第8話 キレたっていいじゃないか

スキーゲレンデに、双子の男の子(5才くらい)を連れたお母さんがいた。


お一人で、世話をしている様子だった。


そのお母さんは終始キレていた。


「テメー動くなって言ってんだろ!」


双子の一人の男の子、勝手に滑り出す。


派手に転ぶ。


お母さん、勝手に滑り出して転んだ男の子を引っ張り上げ、


「人の話が聞けねーのか!行くなって言ってんだろ!」


その間にもう一人の男の子、別の方向に滑り出す。


「おい、テメーもあほか!勝手に行くなっつてんだろ!」


勝手に滑り出したもう一人の男の子を捕まえる。


二人同じ位置に揃える。


「よく聞け、お前たち、ママは一人で見てんだ。それが分からねーのか!」


双子の二人、無表情で黙って聞いてる。


お母さんが、スマホを取り出し二人を撮ろうとする。


「おい、パパに見せっから、じっとしてろよ。写真撮るから、動くなよ。」


お母さんが、ポケットからスマホを出している最中、


二人は、しれっと再び滑り出す。


その後のお母さんの様子は・・・想像にお任せします。


男の子は基本的に何も聞かない、響かない。


響かないから、お母さんの口調も厳しくなるんだと思います。


近くには、ブーツを脱ぎ捨てて泣きわめく男の子に、ガチギレしていたお母さんもいました。


「スキーやらないなら帰るよ!履くの?履かないの?どっち!!」


混乱している小僧に何を言っても、難しいでしょう。


そんなお母さんたちも、数年前には頼れる彼氏や旦那様と楽しく滑っていたんだと思います。


頼もしくなる前は、男の子はこんなもんなのです。


頼もしく育てたと思ったら、違うところに「スッ」と行っちゃうんです。


お母さんが悪いわけでもない。


男の子は、やりたいこと、好きなことをただ勝手にやる生き物なのです。


ただ、勝手なのです。


お母さん、お疲れ様です。






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