…いや、「義姉さん」の名前を呼ぶ。

「いや〜ね疾風。昔みたいにユキさんって言ってくれればいいのに」

「…僕らの関係がみんなにバレたらどうするんですか。ユキさん。」

「私が全責任をとるわよ。」

ユキさんは色っぽくウィンクする。

「…そんなウィンクされても信用できませんよ?」

僕は本音を漏らす。

「私がいつ信用できないようなことをしたっていうのよ!」

僕はユキさんが嘘ついた回数を数える

「…無いですね」

僕は苦笑する。もうユキさんに頼むしかない様だ。

「まぁゆっくり話しましょうや」

「え、彼方達は…」

「理奈に帰るよう伝えたわ」

「えぇ…」

とまぁユキさんと雑談を繰り広げるのであった。


家に帰ると時刻は既に8時を過ぎていた。

で、疲れてたのでそのまま寝ることにした。_(ˇωˇ」∠)_ スヤァ…


〜翌日〜 (:3[__]→ヾ(*`ェ´*)ノ


今日は学校に早く着いた。何故かって?ユキさんに呼び出されたからだ。

「…朝っぱらからユキさんの相手かよ…」

まぁ文句タラタラ言うのもあれなんでとりあえず教室のドアを開ける

「おはよう」

僕は高々と宣言した。教室の視線がこちらに向く。…凄まじい殺気を感じた。

「……!」

僕は身構えた。すると女子達はヒソヒソ話始めた。……え〜なになに「あの転校生じゃん。やばくね?」だって?

「…僕が居ることに不都合でもあるのか?」

僕が殺気を全身から放ちながらそう言うと、女子達は大きく震えた。

「…なんで」

「生憎と、地獄耳でね。君達の会話は聴こえるんだよ」

これが僕の「アレ」の力だった。

「アレ」のおかげで耳も良いし、目も良い。デメリットがあるのがアレだが。

「…そんな転校生に見せては行けないことをやってるのか?」

恐ろしい殺気を自らから感じた。…溢れ出し過ぎたか。女子達は震えてヒェと喉から声にならない悲鳴をあげる。

「悲鳴上げたって俺はあんたらを追及する。」

女子達はその場で崩れ落ちる

…目に涙を溜めてるようだ。しかし、まだ黙っている。……僕は本気でイライラしてきた。

「…黙ってんじゃねぇよ。てめぇらが何をしていたか聞いてんだよ」

僕が殺気を全身から放ちながらまたそう言うと、女子達は大声で泣き出した。そして、その輪の中に人がいることに気づいた。…人?

「…!」

その子は怪我をしていた。ー骨折はしているであろう。僕の勘がそう呟いた。

その子は僕に視線を向ける。

僕にはその視線が畏怖の視線と、救済の懇願の視線に見えた。

「……虐めは禁忌だっつってんだろうが…てめぇら、僕が何をしたいかわかってんのか?」

このままではただの偽善者だ。僕は、偽善者なんかじゃない。それは自分がよく知っていた。何故なら…

「僕はあんたらのせいで虐めてる時のあんたらの楽しそうな笑い声と虐められっ子の泣き声とか呻き声を聞くだけでそれが邪魔なんだよ。地獄耳だから全部聞こえちまうんでな。イライラするんだよ。」

だから、と僕は一拍を置いて、こう言い放った。

「…イライラするから、元凶のお前らを潰す。それだけだ。」

そこまで言うと、ユキさんがやってきた。

「…神無月君、何してんの」

僕が殺気を全身から放ってることに気づいたユキさんはあくまで僕達の関係が気づかれないように言う。

「…虐めを止めてるだけですが」

「…それにしてはあの子達が大号泣してるんだけど…まぁとりあえず話聞かせてくれる?」

「あ、はい。」

僕はユキさんの言われるがままにユキさんの控え室に連れてられるのであった。トホホ…



全事情を話し終え、ユキさんとの雑談を終えた頃には時すでにHR五分前で、姉さんも彼方も愁も来てた。

「疾風〜、なんで遅かったの〜?」

興味津々で姉さんが聞いてくる。

「…ちょっと…な?」

僕は言葉を濁す。

「またやったんか」

愁が図星をついてくる。全く、前から愁は人の心とか行動を読むのが上手いよな…と感心しながら呆れる

「ま、そういうことだね」

と僕があっけらかんというと

「…転校初日から問題起こすって流石疾風ね。」

彼方が呆れた声音で言う。視線も哀れみの視線だった。止めてまじで僕が惨めになる。てか僕なんか悪いことした?前みたいに蹴りぶち込んだり殴ったりはまだしてないんだけど…

「まぁ蹴らなかっただけマシか」

愁がため息をつく。いやこの人まじサトリなん?いや、これが付き合いが長いってことか?僕は混乱してきた。

そして先程のことについて散々聞かれたらもうHRの時間になった。


HRが終わり一時間目になる。一時間目にはどうやら席替えを行うようだった。

先生がその旨をみんなに伝えると皆は狂喜乱舞して踊るものも居れば叫ぶ者もいた。ここは動物園か何かかな?僕は苦笑し、席を選ぶクジを引く。…どうやら運良くまた窓際の席らしい。僕はなんていう席運なんだろう(席運とは如何に)そして僕はその席に荷物を持って言って座り、皆がクジを引き終わるまで空を眺めていた。

