第16話 初めてなので何も分かりません

仕事始め、多くの人が新しい職場や現場で自己紹介をする。


よくあるパターンが、「〇〇の職場(現場)は初めてで右も左も何も分かりませんので、宜しくお願いします」である。


分からないのは当然だが、一応皆強調して言う。


時々、出戻りの方がいたりすると、「多少のことは存じておりますが、時世により変わっていることもあるかと思います。初めての気持ちで頑張らせていただきます。」のパターンもある。


「この職場(現場)のことはよく分かっているので、宜しく!俺に任せて!」と強気で言う人はほぼいない。


もしいたとしたら、「どこかのアホ社長」か「ウケを狙っている面白い奴」か「KY系」と思われること間違いなしである。


「私は何も知らない弱い存在なので、皆さん優しくしてください。」という謙虚な姿勢が、逆に信用となり、集団に受け入れられる一歩であることは大体の人が知っている。


僕が昔働いていた現場には、面白い上司がいた。


僕が自己紹介をしようとした瞬間、

「初めてなので〇〇は分かりません、できませんは言わないでね!」とその上司に先手を打たれた。


僕は「うっ!」と言葉を飲んでしまった。


自分にとって苦手な作業が多い現場であり、絶対にミスや間違いを犯すこと100%だったので、始めに言い訳をしたかった心理を潰された。


「あんたにとっては初めてかもしれないけど、お客さんからしたら、初めてもクソもないんじゃ。言い訳なしで、一発本番成功するようにやってくれ。」と諭された。


これが社会であり、「失敗してもいいじゃないか人間だもの」なんて幻想だったことを学んだ。


ただ、本気でやって失敗したことについて、寛容であり、サポートしてくれる仲間がいるところはいい職場だと思う。






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