第3話真っ赤な口紅①

「茜ちゃんはバンドとかライブハウスとか興味ない?」

「ライブハウスって行ったことないから興味ないわけじゃないけど、怖くない?」

「怖くないよ~まぁ、ヤバイライブハウスとか裏でヤバイことしてるバンドばっかり集まる箱もあるみたいだけど、あたしが通ってるとこは健全なポップスバンドばっかりだから」


 鈴川さんは、結局例の人妻とはすぐに別れたみたいでローズの口紅をやめている。

 別れた時期は少し落ち込んでいてゼミにも必要最低限しか顔を出してくれなくてせっかく少しだけ同じゼミの仲間として打ち解けられたのに残念だった。

 ちょっとの間だけ彼女がいないときにするピンクのグロスをした期間をもうけた後今度は冴えるような明るさの真っ赤な口紅をし始めたからなんとなく察した。


「今の彼女がね、ガールズバンドのボーカルなんだ、正直恋人のあたしからしてもすごい歌がうまいわけじゃないんだけど、すっごくライブ映えする人なんだ~」


 やっぱりね……そんな気は正直してた。勘がいいのも考えもの。

 それに、これは今の彼女との惚気を聞かされているんだろうな。


「今度、彼女が出るイベント一緒に行かない?チケットあと二枚あるの、いくつかのバンドが出る形式だからさ、もし彼女のバンドが気に入らなくても楽しめると思うし」

「石野君とは行かないの?音楽系イベ好きそうなのに」

「石野君には二枚あげたよ~石野君は最近できた彼女さんとくるんだって」

「そっか、ならいいよ、でも鈴川さんの彼女は私が一緒に行って焼きもち焼いたりしない?大丈夫?」

「ありがとう!焼きもちは大丈夫だよ~彼女にはちゃんと茜ちゃんのことストレートの友達だって言っておくから」


 なにかが引っ掛かったけど、何が引っ掛かったのかわからないままチケットを受け取って財布にしまう。

 ただ、私にわかっているのは鈴川さんには真っ赤な口紅よりピンクのグロスの方が似合うと思うこと、おせっかいだから本人に言ったりしないけど。


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