第16話『組み立て付録』
滅鬼の刃 エッセーノベル
16・『組み立て付録』
始まりは、月間少年雑誌の組み立て付録でした。
『少年クラブ』とか『少年画報』の付録がよかったですねえ。
米空母エンタープライズの洋上模型は一メートルほどの大きさがありました。シャーマン戦車や潜水艦、忍者屋敷や東京タワーなど、今なら、単独のペーパークラフトとして売っても十分商売になるレベルのものが、定価150円ほどの雑誌についているんですから、毎月楽しみでした。
親に買ってもらえるのは『少年』だけでしたので、付録は貸本屋さんに買いに行きます。一つ三十円から五十円くらいだったと思います。雑誌の発売日には、近所の少年たちの取り合いになります。友だちの家に行って先を越されているのを発見した時は悔しかったですねえ。
作って飾ってお終いではなく、使えるものもありました。
そのシートが付いたレコードプレーヤーなんてのもありました。
厚紙のアームの先にペン先のような針が付いていて、ソノシートの端っこに割りピンを差し込んでクルクル回しますと、アームに張ってあるセロハンだったかが振動してかそけき音を奏でます。むかしの蓄音機というのは、こういう感じだったのかと子ども心にもワクワクしました。
幻灯機というのがあって、セロハンのフィルムが付いていて、自分で調達した電球を仕込んで壁に映します。友だちを呼んで、暑いさ中「オオーー( ゚Д゚)!」と歓声をあげたものです。いまのLEDと違って白熱電球なので、セロハンのフィルムは数回でパリパリになって使い物になりません。幻灯機そのものも茶色く焼けてきて、今なら、絶対売れない、売ってはいけない代物でした。
1/2000の連合艦隊、こいつは戦艦、空母だけでなく駆逐艦や潜水艦も付いていて、雑誌本体についている輪形陣などに並べてみると六畳の間一杯になりました。
工作が苦手な子もいて(体育が得意な子は工作がヘタだったような記憶がありますが、偏見かもしれません)上手く作ると尊敬されました。
勉強が苦手なわたしは、こういう工作系でアドバンテージをとっていました。当時は、たとえ勉強ができなくても、なにか一つできると一目置いてもらえるところがあって、まさに滅鬼の刃でしたねえ。そういう点では、いい時代でした。
だから、運動オンチで付き合い下手なわたしでしたが、イジメにあうことはありませんでした。
組み立て付録は、やがて、ゴム動力の飛行機、木製模型(プラモデルのタミヤが、まだ田宮模型で木製の艦船模型を出していました)、プラモデルに広がっていきます。
校区の外に安い模型屋さんがあると聞くと、自転車に乗って遠征したもので、いつも四五軒の模型屋さんをハシゴしていました。
オッサンになってからペーパークラフトをやるようになりました。組み立て付録の延長線ですね。
プラモデルやソリッドモデルだと十万くらいになるスケールのものが一万円以内で買えます。
手間暇は、並みのプラモデルの数倍から十倍以上ですが、処分するときはグシャリと潰して燃えるゴミで出せます。ペーパークラフト(紙模型とも言いますが)は軽いので、壊滅的な壊れ方はなかなかしません。いきおい、そのつど修理するので、本当に処分したものは地震によるクラッシュや、中にゴキブリが住み着いたもの以外はありません。
写真は、1/200の戦艦扶桑です。ポーランド製で通販で6000円ほどでした。
キットは冊子の形になっていて、数十枚のシートできています。
正直、表紙の絵は上手くないのですが、ポーランド製なら間違いないとポチリました。
実は、日本海軍の研究は日本ではなくポーランドが一番だと思います。
意外に思われるかもしれませんが、ポーランドは日露戦争以来、大の親日国です。第一次大戦でポーランドの戦災孤児たちが行く先を失った時も日本は数千人の孤児たちを引き受け、あちこち、移住先が決まるまでお世話をしました。
だから、紙模型も、ひょっとしたら日本製を超えていると予想したら、そのとおりでした。
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