「あの…」

何分たっただろうか。不意に右から声がした。

「どうしたの?…!」

そこには先程助けた少女がちょこんと座っていた。

「あの、さっきはありがとうございました…よろしくお願いします」

少女は震えた感じで頭を下げる。

「あぁ。あれは僕がやりたかったからやっただけだし気にしなくていいよ。あと敬語外して全然いいよ」

僕の本心を伝える

「じゃあ…遠慮なく」

と少女は敬語を外す。

「私は新村結衣。よろしくね。」

某有名芸能人みたいな名前だな。

「僕の名前は…まぁ知ってるか。とりあえずよろしく」

またなんか個性的な子だなと僕はつくづく感じた。


席替えが終わると、僕は愁の席に直行した。

「…遠いな。」

僕は思わず呟く。

「…遠いな。たしかに。クジだから仕方ないか…」

窓際だけでも運はいいが愁はなんとど真ん中の列だった。ちなみに全部で七列。

「愁は隣の子どうだった?」

僕が聞くと、愁は

「…すげぇ生意気でうざかった…」

と悲嘆しながら項垂れてた。

「(´・∀・` )アラマァ」

「なんかお嬢様みたいな感じで一撃ボディプレしてやろうかと思ったわ…マジあいつ次はぶん殴ってやる…」

「女子殴るのは草」

「草じゃねぇよマジあいつ殴りたい」

「僕が殴ろうか?」

「やだね。俺がイライラするから殴ってやるわ」

と愁から恐ろしい殺気を感じた。…久しぶりにこんな愁が殴りたい欲求を丸出しにしてるのを見た。やっぱこいつに手を出すと死ぬな。うん。

「…そういやなんか後ろから視線感じるな…」

僕は呟いた。なんか後ろから二つの視線を感じた。

「そうか?」

「僕は視線に敏感なんでね」

なんか僕は敏感になるものが多いなぁと感じた。…今更遅いか。って感じた。

「はぁ…とりあえず君達何用?」

僕は振り返りながら言う。女子達は驚いていた。あれ、その中にさっきの結衣がいた。…もう一人は白髪の大人しそうな子だった。清楚系ってやつか?なんで髪染めてるんだろと思ったが、ハーフか?という思いに至る。

「…疾風君」

結衣が近づいて来て言う。

「愁君だっけ。私は新村結衣。疾風君の席の隣なの。よろしく」

結衣が愁に挨拶する。愁は混乱しながら

「あぁ、疾風のご近所か。よろしく」

と言っていた。

「こちらは竹内ソフィア。アメリカと日本人のハーフなの。」

やはりハーフか。僕は予想的中した。…白髪だから当たり前か?まぁいいか

「竹内ソフィアです。よろしく。」

とても流暢な日本語で喋る。ハーフと思えないほど顔が日本人似だった。こんな人居るんだなぁと感じた。

「よろしく。僕は神無月疾風だよ。でこのもやしが文月愁」

僕が愁のことをもやしというと

「…疾風、こっち来い」

と愁は廊下に出た。僕が廊下に出たや否や愁は

「誰がもやしじゃぁ!」

と叫びながら拳を振り抜いてきた。

「すみませんでした」

とりあえず殴られる前に言うが、その拳はもう既に目の前に振られていた。トホホ………


「痛い…」

「お前が俺の事もやしっていうからだ」

僕らは授業が終わり帰路に着いていた。彼方と姉さんは他の人と帰っていった。

「ごめんって。でもあんなに本気じゃなくても……」

「骨折しなかっただけマシだろ」

「マシじゃないでしょ……」

とりあえず僕が悪いらしい。悲しいな。トホホ……

今日は濃い1日だったな〜と実感する。

「なんか疲れたな……」

愁が呟いた。

「……ね」

僕も相槌を打つ

「……そうだ!」

愁が急に大声を出す

「何何どうしたの?」

と僕が聞くと、なんと愁は

「今日お前の家に泊まっていいか?」

と聞いてきた。……爆弾発言だな。僕は内心でそう呟きながら

「全然いいよ。姉さんが愁を断るはずないし」

と、僕は呆気なく了承した。

「よっしゃ。久々に疾風の家だ!」

いや新居には愁来てないでしょ

「まぁ新居には行ってないがな」

流石愁。僕の思ったことを的確に言った。

「まぁ泊まるならゆっくりして行きなね」

この後、あんな事が起きるなんて僕達は想像すらできなかったとさ。めでたしめでたし((((終わりません。))))


三話 翡翠の刃


そして僕は帰宅する。愁は家に荷物(何を持ってこようとしてるんだ)を取りに行った。……爆薬とか持ってこないよな?愁ならC4を持ってくる危険もある。まぁないか‪wそしてドアが開き、姉さんが帰宅する。

「おかえり姉s……は?」

なんと姉さんは西賀姉妹を引き連れていた。

「久しぶりね!疾風!」

「あ、あぁ、久しぶり、由佳里…」

西賀姉妹の姉、西賀由佳里(さいがゆかり)はこちらに駆け寄って来る。

「…なんで二人が…」

僕が疑問を述べると

「なんか二人が泊まりたいって言うからさ」

と姉さんが言った。…いや、愁も泊まりに来るんですけど

「これから愁誘うのよ。疾風、一緒に来る?」

と彼方が聞いてくる。

「…あの」

僕が言うと、三人が首を傾げたため、僕は

「…愁も今日泊まるんですけど」

と僕が教えた。

「な〜んだ手間が省けたわ!流石疾風!」

と由佳里が僕の背中をバンバン叩く。……地味に痛いのは黙っておこう。

「ってことだからよろしく!」

彼方と姉さんはウィンクをした。

「…そんなウィンクされても…僕なんかするんすか?」

僕はなんかされそうで怖かった

「そんなことより久しぶりにお泊まりなんだから何も気にせず楽しみましょうよ!」

由佳里が肩を組んでくる。あれこの人こんなにボディタッチしてきたっけと思ったが、昔っから西賀姉妹はボディタッチ多かったなと思い出す。小四の時に由佳里に抱き締められた記憶もあるんだが?やばいなんか恥ずかしくなってきた。顔が赤くなってるかもしれん。まぁいいか。で突如インターホンがなる。

