桜月翠恋の少女残酷短編集

桜月 翠恋

道化のお話

第1話 延命と……







__鳴り響く電子音、頭に響くノイズ


「…__……」


何か言わなくちゃ、わかってるのに声が出ない


君の声に走るノイズ 君の声 顔 手 何もかもにノイズが走る


いやだ 嫌だ嫌だ嫌だ


君を失いたくない 



「っ…__!」


君の名前にまでノイズが走る 行かないで 消えないで 死なないで



「__……_!!」



背を向ける君に手を伸ばす 届かなくても構わない 私は君が_……


「大好きだよ…✱✱✱。」


振り返った君の声…泣きそうな声 泣きそうな顔ではにかむ君


あぁ……そうか これは夢なんだ


「✱✱✱、お出で」


両手を広げ 私を呼ぶ君 私はすぐさま貴方に抱きつく



「❈❈❈くん、❈❈❈くんっ」



貴方の香りが胸いっぱいに広がる 優しい君の手


ずっと探してた君の優しい優しい手


「✱✱✱…」


優しく私を呼ぶ声 


その声にもう ノイズなんてかかっていなくて…


やっと会えた 愛しい人



「泣かないで」


「泣いてない」



泣いてるよ ほら…と目元を指で撫でられれば 恥ずかしくなり目を背ける


「ねぇ ✱✱✱」


「なに?」



「僕は君が好きだよ」


「私も、❈❈❈くんがすき」


そう言えば君は悲しそうに笑った


「行かなきゃ」


「嫌だ」


君が 行ってしまう そんなのイヤ 嫌だ


「大丈夫…」


そんな保証なんてないじゃない 嫌だイヤ


「イヤ お願い 行かないで」


困ったようにはにかむ なんで? 君はワタシが嫌い……?


「君は消えないよ」


「消えてしまうのは貴方でしょう?」


私の手の届かない所に行ってしまう そんなのイヤ 


私は君の服を必死に掴む


「ごめんね」


その御免は…ドウイウ意味?


「❈❈❈く ん」


「大丈夫だからゆっくりお眠り」


「イヤ 寝たくない」


君に撫でられれば意識が朦朧とする


「イヤぁ ❈❈❈く イヤ……」


それでもなお、君は私を撫でる


「大丈夫…目が覚めればきっと」


頭に映る不可思議なビジョンに私は首を横に振る


「行かないで…」


「大丈夫 僕はそばにいるから」


優しい君の声 泣きそうな 辛そうな声


「寂しい よ ❈❈❈くん、も?」


小さく頷いた君を見れば安心してしまって


「わかった ❈❈❈くん おやすみなさい…」



「おやすみ ✱✱✱」



私の意識は暗い暗い闇に溶けてっていった














































___電子音の波の中君を見つけた なんて声をかければいいのかわからず そっと背を向ける 


「__!」


ノイズだらけの君の声に僕は振り返る


「大好きだよ…✱✱✱」


顔を見せて そう声をかけるだけで嬉しそうに君が微笑んだ



抱きしめれば消えてしまいそうなほど細くて 僕は君を強く抱きしめた


君に悟られぬように 君が安らかに眠れるように 僕は寂しさを見せぬように抱きしめた


「消えないで」


愛おしい君のお願い 


そう言えば✱✱✱は昔から素直じゃなかったっけ 寂しくてもなかなか言わなくて 泣いてしまって…


でも……


「君は消えないよ」


僕にはこんなことしか言えなくて


「消えるのは貴方の方でしょう?」


あぁ 君の悲しそうな声苦しくなってしまって 何も言えなくなる


「ごめんね」


いつか君と約束したね 君を守るって 守れなくなってごめんね 君とは沢山約束したね


ずっとずっと先になるだろう結婚の話 行きたいところ 一緒に暮らせたらしたいこと


「❈❈❈く ん」


悲しげに僕の名前を呼ぶ君 わかってるから 寂しいんだよね 大丈夫 ずっとそばにいるから


「ゆっくり お眠り」


君をなだめてゆっくりゆっくり眠りに誘う 


「寂しい よ ❈❈❈くん も?」


当たり前だよ 君がいないと寂しい 僕だって 離れたくない


答える代わりに頷くと、君は心底安心したように柔らかい笑みを浮かべ眠りについた



「お休み ✱✱✱」



ゆっくりと意識を手放す君をずっと僕は抱きしめていた



愛してる……

























































____いつも通りの朝 ふかふかのベットの上 君はいない



終わってしまった 会えない 君がいない いない 



手に何かが触れる 指輪だった 君とお揃いの指輪 2つが手に触れていた


お互いの誕生石をつけた指輪……


ダイヤモンドとトルマリン…


「嘘つきだね」


そっとトルマリンの指輪をはめれば何故か涙が止まらなくて


覚悟していたことだから わかりきってたことだから 余計に涙がとまらなかった



「大好きだよ」 


君の声が聞こえた気がしてそっとそちらを向けば君が作ったお揃いのぬいぐるみ二体…君の色が倒れていた



「ねぇ、なんでおいてったのさ…」


涙が止まらない 君が好きだった 愛してる 今でも好きだ


君の声が 笑顔が 全てが 好きだ


少し紅く染まってるダイヤモンドの指輪を握りしめ 空を見上げる



「僕は、君が好きだよ…✱✱✱」



もっと早く君に会っていれば結末は変わってましたか?



僕は窓の外を見つめた























































____





『死にたくないよ…❈❈❈く、ん』


『大丈夫 ずっと僕はそばにいるから!』


『❈❈❈く ん  大好き』




『残念ながら…✱✱✱さんは…』


『もう 目を覚まさないとしてもそばにいたいんです』



『わかりました。できることはします』




『✱✱✱ 約束したからさ 死んでしまうまで 死んでからも一緒だから ね 』









『僕が早く君のところに行ってれば……』






































































_______規則正しい電子音の中君はまだ眠り続けている


でも もう、君は長くないらしい


大丈夫 一緒だから……



僕は彼女を抱きしめ、病室を飛び出す




君の好きな海で 君と 僕は…_____


































































「待たせてごめんね さみしかったよね」












































「❈❈❈くん!」
























































延命と自殺……end?

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