第14話 スーパーマリオの落とし穴

世界の任天堂が初期のスーパーマリオブラザーズを搭載したGAME&WATCHとして期間限定で発売した。


私はメルカリで購入し、30年ぶりにプレイした。


30年前、中学入学と同時にファミコンと決別してから、一度もやっていない。


あまりにもの懐かしさと嬉しさで、心が躍った。


懐かしのマリオ、クリボー、ノコノコ、キノコ、ハンマーブロス、クッパ等々・・。


やり始めると手がスイスイ進む。隠しコインや、1UPキノコ、地下に繋がる土管やワープの場所など、ほぼ覚えていた。


少年の頃に比べ、自分の手のサイズが大きくなっているせいか、マリオの動きがどこかしらギコチナイ。


久しぶりの感覚に、当時の気持ちと重なり、少年化している自分がいた。


キノコをゲットして巨大化したり、ファイヤーやスターをゲットした後に、穴に落ちることが多い。


これは、今も昔も変わっていない。


特別な存在になった!と思った瞬間、脳内でドーパミンの出が活性化し、前頭葉の機能が怪しくなり、指先の制御が効かなくなる。


普段だったら止まれるはずの箇所で、スッと穴に吸い込まれる。


危機管理能力が著しく低下する。


嬉しいことがあっても、簡単に喜んではダメである。


落とし穴が必ず待ち構えているのだから。


このような考えが染みついたのは、まさしくスーパーマリオのゲームだ。


人生哲学と言ったら大袈裟なのかもしれないが、スーパーマリオをプレイしてみると、人生を感じずにはいられない場面があまりにも多い。


マリオが前に進むと、画面が切れた箇所に戻ろうとしても絶対に戻れない。


自分が見えていない世界には絶対に行くことができない世界観を演出している。


巨大化したマリオでは入れないブロックの隙間がある。


ミニマリオはその隙間に入り込むと隠しコインをゲットできる。


ミニマリオで隠しコインをゲットし続ける方が、コインが貯まり1UPに繋がることがある。


謙虚で無駄のない生活をし、コツコツと貯蓄するほうが、人生は得であると言われているような感覚を得る。


ファイヤーをゲットすると、やたらファイヤーを放ちたくなる。


自分の手を汚さなくとも、嫌なものを排除する手段であるが、それに甘んじていると集中力が低下し、排除したと思い込んでいたクリボーにやられる。


スターをゲットして無敵気分で大暴れしている内に、穴に落ちる。


人は、特別なものを得た瞬間、自分を見失う。


今までの自分の人生を振り返ったとき、頷けることがたくさんある。


ミニマリオで人生を過ごすことは、ハードルが高いし疲れる。


だが、特別な存在からミニマリオに戻ったとしたら、運を積み上げる時期と考えることができそうだ。


では、クッパとは?


敵のように見えるが、顔は優しく温かい表情をしている。


悪魔の最終関門のように見えるが、先に進む覚悟はあるのか、そのためのスキルがあるのか問われているような気がする。


自分の写し鏡のような存在だろう。


今こうしてスーパーマリオの人生哲学を、自分なりに味わうことができたことが嬉しさを倍増させている。


では、16面(全面)クリア目指して、楽しんでみようと思う。

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