「愁来たよ」

僕はぶっきらぼうにそう言う。

「愁来た?!」

姉さんは驚く。だからさっき来るって言っただろうが。西賀姉妹と姉さんは愁を迎えに行く。愁が外で「なんでお前ら居んの?!てか由佳里も?!え?なんで?!」と困惑しながら叫ぶ声が聴こえる…うわぁ…。愁はパニクってる。

なんか由佳里か彼方がボディタッチ(では無いが)をしたのか「アイムパニック!」と叫ぶ声が丸聞こえだった。…僕が地獄耳だから聞こえるのか?まぁ地獄耳じゃなくても聞こえるだろう。その位デカい声だった。(近所迷惑だから苦情来るかもしれん)あの人達はまだ愁に悪絡みしてんのか?十分くらいで四人が帰ってきた。

愁は恐ろしく疲れた様子だったが西賀姉妹と姉さんはピンピンしてた。……愁も西賀姉妹を相手にすると恐ろしく疲れるらしい。いや、由香里が疲れるだけか?…まぁなんでもいいや

「愁お疲れ」

僕が声をかけると

「…ガチで疲れた」

と愁は苦笑してた。いったい何されてたんだか

「いや〜でも二人に会うのは本当に五年ぶりかしら?全然会ってないから心配してたわよ〜!」

と由佳里は陽気な口調で言った。

「…姉妹揃って元気だな」

僕はぼそっと呟く。

「久しぶりに会うんだから当たり前じゃん!」

由佳里はまだ興奮してる。やめて欲しい。

「…由佳里、興奮しすぎだ。」

愁が僕の気持ちを代弁してくれる。流石だ。

「私も興奮してるわよ〜」

と彼方がのほほんとしながら言う。いや貴方達どんだけ僕の家に泊まるの楽しみなん?

「まぁ私の家でお泊まり会は久しぶりだからね〜」

と姉さんが言う。久しぶりもクソも3年ぶりだよね…やばくて草

「俺はちょくちょく疾風の家に泊まってたがな」

そう。愁は週に一回くらい僕の家に泊まっていっていた。凄い頻度である。

「私も彼方も理奈の家に偶に泊まりに来てたわよ」

「…貴方達私の家に強行突破してくるでしょ…姉妹揃って」

「私はやってないよ?!」

初耳だった。由佳里と彼方が共同で姉さんの家(兼僕の家)に突撃してたなんて…

「彼方も偶に手伝ってたでしょ…まぁいっか」

ほんとに仲のいい三人である

「ほんとお前ら仲良いよな」

また愁が僕の思ったことをそっくりそのまま言う。愁はまさかサトリの子供なのだろうか?いや多分サトリだな。うん多分そうだ。…違うか。僕達の思考回路が似てるってことか…ほぼ一致してるし‪w

「そういや何する?」

姉さんが何をするか募集してた。

「戦闘」

愁が淡々と言う。何言ってんのこの人

「まぁ僕も久々に愁と闘いてえなあ」

と僕は腕を回す。殺るきマンマンだ

「家で暴れるのはやめなさい」

彼方が静止する。

「久しぶりに二人の闘い見たかったんだけどねぇ〜」

姉さんが呑気に呟く

「私も見たかったわ〜」

由佳里も同意したような感じだった。

「…室内壊れるからやめなさい」

彼方が静止をかけるため、僕達は戦闘態勢を解放する。

「…やりたかったがな」

愁がいかにも残念そうな口調で言う。待って顔ニヤけてるし声が恐ろしく陽気なんだけど

「……で何する?」

姉さんが聞いてくる。いや思いつかないよー……

「みんなで駄弁ってればいいじゃん!」

由佳里が助け船を出してくれる。……雑談は楽しいので普通に賛成である

「賛成。雑談楽しいじゃんか」

僕はその旨を述べる

「俺も賛成だな。やることないし駄弁ろうぜ」

愁も賛成らしい。僕も賛成だったので満場一致で雑談になった


結構な時間雑談して、気づいたら22時になっていた頃、由佳里が僕の中学時代の頃について聞いてきた。

「…中学時代?」

僕は愁と目を合わせる。愁も聞くのを躊躇っていた。

「私も気になるわ〜」

「私も!疾風の中学時代の武勇伝聞きたいわ〜」

姉さんと彼方が水をさしてくる。……嘘やろ…僕の黒歴史なんやが…まぁ姉さんと彼方と由佳里が「聞かせて!聞かせて!」と言わんばかりに興味津々な顔で僕を見つめてたので、僕が中学時代やらかした数々を教えることにする。

「えっと、まずクラスメイトへの顔面骨折、靭帯損傷、ヤクザへの脳震盪とくも膜下出血、先生へアキレス腱断裂、先輩への脳震盪…」

と僕がやらかしてきた数々を述べる。愁が隣で呆れていた。彼方と姉さんは興味津々な顔で聞いてたが、由佳里は苦笑し、「流石疾風ね」という感じだった。

「…まぁ、これが黒歴史兼武勇伝だね」

僕は話終わるとどっと疲れが出てきた。

「なんというか…疾風らしいわね」

由佳里が言う。やめて僕が傷つく。

「……同感だわ」

「…私も」

「…俺もだ」

「四人揃って僕のこと虐めないでやめて」

泣いていいだろうか。久々にこんな惨めな気持ちになった。

とまぁ、風呂が湧いたんで僕は愁と一緒に入ることにした。

「…お前、その傷どうしたんだ?」

愁が僕の肩をまじまじと見つめてくる。

「あぁ、前言わなかった?撃たれたんだよ」

僕はあっけらかんと言う

「あ〜ヤクザとの抗争の時に撃たれたって聞いたな‪w」

「あの時弾丸が掠ってね。若干跡が残ってるんだよ」

「流石疾風だ…でも気をつけろよ〜」

愁も陽気で、別に気にしてないようだった。…胸を撃たれたことが無いのが幸いである。僕は昔のヤクザとの抗争を思い出す。中学生高校生で構成された暴走族に一人で殴り込みに行ったのだ。あれくらい余裕だったが……人数も四十人程度、僕の攻撃による死傷者三十五人程度。降伏五人程度。それくらいフルボッコにした。死者は少なくなかった。……銃使ったから当たり前か?え?僕の正体?それは二章でわかるよ。まぁそんなことより愁も傷があることの方が大切だけどね

