第2話ローズの口紅②
金曜日、大学の帰り道、鈴川さんが高級車の助手席に乗り込んでいくのを見かけた。
ローズの口紅をしたアラフォーの迫力美人が運転している車に。
鈴川さんと目があって、彼女はウインクをして人差し指をそっとローズの口紅が塗ってある唇にあてる仕草をした。
それは、無邪気ないたずらっ子のようなイメージを私に抱かせ大人っぽく彩られた唇とのアンバランスさに何故か胸をキュット締め付けられた。
「金曜日のは彼女さんだよね?きれいな人だね、デートだったの?どこ連れてってもらったの?」
月曜日、今にも日が落ちそうな夕方のゼミ室には私と鈴川さん、それに石野君の三人しかいなかったから単刀直入に聞いてみる。
野暮だとはわかっているけど気になったんだもの。
「うん、あのね~ホテルの最上階のレストランで食事したの~夜景が見えてきれいだった、あたし、シャンパンなんてはじめて飲んじゃった」
「すごいね~!」
ちょっと突っ込んだ詮索だったかも、私の心配は鈴川さんの上機嫌ぶりから要らぬ心配だったみたい。
それにしても、あの人そんなエスコートしたのか、バブリーというかなんというか、こんな不景気でもあるとこにはあるんだな。
「あのさ、それ人妻も若いころ今の旦那とか他の男にされたコースなんじゃん?」
「石野君、ひど~い!わざわざ言わなくてもいいじゃない」
鈴川さんは気を悪くしたようでまさにプリプリという表現がぴったりの表情をしながらゼミ室を出ていく。
「石野君……」
「あ~、悪い、オレ、つい余計なこと言っちゃうんだよな……」
いや、私もそうかなとは思ったけど。
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