第17話 殺意
「あ……く…!」
「さて、君を壊すのは後にして…」
俺の首もとから麻友の口が離れる。
口の端から恐らく俺のだと思われる血が垂れている。
「君さ、この娘と特別な関係でしょぉ?」
金縛りにあって倒れている玲奈を軽く蹴る。
反応を見られていると分かっていても眉をしかめてしまう。
「あ、それとも片思いとか?確かに可愛いもんねー?」
今度は玲奈の髪を掴み、無理やり立っているような姿勢をとらせる。
怒りが、沸いてくる。
腹の底から煮えたぎるような物が逆流してきそうなくらいに。
「例えば!…恋人ないしは好きな人がされて嫌なことってあるよねー?」
「………」
「殺されるっていうのもまあ、最悪のパターンだね」
麻友が懐からバタフライナイフを取り出し玲奈の首に添える。
…させてたまるか…!
筋力全開で身体を持ち上げる。
どうやら動かなくはないみたいだ。
反撃しなくては…。
ビリッ…。
身体が一瞬震えた。
次の瞬間、俺の体中を耐え難い苦痛が走り回った。
「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁ!!!!」
「もう、君はそこで見てなくちゃダメ!」
苦痛から解放された俺は再び力無く倒れ込んだ。
身体のあちこちが痙攣している。
「まあ、殺しちゃうのは可哀想だからやめておいてあげる。その代わり…」
麻友のまわりにまた吸血鬼が集まっていく。
一体何人もの吸血鬼を操っているのだろう。
際限なく沸いてきそうで恐ろしくなる。
「生きている中で辱めをうけてもらわなくちゃ…♪金縛り解除!」
金縛りが解けたと同時に、吸血鬼達が玲奈の身体をコンテナに押し付ける。
何故か玲奈は念力を発動できない様子で、身体をよじっているが抜け出せていない。
「吸血鬼の中には特殊な能力を持った人もいてね…能力封じの能力なんてのも存在するんだ」
麻友が愉快そうに解説する。
ここまで来て、ようやく俺は麻友の狙いが分かった。
大事なのは玲奈を囲んでいるのが吸血鬼であるということではない。男であるということだ。
金縛りを解除したのは──俺に悲鳴を聞かせるためか…!
「あ…あ……ぁ」
「…!や、やめて!」
やはり意識が混濁し麻友の言いなりとなっている吸血鬼は玲奈の服に手をかけた。
力任せに引き破る。
他の吸血鬼達も群がっていく。
「くっ…!こんなことして何になるんだ!」
「君のその顔が拝めるんだよ!…最高にひきつってるよ…」
「いやぁぁぁぁあっ!!やめて!」
玲奈の悲鳴──!
こいつの思惑通りになってしまうが…ここで敢えて怒りを前面に出す。
こいつを…殺せば…全部片付く。
殺せばいいんだ…。
だが、今度は体中を快感が襲う。
力が入らない。
…くそっ!動ければこんなやつ、すぐにでも…!
殺さなくちゃ、殺さなくちゃ玲奈が…!
「た…すけて…っ遙斗…ぉ……」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………俺は今まで何をしていた?殺す?そんなこと思ってただけで実際にしようとはしなかった。何故か?人殺しにはなりたくなかったから。人を殺すのが怖かったから。そんなに俺は臆病だったか?簡単なことだろ?首を跳ね飛ばす、心臓をえぐり取る、原型を留めぬほど切り刻む。何でもいいじゃないか。それだけで玲奈が救える。それだけで玲奈が苦痛から救われる。何を躊躇う?手の届くところに対象はいる。殺せばいい。殺さなくちゃいけない。殺すんだ。殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス───────
────遠くから…声が聞こえる…。
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