「愁も切り傷あるやん」

僕は切り傷の跡がある事を指摘する。

「あ〜これはすげぇ前に殺られたんだよ」

小学生時代だろうか。それすら僕も知らないため、何をしたからわからない。……ヤンキーへのカチコミか。と即行理解する。

「…二人揃って傷がある…か。…まぁお前もナイフには気をつけろよ」

「拳銃は怖くないしね」

…何故だろう。自分が哀れに思えてきた。…拳銃怖くないとか一般的には頭おかしいだろ…と思う。僕達はおかしい人種だからか。

まあまあそんな感じで愁と雑談をしながら風呂に入ってそのまま出て、寝ましたとさ。


〜翌朝〜


僕は早めに起床していた。何故かって?朝ごはん作るんだよ。今日は休みのため、みんながまだグースカ寝てる。

「今何時だろ…」

僕は時計を見る。七時三十分だった。

…昔の記憶から、最初に起きる人を想像する。まあ合っているだろう。そんな感じでみんなを待ちながら僕は朝食に魚を捌く。今は愛用の刀、五月雨丸を研いでいる。こいつは八年間共に過ごしてきたいわば相棒だ。研ぎ終わると、また僕は魚を捌きはじめた。

ちょうど五人分捌き終わると由佳里が降りてきた。

「おはよう疾風」

「おはよう由佳里。彼方と姉さんと愁は?」

「まだ寝てるわよ」

由佳里に彼方と姉さんと愁が寝てるか確認をとる

「じゃあ、朝ごはんだから起こしてきてくれる?」

「わかったわ。」

僕は由佳里に起こしてもらうことにした。上から「彼方〜愁〜理奈〜ご飯よ〜!」

上から由佳里の声が聞こえる。…あの三人が起きるかなと心配するが、普通に降りてきた。

「全員顔を洗う!!!」

僕は号令をかける。みんなが並んで洗面所に行く。う〜ん草。なんかモルモットみたいである。みんなが顔を洗って帰ってきた。

「座ってね〜。じゃあ食べていいよ〜。」

そう言うと「頂きます!」とみんなが言い、食べ始める。ちなみに僕は先に食べていたため、用事のために外へ出た。

「…寒いなあ」

ドアを開けると、冷たい風が体を襲った。まだ、朝は寒いようだ。いうて四月だ。仕方ないのだろう。僕は五月雨丸をポケットに入れると、用事を済ませるために足を踏み出した。


「ただいまぁー…は?」

家のドアを開けるとくそ散らかったリビングが見えた。何が起きたしと思って中に入ると愁と姉さんが殴り合いをしてた。そして由佳里と彼方がそれを観戦するという地獄絵図であった。いやいや何が起きたんと思ったらすぐ察した。姉さんが愁と戦いたいと言ったのだろう。…楽しそうだから加わってやろう。そう思って僕は五月雨丸を引き抜いた。

「何やっとんじゃわれぇ!」

僕は大声で怒鳴り、五月雨丸をぶん投げるのだった。


「すみませんでした。」

「すまん」

壁に刺さった五月雨丸の前にて、姉さんと愁が土下座をしていた。何故かって?さっきの喧嘩でくそ散らかったからだ。今は彼方と由佳里があと片付けをしている。可哀想な西賀姉妹だ。

「…二度とやるんじゃないよ?やるとしてもいつもの僕の部屋でやること。いいね?」

僕はあくまで優しい口調で諭す。まぁ五月雨丸ぶん投げたから優しくは無いが。

「疾風の部屋でやってきましょ?」

「せやな」

と二人は僕の部屋へ向かったため僕は

「片付けが先に決まってるだろうが」

と言った。二人は恐怖に震えたように片付けを始めた。まったく、困った四人だ…僕はため息をつく。まあ前もあったからなあ。二回目だし反省するだろう。僕は翡翠の埋まった五月雨丸の柄を引き抜いた。今日は一層輝きが増していた。赤い液体が滴りかける。僕は洗面台に行き、五月雨丸を綺麗に洗う。銀色の光沢がまた現れた。そして僕は朝食の片付けに入る。皿を洗うときの水が冷たくて心地よかった。今日はいい一日だ。そう感じれる一日の始まりは、久々だった。

四人も片付けが終わり、僕は部屋に戻る。部屋にある自分の宝物を見る。心が癒された。鉄の塊だらけだが、共に歩んできた相棒達だ。……今日はどこへ遊びに行こう。僕はそれを聞きに下へ降りるのだった。


四話 水晶の想い


楽しかった日曜日が明け、月曜日がやって来る。月曜日が来ることは憂鬱である。…あぁ眠い。そんなことを思いながら僕はまだ僕の家で寝てる四人分の朝ごはんを作る。今何時だ…時計を確認すると7:30だった。そろそろ由佳里が降りてくる時刻である。

