ゆみ
clara
第1話 Escape
私の名前はゆみ。
私は逃げている。
あなたから。
暗闇の中をずっと逃げている。
あなたは私を殺そうとしている。
そんな気がする。
だから私はあなたには見つからないようにしている。
こそこそと隠れ、抜け道を通る。
見つかってしまうと大変だ。
私は逃げ切ることができない。
あなたには勝てないのだ。
だからあなたに見つかってはいけない。
そうやって私があなたのことをそう思うから、あなたは私を嫌いなのだろう。
私が姿を見せないと、あなたは私に嫌なことばかりをする。
でもどんなことだったのかは覚えていない。
はたからみたら大したことじゃないのかもしれない。
友達のこと?
彼氏のこと?
仕事のこと?
んー、よく思い出せない。
でも、私の何かが少しずつ欠けていく。
私の何かが奪われていく。
それでも私は逃げ続ける。
あなたがどんなことをしようと。
でもそんなことをしていると、いつか本当に大事なものを失いそう。
私が逃げてるつもりでも、実はあなたに捕まってるんじゃないか。
そう考えるようになっている。
檻の中から逃げ出そうとする小動物のように。
無駄なあがきをしているだけなのかもしれない。
そうじゃない。
そうじゃないと言ってくれ。
誰からも返答はない。
答えは結局わからない。
誰も教えてはくれない。
だから私は結局逃げ続ける。
いつも家に帰る時、あなたが家の前にいないか怖くなる。
アパートの階段を上り、カギを開け、ドアを閉める。
そして内側からしっかり鍵をかけ、チェーンロックもかける。
これでもあなたが怖いんだ。
この気持ちがわかるかい?
ドアから入ってくるんじゃないか?
実は家に隠れているんじゃないか?
そういう不安に駆られ続ける。
だから家は嫌いなんだ。
とても孤独だから。
ベッドでも最近はあまり寝付けない。
夢の中でもあなたに会うような気がするから。
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