色
水縹❀理緒
色
初めて筆を手にした時
ワクワクした
あれは、窮屈を感じてた小さい時だ
何も楽しくなくて、いい子を演じなければならなかったから
「アナタはいい子ね」
「自慢の子だわ」
「こんな事、するはずないもんね」
勝手に押し付けられる彼らの理想に
幼い私の心は殺された
人形がどうせここにいたって、
私が誰かと変わったって
誰も気づきはしないのに
そんな風に思いながら過ごしていた
その時、新しい先生がやってきた
「このクラスは、暗いね
明るく、楽しく、生活出来るように
新しい授業をしよう」
先生は、その授業を[自由時間]と言った
1つの筆と色んな絵の具、1枚の白い紙
今から目の前にある真っ白な紙に
何をしたっていいと先生はいう
その、ちょっとした解放感に、私は惹かれたんだ
「これをしてね」
「あれをしてね」
「しちゃだめでしょ」
「もう一度」
知らない 知らない 知らないよ
あぁ、楽しい
自由に好きなように出来るなんて
筆に絵の具を付ける度
筆の色を変える度
私の心はその色に染って輝いていた
制約のない時間
押し付けられない理想
自由に描ける自分の世界
それが、とても楽しかった
現実に帰りたくない
このまま、絵の中にいたい
だけれど、終わりのチャイムは響く。
モノクロの世界
私には、現実がそう見えている
相手が怒っていようが、泣いていようが
変わらない
だって、私は死んでいるんだもの
それにアナタ達は私にとって必要ないもの
私が求めているのは
あの白い紙の中なのだ
黒いならば重ねましょう
塗りつぶしてしまいましょう
色が、ほしい
鮮やかな色が
白い…
白い?
あぁ、そうだ、白い
白い世界
チャイムが鳴った。
その日
私は1人、キャンパスに向かっていた
先生はみあたらない
足元は、絵の具の海
壁も天井も、私の好きな色で埋めつくした
色んなお花をその上から描いた
近くにいた同い年の子だったものが、黒色の涙を流しながら私に声をかけてくる
「どうして、こんな事するの」
って
どうして?
そんなの決まってるよ
私の生きていたい世界にする為だよ
色 水縹❀理緒 @riorayuuuuuru071
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