僕は今日の朝ごはんのお肉を捌く。昨日の残り物である。朝は時間が無いため、なるべく小さく斬り、食べやすくする。時間が短くなるからである。

トン、トンと階段から優しい音が響く。由佳里が降りてきたのだろう。だが足音は二つ聞こえた。…彼方も起きたのだろう。流石由佳里、起こしたのだろうか。

「おはよう」

僕が声をかけると

「おはよう」

「ぬっはろ〜」

ぬっはろ〜とはいったいなんだろう。彼方が変な挨拶と由佳里と共に降りてくる。

「朝ごはん作ってるから顔洗ってきな。僕は作り終えたら愁と姉さん叩き起してくるから」

「ありがとう」

「は〜い」

朝の間抜けな感じで二人が洗面台へ向かう。二人が戻ってくる頃には既にご飯はできていた。僕は姉さんと愁を起こしに行く。…あの人たち起きれんのかな?

「姉さん、愁、時間だよ。今日は学校なの忘れてないよね?」

と僕は部屋のドアを開ける。案の定爆睡してた。

「起きろ」

たんたんと僕は告げ、手刀を叩き込む

「痛い!」

「いってえ!」

呻き声をあげて愁と姉さんが起きる。

「起きろ。学校だ。」

低く言う。

ヒエと声を上げて二人はそそくさと下へ降りる。

まぁそのまま五人で僕らは学校へ向かうのだった


キ-ンコンカ-ンコ-ン

「起立!礼!!」

級長が号令をかける。今代数の授業が終わった。…代数なんて簡単なのにな…

僕は席を立とうとする。

「…ねぇ」

隣から声がした。…誰だろうと振り返ると

「…結衣か」

結衣がこちらをノートを開きながら見つめてた。

「疾風君…ちょっと、ここ分からなかったんだけど、教えてくれる?」

結衣がノートに書かれた問題を指さす。……なんだ。ただの連立不等式を活用した文章題じゃないか

「…どれどれ。えっと、これはね…」

僕は問題の説明をしていく。若干レベルが高い問題だったため、僕も説明に手こずるが、結衣は「うんうん」と頷きながら真剣に話を聞いてくれた。…何故か何処かでみおぼえある、と感じた。

ヤクザに絡まれてた子か?もう忘れた。

そんな雑念を抱えながらあくまでも淡々と問題の説明をしていく。けっこう時間がかかった。五分くらいの説明を結衣はずっと真剣に聞いてくれていた。一途な子なのだろう。僕はそう感じた。

「ありがとう、疾風君」

そのまま結衣は立ってどこかへ行ってしまった。

「あ〜」

若干疲れたため、肩を回す。ゴキゴキといい音が鳴った。

「さ〜て」

愁の席へ行こう。雑談しよう。疲れた時は愁と話そう。そう決めた僕は、愁の席に向かうのだった



〜新村結衣の独白〜


「結衣〜」

ソフィアが話しかけてくる

「ん〜?」

「最近好きな人とかできたー?」

急にソフィアが聞いてくる。何故急にそんな質問するのだろうか

「なんか最近疾風君によく視線行くからさ。疾風君のこと気になってるのかなぁって」

ソフィアがそう指摘してくる。…そんなに視線を向けてるだろうか。

「…そんな事ないよ」

そんなこと言いながら私は動揺しているのをなんとか隠していた。そう。ソフィアの言うことは図星だったのだ。

私は疾風君の事が気になっている…というより恋をしているというのだろうか?

私には初めての経験であった。…運命というのは感じたことは無いが、奇跡だとは思っている。

これは疾風君にすら言ってないが、昔私は誘拐されたことがある。嘘では無い。本当だ。そして捜索願いが出された後、警察よりも何よりも先に誘拐されたアジトに来たのが疾風君だった。疾風君はあの時、こう言ってたなぁ…

「…誘拐犯っつうのは儲かるらしいねぇ…君はあの組織の幹部かい?」

私には最初狂った共犯にしか見えなかった。しかし、あの組織の幹部という言葉に一人が頷くと、次の瞬間その人が倒れた。

「…Dreamer幹部なら、死闘を繰り広げてでも勝つしかない。何人がかりでも、武器を使われようとも、関係無い。…お前ら幹部、僕に勝てるかな?」

そう言って疾風君は幹部に向かって刃物を向け、間合いを詰めた。幹部は焦った表情でナイフを振る。(あれ、ポン刀って言うらしいよ)火花が散る。そして幹部は拳銃を取り出し、撃鉄を起こした。疾風君は避けようとしたが、肩に掠ったらしく、肩から血が出た。

「…やめ…て」

私はあの時、確かに静止をかけた。しかし、その声が届くはずもなく、二人は戦闘を続ける。途中何度か疾風君が負傷していた。それくらい幹部は強いのだ。しかし、幹部が油断して見せた一瞬の隙に疾風君は右肩からするっとナイフを滑り込ませた。次の瞬間、幹部が呻き声をあげ、倒れた。私はその時、あぁ、私はやっと誘拐犯から開放されるのか…あの暴力から開放される…と思い気が抜けた。疾風君は肩から血を滴らせながら私を縛る縄を切ってくれた。

「警察がもうすぐ来る。動くんじゃないぞ」

疾風君はそう言って右肩を抑えてアジトを後にした。私からは疾風君の背中から一直線に血が出てることに気づいたが、あえて無視をした。そして10分程度経ち、警察がやって来た。そして私は無事家に帰れた。


これが私と疾風君との出会いだった。そして疾風君と出会うとその特徴が一致していた。……疾風君は、本当に私を助けた疾風君なのかは知らないが、とりあえずあの優しさに惚れているのは事実だった。

