第13話 デート
その日のパトロールは偶然玲奈と違う班になり、細かいことを話せなかった。
異常なしで終わり、あとはご飯を食べて寝るだけだ。
「おまたせしましたー!」
西深さんが笑顔で配膳してくれる。
心なしかいつもよりおいしい。
やはり、玲奈の様子の変化が大きいのだろう。
いや、話さないのはいつも通りなのだが表情というか雰囲気というかが違う。
明るい。思い詰めていない。
それだけで食卓も楽しくなる。
「あ、そうだ!私明日休みなんだけど誰か休み?」
空蝉さんがごく自然に尋ねた。
それについビクッと反応してしまい玲奈を見る。
玲奈も俺を見ていた。
「え…、どうしたの?」
空蝉さんが不思議そうに首をかしげる。
別に秘密にする理由も無いし明日の予定は言っておこう。
「実は明日、玲奈と買い物に行くんだ」
「~~~~~~!!!」
何とも言い難い何かを感じてまた玲奈を見ると、真っ赤な顔で『何で言っちゃうのよ!』とでも言いたそうな顔で俺の袖を掴んでいた。
「…買い物なら私が……」
「咲良!…私も行くとかそういうのはダメだよね、デートなんだし」
名乗りかけた西深さんを制して空蝉さんがニヤニヤしている。
デート、か…。
とりようによってはそうなるのかな…。
「まあ、俺は玲奈と2人がいいけどな。玲奈が嫌なら…」
「~~~!!~~~~!!!」
玲奈が真っ赤な顔で首を横に振る。
嫌っていうのにNOということは2人がいいってことだな。
「ってことだ。ごめん、空蝉さん」
「いやいや、いいのいいの!デートの邪魔でしょ~?」
「デ、デートなんかじゃないよっ!…ごちそうさま!」
ニヤニヤした空蝉さんにからかわれた玲奈は真っ赤なまま自室に戻っていってしまった。
「いいなー、デートかぁー」
千賀さんがただ純粋に羨ましそうにしていて何も言えない。
これはもうデート決定らしい。
「あれは、完全に恋する乙女の顔だったよー…」
ニヤニヤしながらジトッと俺を見る空蝉さん。
この人はちゃんと目的とか本当の意味とか把握した上で冗談を言ってくるから怖い。
「まあ、頑張ってくるよ」
このデートで玲奈が思い詰めていた原因を探るのと、俺の隠していることを玲奈には伝えよう。
俺はどうするべきなのか考えなくちゃいけない。
翌日。
「おはよう…」
俺が眠い目を擦りながらリビングに入ると、ダイニングに突っ伏す人影が見えた。
西深さんが疲れて寝たのか…?
そう思ったが西深さんはちゃんとキッチンで夕飯を作っていた。
これは…玲奈か…?
「おい、玲奈…」
玲奈の肩に手をかけようとした時、ダイニングテーブルに広がっている物が見えた。
色んな食材に包装紙、そして真ん中に2つ大きな包みがある。
「まさか、これ…」
「玲奈さん、一生懸命作ってましたよ」
楽しそうな声がキッチンから聞こえてきた。
早起きして、お弁当作って、疲れて寝ちゃったのか…。
このまま寝かせてあげよう。
まだ出かける時間でもないし。
……玲奈の寝顔を見ていると、幸せな気持ちになっていく。
ずっと見ていられれば───
《お前は………か?……………を》
「…!」
声…!?
心の中から聞こえてくるような声。
…いや、深く考えるのはよそう。
そんなことでは今日という日を無駄にしてしまう───
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