10話.[最低だとしても]
「天音、おはよう」
「おはよう、新」
お兄ちゃんの方はなんにも変わっていない。
いつまで経ってもあの頃の新のままって感じだ。
「それで話って?」
「高校生のときさ、言えなかったことがあってさ」
「お、もしかして本間先輩のこと?」
「違う、きみに対してのことだよ」
私……修学旅行でアホなことをしたからまだ怒っているのかな?
もしそうだとしたらかなり引きずる性格というか、まあなにかがあってからじゃ遅いって言いたいんだろうけど。
「僕、あのとききみのことが好きだったんだ、いや、それどころかもっと前から」
「え……」
え、あ、でもいっぱい私のためにしてくれていたからな。
放課後に遅くまで残っていたときもわざわざ付き合ったり、お散歩にも付き合ったりとか露骨だったかもしれない。
奏くんに比べればあれだけど、分かりやすいことだったのかもしれない。
「でも、きみは奏のことしか見ていなかったからね、振られるのは分かっていたから言わなかったんだ」
「そうだったんだ……じゃああのとき彼氏だって言えば良かったんじゃないの?」
一緒に行けてたらなにかが変わっていたかも。
あそこで母と奏の要求を断って、すぐにとはいかなくても新にって可能背も……。
「そんなことをしても虚しいだけだろ? 相手が奏だったから別にいいんだ。だからこそこうしてずっと会えるんだからね、親友のままでいてくれよ?」
「当たり前だよ、それだけはずっと変わらないから!」
「うん、ありがとう、それともう何十回も言っているけどおめでとう」
「あははっ、ありがとう!」
そうか、彼から私の間にはただの親友だけじゃない感情があったんだな。
あの微妙な状態のときにぶつけられていたらどうなっていたんだろう。
考えても仕方がないことだけど、かなりインパクトのある遅い告白だったから。
でも、彼はどこまでも優しい、だからこそ親友のままでいられる。
勝手だけどこの関係は死ぬまでずっと続けたいのだ。
どんなに最低な人間扱いされようとそれだけは守って行きたかった。
21作品目 Nora @rianora_
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