「…私は恋バナが苦手なのよ。」

私はそうやってソフィアとの話をそらすのであった。




〜再び話は疾風に戻る〜


「…で、なんだ彼方」

僕は何故か知らんが彼方に校舎裏に呼び出されていた。本当になんでだ。愁と姉さんがニヤニヤしながらこっちを見ていたから殴りかけたが、まぁとりあえず来た。で今は何の用事か聞いているのである

「貴方に用事なんて1つしかないでしょ。しかも内密にして欲しいんだから、察してちょうだい」

彼方が唇をとがらせながら言う。

「…どんな依頼?」

僕はメモ帳を出す。彼方が内密に頼むことなんて少ないだろう。

「……」

彼方は顔が真っ赤っかだ。なんだなんだ。いったい。なんか気まずいぞ?どうしたんだマジで…

「…どうしたの?」

僕はもう一度聞くが、彼方はそっぽを向いて

「…やっぱなんでもないわ。急に呼び出してごめんね」

と去っていった。僕は頭の中が?でいっぱいになった。

「…一体なんなんだ」

本当に混乱した僕であった


〜西賀彼方の独白〜

「まったく、気づきなさいよあのバカ!」

そう言いながら私はずんずん中庭を進む。あのバカ…人の気持ちに鈍感過ぎだ。何故あそこまで恋愛に鈍感なのだろうか。何故あいつはあそこまで鈍感なんだ!!!何故私が惚れてることに気づかない!!!しかも三年前から!!!おかしい!!!まぁこんな事言うのもあれだけどね。昔っからあいつが好きなのにねぇ…気づかないのがあいつの恋愛に疎い証拠ね。まぁ昔「大きくなったら疾風のお嫁さんになる!」とか言ったらしいけど…まぁ疾風の事だ。覚えてないだろう。……気まずかったから逃げてきたが、いつ、告白するか決めないとね…

私はそう思いながら歩くのだった。


〜疾風に三度〜


「マジで意味わからねぇ…」

僕は本を見ながら頭を抱える彼方からの呼び出しの後、愁が「お前恋愛小説読んでこい」と言い、言われるがままに読むのだが、ヒロインが主人公を好きになる理由がわからなかった。題名は…アオハル…らしい。聞いたことない。なんだこれ…主人公の取り柄が見つからないし、好きになる理由がわからない。これが恋愛小説なのか?僕は初めて読む恋愛小説に呆れた。僕はミステリー小説以外全くと言っていいほど興味が無い。ライトノベル系は、僕がやりたかった、昔憧れた内容のものが多々あったのでたまに読む。まぁ、要するに僕は恋愛小説なんて読まないんだよ。なんか「お前恋愛に疎すぎ」って愁に言われたんよ…そんなに恋愛に疎いかな?この僕の独白を見てる人に問いたい。なぁ、僕は恋愛に鈍感か?そんなに鈍感か?

まぁこの答えなんて無いのだろう。僕にすらわからないのだから。

まぁ女性不信の僕だ。当たり前か?

…待て、なぜ僕は女性不信なのに結衣に話しかけられてもなんもなかったんだ?なんかの知り合いか?僕は記憶の深淵を手繰る。本を読むことすら忘れて。

「……あの女の子か…」

僕は中学時代のDreamerの幹部との死闘を思い出す。Dreamerというのは…まぁ二章で明らかになるよ。で、その幹部との死闘を繰り広げて助けた女の子か、と今更思い出した。もしかして結衣が僕に惚れてることに僕が気づかないのが鈍感なのか?僕は混乱してきた。とりあえずよく分からないアオハルとかいう本を読み進めることにする。全く面白くもクソもなかったため、読むのに時間がかかった。トホホ。時間の無駄遣いだわ…明日愁に文句言ってやる。ぜってーぶん殴ってるわ。…でもなんかあいつ感想文書かせそう。それが怖いため僕は本を読み進める。

案の定明日本を愁の机に叩き返すとしっかり400文字原稿を渡されたため一撃ぶん殴った。

まぁ感想文くらい書いてやろう。僕は適当に感想文を書くことにした。


五話 水無月王牙


なんでこうなったんだ…?

僕は目の前に広がる世界に絶望する。

あれもこれも全部あの女のせいだ。

だから女は嫌なんだ。

だから人間が嫌いなんだ

ダカラ…



ハッと目が覚める。僕は自分の体から水分を感じた。

…どうやら汗をかいてるようだ。あんな悪夢を見たからであろう。時間は七時五十分。最悪だ。朝食が食べられない。

急いで着替えて下へ降りると案の定姉さんが居た。

「遅かったわね。疾風。」

…姉さんは自分でハムエッグを作って食べていた。しかも僕の分も作ってくれていたようだった。

「…なんかごめん。」

僕は罪悪感を感じ、謝るが、

「こういう時はお互い様よ!今日は疾風の支度も私がやってあげるからゆっくり食べてなさい」

姉さんは全く気にしてない様子で僕にウィンクする。…流石姉さん、器が広い。…あそこでも姉さんが姉御肌があるの人気なのはこういうことか?いや、的確な司令を出せるその勘の良さか…僕には理解できないが、一つだけ、わかることがある。姉さんはあんなでも根は優しいということだ。…誰でもわかるか。僕の支度をしてくれる姉さんの背中を見つめながら僕はさっさとご飯を食べるのであった。



「…目覚めが最悪な日は授業にも集中できねぇ…」

僕は学校で早速船を漕いでた。悪夢を見た日はいつもこうだ。もう先生の話は全て理解したため、そのまま寝ることにした。_(ˇωˇ」∠)_ スヤァ……

と、寝て何分経っただろう。級長の「起立!」という叫び声が聞こえた。授業が終わったのだろう。僕は重い腰をあげる。

「礼!!!」

礼をする。これでもまだ僕は眠かった。なので、そこから愁の席へ行く気も無く、そのまま寝ることした。…悪夢を見るのは本当に辛い。あの悪夢から開放される日は絶対来ない。僕は確信した。

