第21話『ラノベが好きです』


滅鬼の刃 エッセーノベル    


21・『ラノベが好きです』   






 ライトノベルが好きです。


 文庫サイズで、カバーは艶のある白地に主役と主役級のキャラのイラストが入っていて、たいていぶっ飛んでいたり、長ったらしいタイトルがデザイン文字や大きなフォントで印刷されています。背表紙も白地にタイトルの所だけシリーズのテーマカラーになっていて、長いタイトルが、どうかすると二行になって書かれています。挿絵というのかイラストが多いのも魅力です。


 平積みにされても棚刺しにされても、他の文庫本との違いは一目瞭然です。


 そのサイズから、文庫コーナーの一角に小さなラノベコーナーとして存在……していましたが、近年ではラノベ全体で他の文庫に迫る売り上げがあるので、文庫と同じくらいの大きく独立したコーナーになっています。


 ぶっとんだものや長いタイトルが多いのもラノベの特徴ですね。


『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』などは、まだまだ普通の方で、『エロマンガ先生』『貴方がわたしを好きになる自信はありませんが わたしが貴方を好きになる自信はあります』とか『勇者が修羅場過ぎて世界を救っている場合じゃない魔王の呪いでヒロインたちを同時攻略しなければなりません』『男子高校生でライトノベルの作家をしているけれど、年下のクラスメートで声優の女の子に首を絞められている――Time to Play――』とか、賑わっております。


 ラノベに限らず文庫はすぐに溜まるので、そんなに多くは持っていませんが、それでも300冊くらいは書架や、座卓の横に平積みになっています。


 オッサンの読書環境としては、ちょっと珍しい部類に入るという自覚はあります(^_^;)。


 ライトノベルを読むようになったのは、出版社との関りからです。


 もう十数年前になりますが、戯曲でお世話になっている出版社から「高校演劇の入門書を書いてみないか」というお誘いを受けました。いきなりの単行本ではなくネットマガジンの連載記事としてということでした。


 演劇書と言うのは、戯曲も含め、そんなに売れるものではありません。まして、高校演劇に限定すると、読者層はさらに狭く小さなものになります。


 そこで、無い知恵を絞って「ジュニア小説」の体裁で書いてみることを思い立ちました。図書館で借りた本に、吹部に入った女子高生が、部活に馴染んで個人的にも部活としても成長していく物語があったからです。


 そこで、舞台を地元の大阪に置いて、東京からの転校生が演劇部に入部して、一年後にコンクールで優勝するまでの物語を書くことにしました。


 東京からの転校生としたのは、大阪に住んでいながら大阪弁で真理の機微を書くのは難しいと思ったからです。編集さんからも「主人公の言葉は標準語で」と言われても居ました。大阪弁は、なんだかんだ言っても方言の一種で、読者が限られるという理由でした。


 タイトルも『わけあり転校生の七カ月』という、ちょっとジュニアノベル風にしてみました。


 主人公が東京で通っていた高校を『乃木坂学院高校』としました。


 半ばまで書いて検索すると秋元康氏が、新しいアイドルグループ・乃木坂46を作ることを知りました。他にも『ラブライブ』というアニメの高校が音乃木坂学院であることも分かって、しまったと思いました。


 46の方もアニメの方も、ずっとずっとメジャーで、絶対パクリと思われるからです。


 しかし、ほとんど無名の本書きでもありますし、そんなに売れるはずもないので、そのままとしました。


 それからですね、書店に入ると意識的にラノベのコーナーを見るようになって、タイトルやイラストの面白さから自分でも買って読むようになりました。


 最初に読んだのは、たぶん『僕は友だちが少ない』『冴えない彼女の育てかた』『涼宮ハルヒの憂鬱』あたりであったと思います。


 それまで書いていた戯曲と違って、とても自由な世界だということが嬉しかったです。


 設定や、人物の行動や台詞、たいていのことが許されます。隠語や人を罵倒する表現も明るくぶっ飛んで掛けます。


 試しに、ブログ小説として書いてみると、戯曲の十倍以上のアクセスがありました。高校演劇の入門書として書いた本も分冊で出してみましたが、う~ん、こっちのアクセスはイマイチですね。むろん、高校演劇の狭さと言うのではなく、わたしの力が及んでいないということなのですが。


 むろん歳を食ってから始めたジャンルなので、若い人が読んだら噴飯もの(という言い方も古い)なのでしょうが、オッサンやオジンが書いてはいけないというルールもありませんので、勝手にやっております。


 友人に話すと「よくラノベコーナーに立てるねえ」と感心されます。


 我々の世代には、ラノベはエロ本に近いものという認識があるように思います。友人の中には元学校の先生というのが多く、現職のころはラノベというと有害図書の一種という認識ですね。


 生徒からラノベを図書室に置いてほしいと要望されても眉を顰める人が半分以上です。


 ある友人の学校では『エロマンガ先生』や『冴えない彼女の育てかた』『中古でも恋がしたい』などを生徒の要望があったにもかかわらず、無視したり、買っても書架から外したりしています。


 ラノベ……いえ、ラノベもどきをブログに書いたり、投稿サイトに晒したりしております。


 いい年をして、まさにメッキの刃なのですが、たとえナマクラや模造刀であっても、刃は刃、持っている本人は、多少ともシャッキリいたします。


 若い人が読むと痛々しい代物なのでしょうが、オジンの勘違いとご寛恕いただければ幸いです。

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