第4話 出会い
「俺は知らなかったんだ。」
「なにもかも」
「あの男に会うまでは」
「俺が誰で、ここがどこであるのかを」
いつもと同じように目覚めた少年少女たちは、食堂に集まり、食事を食べている。
食欲がなかった空も、少しずつ元の空に戻っていた。
この教会で、食べる速さでは元チャンピオンの空が、見事にチャンピオンの座を奪い返し、年下の子たちに文句を言われていた。
それに対し、海は不安でいっぱいなのか、更に食事のスピードが遅くなったようだ。
そんな海もなんとか今回の食事を食べ終え、皆に離席の許可が出た。
「海、大丈夫か?」
「うーん、やっぱり怖いよー」
そんな海の姿に、空は何かをしてあげたかったが、海からこの話をきいてから、自分が何もできないという現状を突き付けられているような気がしていた。
「大丈夫だよ、元気だせっ!」
「・・・うん」
空は根拠のない励まししかできない自分に、すこし苛立ったように、顔をこわばらせていた。
そんなこんなで時間が経つと、教会から出ていい指示がシスターから出され、少年少女たちが一斉に外に駆けだした。
「お兄ちゃんも行こっ!」
無理やりに作った笑顔を見せた海がドアへ走り出したので、空はそれを追いかけようとしていた。
その時、
「お前はだめだ」
低い声が空の後ろでささやかれた。
その瞬間、空は意識を失った。
空が目を覚ますと、大きな『女性』が立っていた。
空は決して小さくはない。
この教会ではむしろ一番背が高い。
最年長の男だし、シスターは女性なので、自分より大きい人を見る機会がこのところなかった。
「手荒なマネをしてすまなかった」
「しかし君と二人で話すのにはこの方法しかなかった」
空は不審げに『彼女』を見つめる。
そしてそんな彼の姿を気にすることはなく『彼女』は話しはじめた。
「これから本当の話をする」
「君には信じられない話かもしれない」
「この話を聞くことで、君は大きく苦しむかもしれない」
「だが、妹を救うことができるのは君だけだ」
「君に話を聞く勇気があるかい?」
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