第2話 コロン
最近、よく足元でコロコロとなにかが転がる音がする
周りを見ても何もない
でも、何かがない気がする
「でさ、あのアニメのー…」
話しかけるが返事はこない
「ゆうくん?」
「え、あ、なに?」
「だからあのアニメ!続き見た?って聞いてるんだけど」
「あー、うん、まだ。」
申し訳なさそうにはにかむ、私の彼氏
もう、何年目だろうか
何度目だろうか
なかなか帰らない返事を待つのは
聞いていないかと聞けば
聞いてた、考えてる
聞いてたかと返事を待てば
意識が飛んでた
これじゃあ、私は本当に愛されてるのかわからない…
不安がつのる
それでも、何度も喧嘩してここまで来たんだから…
そう言い聞かせて私は押し殺す
言いたい言葉を
“コロン”
「あっ」
「まりあ?どーしたの?」
「ううん、なんか落ちた音がしただけ」
「?何も落ちてないよ?」
「空耳かな、えへへ」
苦笑いを浮かべながら、ぼんやりと
また
ナニカが落ちた気がした
コロン…と
数日後、喧嘩をした。
私は抑えきれず大泣きして、怒鳴りつけてしまった
彼を傷つけてしまった。
抑えなきゃ
我慢しなきゃ
“コロン…コロン”
また、落ちる音がした
その瞬間、真っ暗な水の中に落とされた感覚に襲われる
冷たく、何も見えない深海に…
すぐに元に戻る
「あ、れ?」
胸の痛みが収まった。
涙も止まった。
先程まで泣いていたのが嘘のように
そして
最愛の人だった彼の言葉を聞いても
前のように心が動かなくなった
そうか。
私はようやく気づいた。
落ちていたのは私の
感情だったのだ…と
なくなっていく感情と
あと、どれだけ私でいられるのだろうと
今日も音を聞きながら考える
“コロン…”
…End…
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