…あの悪夢の内容は話したくもない。話したら精神が壊れそうだ。そんだけ僕のトラウマでもある。…そんな雑念もあり、休み時間はそこまで寝れなかったため、次の授業で爆睡した。…その授業はユキさんだったため、事情を察してくれたのか全く気にしていなかった。僕は悪夢による睡眠不足の解消のためにせっせかせっせか船を漕ぐのだった。



「クソネミいって時に限って君は来るのね。」

僕は昼休み中庭でお昼寝しようと出たら、何故か旧友の睦月優斗が来ていた。

「優斗違う学校なのに何故ここに居るんだ…」

意味不明だと僕が呟くと、優斗は苦笑し、

「王牙さんから司令が届いてね。放課後すぐ来てくれだとよ。」

「……王牙さんから…だと?」

王牙さん。水無月王牙さん。僕たちのいわば上司。まぁ詳細は後で説明しようかな。

「うん。王牙さん。僕も瞳も司令かけられてないからさぁ…な〜んかめんどくさいんだよね」

瞳とは西園寺瞳のことである。優斗の親友だ。

…瞳も司令がかかってるということは…

「…姉さんと愁にも司令が来たの?」

僕は顔をしかめながら優斗に聞く。優斗のやけに暗そうな顔で

「…実は、疾風だけの招集なんだ」

僕は仰天する。あの人に限って僕達をセットで呼ばないなんてことあるだろうか。まぁ、直々の招集なので学校は早退せざるを得ない。

「僕は今から早退手続きをしてくる。優斗はもう学校に戻ってて」

「あいよ」

優斗を見送った僕は早退手続きの為に控え室に行った。ユキさんに伝え、さっさと手続きをとる。ユキさんは察した様子で「いってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれた。僕はLINEで姉さんと彼方と愁に「招集が来た。僕と優斗と瞳だけの招集だから僕は行く。」と送った。

そして僕は原付バイクを走らせる。…この愛用原付バイク、名前付けようかな…僕は雑念を抱えながらアジトに向かう。アジトまでバイクで約30分かかる。とてもめんどくさい。その30分の間で考え事をしたり、愛用バイクの名前を考えたりした。ちなみにバイクの名前は電(イナズマ)に決まった。なかなかにカッコイイだろう。まぁ姉さんの発明品の名前の方が凄いけどね()

さてさて、そんなことより王牙さんは僕に何用なのだろうか?

…何となく察してはいるがまぁ行かないとわからないだろう。僕は怪訝な顔をしながら電を走らせた。



ピンポーン

僕はアジトのインターホンを鳴らす。

『どなたですか?』

向こう側から怪訝な声が聞こえた。

「Number.2だ。」

僕はあくまで無機質な声で答える。

『Number.2様ですか。どうぞ』

ガチャリとドアの鍵が開く。僕はノブをひねり上げた。

「…Number.2だ。王牙さんは今どこにいる。」

僕は周りにいる人に聞く。

「王牙さんなら、会長室に居ますよ。先輩。」

こいつは後輩の一橋陽斗(ひとつばしはると)だ。

「ありがとう陽斗」

僕はまだ疑い深い顔をしながらいつもの会長室に向かうのだった…


「…すみません。Number.2…神無月疾風です」

僕は会長室のドアをノックする。

「入ってきて」

奥から声が聞こえる。

「…わかりました。」

僕はドアのノブを捻りあげる。開いた奥には、王牙さんが暗い顔をして座って、頭を抱えていた。そうとう深刻な事態なのだろう。とても重たい溜息をついていた。沈黙が長い時間続いた

「…王牙さん」

沈黙に耐えられなかった僕は王牙さんを呼ぶ。こんな張り詰めた空気は嫌だった

「……あぁごめん疾風。」

王牙さんは慌てた様子で返事をする。未だに焦っているようだった。そんなにやばいのだろうか。重大臭い案件だろうか。僕は不安になる。そして現実に起こってることは僕の危惧していたものよりも遥かにやばいものだった。なんと王牙さんは

「……Dreamerが……動き始めた」

「……え?」

僕は心底驚いた。Dreamer。それは昔とてつもない大事件を起こした組織だった。今も事件を起こしてるが、最大だと死者80人、被害総額はなんと500億。自衛隊も出る事態になった。そんなやばい組織が動いてるのだ。王牙さんが焦っても仕方がない。しかし

「……何故僕だけに言うんですか?そんな大事なことなら、他の組員にも言うべきだと思いますが」

僕は今の今まで疑問だった、僕だけを呼び出した理由を聞いた。とても重大な事のはず。Dreamerなんてこっちの構成員を殺したりもするのに……

「…実はな……」

王牙さんが今回のDreamerの動きを説明する。僕は耳を疑った。Dreamerうんぬんかんぬんじゃなくてこれは酷すぎる。そんな内容だった。

「…これじゃあ姉さんも愁も手は出せませんね」

僕は落胆する。これは僕にしか出来ないと悟った。

「…わかりました。引き受けます。報酬は幾らですか」

いつもは報酬は聞かないが、今回ばかりは命を張るためたんまり貰わないといけない気がした。

「…50万でどうだ」

王牙さんはとんでもない金額を言う。思わず僕は目を見開いた

「そんな無茶な?!なんでそんなに……」

「…この依頼は疾風にしかできない。いつも俺はみんなに合計で50万は払う。だから一人のミッションだから50万払うんだ」

絶句した。そんなにキツいミッションなのか。僕は絶望した。……正直このミッションだといくら僕でも難易度は跳ね上がる。死者は低く見積っても50人は出るだろう。…一般人からも出るかもしれない

