第2話 Mad

 私はもうおかしくなりそう。


 あなたに追い回されて。


 考えたくなくてもあなたのことを考えてしまう。


 断じて恋ではないけれど。


 もしもあなたを好きならば、こんな幸せなことはない。


 好きな人に追われるのだから。


 世の中の恋人たちのように。


 だけどあなたは悪い人。


 私を困らせる悪い人。


 あなたのせいで私が狂ったと、あなたは知らないかもしれない。


 だけどこんな日々が続くなら、私はあなたに刃を向ける。


 捕まりたくはないけれど、もう止められそうもない。


 あなたも理解できるでしょ?


 こんなに私を苦しめたのだから。


 自業自得ってあるでしょ?


 全てはあなたのせい。


 もうすぐ私が行くからさ、楽しみにしててよ。


 逃げ切れなかったと思わせて、わざとあなたに捕まって、ここぞというときに刺してやろう。


 あなたはどんな顔をするだろう。


 恐怖の顔が楽しみだ。


 朝は人目が多いだろう。


 昼は会社に行かねばならない。


 やはりやるなら夜だろう。


 あなたは追いかけてくるだろう。


 早く捕まってやってもいいが、それでは面白くともなんともない。


 疲れた顔をしながら、もうダメだという顔をしながら、白旗をあげよう。


 あなたの前で。


 あなたはニヤッと笑うだろう。


 そしてゆっくり近づいてくるだろう。


 嫌がっているような顔をしながら、私は待つ。


 あなたが罠にかかるのを。


 たくさんあなたを酔わせてさ、あなたを惑わせる。


 私は酔ったふりをしながらさ、あなたのために牙を研ぎ続ける。


 よだれが出ないか心配だ。


 弱肉強食の世界でさ、もうすぐ私があなたを食うからさ。


 これがあなたの為なのさ。


 私は悪くないんだよ。


 あなたがすべて悪いのさ。


 あんなことをしたからさ。


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