第3話 病院にて
「…うぅっ」
「!…目が覚めた?」
ここは…?
白い天井。今居るのはベッド。色んな器機。そして白衣を着た女性。
…病院か。
「気分は?」
「悪くはないですが…俺は一体どうなったんですか?」
「それなんだが…」
女性は押し黙る。
良い症状ではないだろう。
だが、元気なことには元気なのだ。
「とりあえず自己紹介をしよう。君の主治医になる紫楓由紀だ。よろしく」
「患者になる夜来遙斗です。よろしくお願いします」
「…分かるとは思うが、症状は軽くない」
「……はい」
唾を飲み込む。
紫楓先生は深刻な顔をしている。
「信じられないかもしれないが…君は吸血鬼になったんだ」
「…はい?」
吸血鬼って…あれか?牙があって人の血を吸うにんにくやら十字架に弱いっていう…。
「先生…冗談は良くないですよ?」
「いや、事実だ…。君も見ただろう?血を吸う吸血鬼を」
確かに俺は女が血を吸うのを見た。
ていうか、俺の血を吸われた。
だが…。
いや、今はそんな考えはやめよう。
とりあえず否定的にならずに全て聞いてみよう。
「分かりました。何も言わないので説明してください」
「…君も吸血鬼に噛まれると感染するとかなんとか聞いたことあるだろう?」
…一般の伝説程度の知識はある。
静かに頷く。
「それは間違いなんだ…。実際には吸血鬼の血を定期的に飲み続けなくちゃならない。それに誤飲したとしてもワクチンを打てば治る」
「それが俺の場合は治らない、と?」
「残念ながらそういうことだ…」
吸血鬼の存在を気にしないと驚くほど話がスムーズに進む。
まさか…本当に…。
「常識は全て変わる。例えば…」
紫楓先生がカーテンを開け放った。
日光が俺に降り注ぐ。
「…!うわぁぁぁあっ!!」
目が…焼ける!!
激痛だ!これは耐えられない…!
俺の様子を確認して紫楓先生がカーテンを閉める。
「辛いだろう?まあ、吸血鬼になりたてで敏感になっているってこともあると思うが」
「本当に…吸血鬼に…」
俺は一回血を摂取だけで感染し、ワクチンが何故か効かなかったために俺は吸血鬼になってしまった。
…なんて現実味のない話だ。
「あ、起きたの!?」
綵色の姿が廊下から表れる。
酷く心配してくれていたみたいで本当に嬉しそうだ。
「綵色…さんだっけ?助けてくれてありがとう」
「いや、私のせいで…こんなことになっちゃって…」
「ちょうどいい。綵色さん、散歩ついでにこの街のことや吸血鬼について教えてあげてくれる?」
「分かりました」
何故ここで綵色に任せるのかは分からないが、おとりになっていたということは警察関係者なんだろう。
素直に従うことにし、俺と綵色は夜を待って外に出た。
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