第3話 笑顔
僕は昔から笑ってたらしい
親に怒られても
友達に殴られても
風邪を引いても
怪我をしても
笑顔は絶やさなかったらしい
ある日
僕は新しい感情を知った
それが恋と言うものだと恋人から教わった
僕は恋人がそばにいるだけで前より笑顔になれた
嬉しいという感情を知った
恋人と僕はとてもとても仲良しだ
笑顔な恋人が好きだ
笑顔でいる自分が好きだ
ある日
恋人が冷たくなった
本当は忙しいんだと知っていた
だから僕は笑った
『大丈夫 無理をせずに頑張って』
恋人は悲しそうな顔になった
僕はどうやら傷つけてしまったらしい
僕の笑顔が恋人を傷つけたらしい
笑ってる僕にしか価値がないと
いつかの友達が言っていた
笑わせれる僕にしか生きてる意味がないと
だから
僕は必死に恋人を笑顔にしようと
恋人の好みに近づけるよう努力した
恋人の笑顔が増えた
僕は安心した
恋人が笑顔になってくれた
通話越しの嬉しそうな声
僕に好きと告げる優しい声
『ねぇ、○○は笑えてる?』
恋人が優しい声で聞く
僕はそっと自分の部屋の鏡をみてから
『笑ってるよ』
そう答えた
恋人は
『よかった』
と嬉しげに呟いた
僕は恋人とあまり会えない距離にいることを幸福におもった
だって
僕の笑顔は昔より醜く
悲しげにみえたから
恋人が僕の会話に返事をしてくれなくなった
また何かに集中してるんだなぁ
頭の端で思い
そっと通話をミュートにする
『ねぇ 僕は君の恋人で要られて幸せだよ。君は?』
幸せだよ
『よかった、ねぇ、愛してるよ!』
愛してる。大好き
『だから、だから、こんなに卑怯な僕を許してくれないかな』
もちろん 許すも何も、怒らないよ。愛してるから
『うん。知ってるよ。僕も大好きだよ。愛してるんだ』
そっと携帯を見ればいつの間にか切れていた通話
僕は小さく笑う
惨めだなぁ
と
返事がかえってくるわけない。
期待をしていたわけではない
期待をしていた返事を頭の中で恋人に言わせてる僕に嫌気がさし笑顔がこぼれた
ポロリと目からあふれる温かい液
僕はそっと鏡をみる
そこには笑顔を作れなくなった ただの一人の泣いてる人がうつっていた
これは誰なのだろう。
僕は心を押し殺した
すると
鏡の自分が笑顔になり
また
恋人が寂しげにしていた
笑顔にしたいだけなのに
おかしいね
涙がとまらなくなった
ある日恋人にあった
恋人に抱きしめられた
『お願いだから、演技しなくていいんだよ』
僕の身体から力が抜け、涙が溢れ出た
『○○の全部を愛してるからだから 無理しないで』
僕は笑顔を忘れたけど
大切なものを恋人からもらった気がする
それを僕は愛とよび
胸の中にあふれるくらいにしまいこんだ
そのかわり
恋人に僕の感じた愛を返していこうと
そう決めて
目を閉じた
『次の僕は笑顔で居てくれるよね』
end
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