「…死者は何人以下ですか」

一般人からも出る予感がした僕は王牙さんに聞く。

「……高くても80人で頼む」

「はちじゅう?!」

80は僕が初めての数字だ。てか正直そろそろ捕まるかもしれん。

「……10人以下で済ませてきます」

僕はとにかくこの地獄を何とかしたいという一心で王牙さんに宣言した

「……頼んだよ。俺には完遂できないミッションなんだ」

王牙さんは暗い顔でそう呟いた


…最悪だ。ミッションの日が水曜日だなんて。

「…死ぬのはごめんだなぁ」

僕は心の底からの思いを呟いた。学校へ欠席連絡をして、覚悟を決め、愛用の原付バイク、電を走らせる。信じられるのは五月雨丸と愛銃、駿河と己の力量のみだった。相手はDreamer。簡単に勝てる相手では無い。死ぬ覚悟を決めながら電を走らせる。

「…僕は神無月疾風だ。いや、俺はNumber.2。これくらいはできる」

僕は神無月疾風という仮面を脱ぎ捨て、Number.2になることにした。……余談だが、Numberは一〜七の階級がある。一〜四は事務関係の仕事で、五になると軍事に加わる。そして軍事最強の12人が七階層。七階層の人達は''コードネームNumber.〇''を与えられる。数字は自分で選べる。僕は七階層のトップ、Number.2だ。まぁ余談をしている間に目的地に着いた。って事で戦闘開始まで残り僅かである。僕は肩を回し、

「行きますか」

と呟く。…少し歩くと、敵が見張っていた。…見張りは一人。僕はフシュ-と息を吐くと、身体を屈め、敵の現在の視界に入らないよう敵が真後ろを向いた瞬間、僕は音も無く地面を蹴った。距離は20メートルと言ったところなのですぐ距離は縮まる。敵が僕に気づいて拳銃を発砲する。それを僕は地面スレスレでよけ、そのまま見張りの手首に手刀を叩き込む。敵が拳銃を落としたところで腹に回し蹴りをし、敵を倒す。そのまま拘束した。

僕はドアを開けた。すると中には拳銃を構えたDreamerの人達がいた。

「……えーっと……」

拳銃を構えているのはざっと数えて八人。…少ないな、と感じながら作を練ろうとするが、敵が撃鉄を起こした。唐突な事態に、思わず避けたが左肩に命中した。

「ヴヴ…」

僕は呻き声をあげる。そのままムーンウォークで外に出て、扉を締める。その寸前にまた撃たれ、僕は腹に傷をおった。かすり傷だが、左肩は命中してるため致命傷に近かった。やはり無謀かと思うが、かてないわけではなかった。僕は電持ってきてをドアに向かって全速力で走らせる。電がうねりをあげる。直後僕が逃げたと思って追いかけようとしてドアを開いた人達が電の犠牲になった。その人たちはみんな拘束した。

「…これは死んでもおかしくないな」

致命傷を負った左肩を圧迫止血をしながら僕は進む。いつ伏兵が来るかわからないので足で駿河を握る。

案の定一人が横から飛び出してきた。その時は五月雨丸でナイフを飛ばしたあと手刀で気絶させたが、やはり左肩を負傷してる限り、これ以上進むのは良くない。しかし、逃げたら奴らはおってくるはずだ。監視カメラくらいあるだろう。僕は監視カメラに気をつけながら慎重に出口に向かう。誰も居なかったため僕は安心した。しかし敵の方が一枚上手だった。僕がドアに手をかけた途端ドタドタ足音が聞こえた。

「今来るか?!」

僕は慌ててサブマシンガンを取り出し発砲する。しかしだれも倒れなかった。…罠か!僕が振り向くと、案の定外に大量の敵が居た。終わった…僕は確信した。僕は歩みを止める。敵はジリジリ近ずいてくる。僕はドアを閉めようと手を伸ばそうとするが、拳銃を向けられ、とっさに手を止める。僕は死を確信した。

「…Game overだな。」

僕はそう呟いた。僕達Numberは死を隠すために死ぬことを「GAME OVER」と呼んでいる。そんなくだらない冗談は要らない。死ぬしかないこの状況をどうしよう…。しかし、そんな事を考えてる間も敵はじりじり近づいてくる。…今の僕は両手は塞がっている。そう。「両手」は。

僕は足をバレないように敵の拳銃に向ける。そして、次の瞬間轟音が轟いた。

「んなっ?!」

敵が驚く声が聞こえた。敵の視線は一気に倒れて呻き声をあげる人に向いた。なぜなら、「僕は両手が塞がっていて何も出来ないはず」だからだ。しかし僕は

「残念だな。足に拳銃を隠しているんだよ」

靴の中に拳銃を隠しておくのは僕の戦略である。僕は近くに倒れていた(さっき吹っ飛ばしたからこんなところにあるんだよなあ)電を発進させる。もう拳銃を撃たれることは無かった。…いや、撃てないのだろう。僕は後ろを見る。

「…成功だな。」

後ろには白い煙がたっていた。そう、電には、最悪逃げるために煙幕を吐く機能を搭載してるのだ。おかげで今回逃げることが出来た。しかし

「…痛え…」

こんな撃たれた左肩ではもうしばらく戦闘はできないだろう。しかもミッションも失敗してしまった。これは、僕が久しぶりに経験する、敗北だった。


★一章 終★


作:TKGーカシイナル

著作:TKGーカシイナル

構成:TKGーカシイナル

一章の読了ありがとうございました。

二章をお楽しみに。

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