第5話 告白

 空は「ない!と言わせる気はないんだろ?」という目で『彼女』をにらみながら、


「あるよ」


 と答えた。


『彼女』は空のハッキリとした意思に少し驚いた顔をし、不敵な笑みを浮かべながら、


「いい子だ」


 とささやいた。


「まず二人の中でのルールを作成しよう」


『彼女』はそう言うと、少しばかり、後ろを振り向き考え出した。


 空が『彼女』が考えていることに空き始めてきたころ、


「よし、決めた!」


 といい、『彼女』は長く考えた割にはシンプルなルールを提案した。


 ・私のこと、そして私から聞いたことを誰にも話さないこと


「なんだよ!そんな簡単な事かよ!」


 少し表紙抜けしたように空がため息をつく。


 その反応を予想していたかのように、間髪入れず、『彼女』は


「妹にもだぞ!」


 と念を入れる。


「だから言わねーよ!」


 ムスっとした表情で空が答える。


 少し間を開けて、『彼女』は


「わかった。そのことでこれからお前が困難な選択を迫られることもあるだろう。だが私は味方だ。それだけは変わらない事実だ。」


 急な重いトーンに、空は一瞬たじろいだが、


「わかった。」


 との小さい声とともに頷いた。


「まず自己紹介をしておこう」


『彼女』はそういうと長い髪に両手をかけると、髪をはぎとった。


「私は長澤という。この際名前はあまり重要でないからおじさんとでも呼んでくれてかまわない。ん?どうした?」


 髪がなくなったことに空は驚きを隠せない。


 それに気づいた長澤は、


「あぁこれか。これはカツラと言う。ここに君と話しかけに来るためには、女性に変装する必要があった。ここにはほとんど女性しか入れないからな。」


「ここにはないものだから見たのも初めてだろ。ちょっと触ってみるかい?」


 空は小さくうなずくと、カツラを受け取り、無造作に触ってみる。


「壊さないではいてくれよ。帰りも付けて戻らなければならないので。」


 興味津々にカツラを触る空に対して、長澤はそう言った。


「もう返すよ」


 触ってみたり、かぶってみたり、一通り楽しんだ空はカツラを長澤に返した。


 長澤はカツラを受け取り、「女性」の姿に戻ると、話を再開した。


「私ははるか昔、ここで生活していた。いわばお前の先輩というやつだ。まぁ何も女性格好してまで先輩風をふかしに来たわけじゃない。俺の経験からお前らを助けにきた。その中で悲しいが、事実だから最初に言っておく。」


「妹がここから出ていく許可を受けたろ?」


 空は妹に口止めされてるため、右眉が少し動くが、知らないそぶりを見せる。


「あぁ、妹に口止めでもされてるのか。まだ俺を仲間だと判断しきれていないだろうしな。」


 少し長澤は悲しそうな顔を浮かべる。


「まぁ今は聞くだけでいい」


「もし妹が外に出てしまったら、二度とお前らは会えることはない。」




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