堕天の翼vs破天のおバカ
澄岡京樹
堕天衝動
堕天の翼vs破天のおバカ
「オヘヘ、フライパンまみれだ〜〜」
「先生! どうにかなりませんか!?」
「ダメですねこれは。
薬物世紀3000年。人々は『
しかし、堕天を経た上で新たな力を手に入れる者も存在していた。その者たちの総称は
世界は、堕天使の手によって過剰摂取の闇に呑まれつつあった——。
◇
場末のスナック〈イタ・ミドメ〉には今、一般市民の他に、
「クソッ、許せねェ……許せねェよクソッ! クソッ、許せねェ……許せねェよクソッ! クソッ、」
「隊長ヤベェ! アッシュのやつ、堕天しかかってる! 同じことを自覚なしに繰り返し喋ってるぜ!」
「……許せねェ……クソッ……許せねェよクソッ……クソッ……」
メンバーの悲痛な叫びに、隊長であるマグナムは慈悲の一撃を与えた。
「
マグナムの
——これが現実。レジスタンスたちも既に限界だったのだ。マグナムの義指とて予備は有限。そう何度も慈悲の一撃を使用することはできない状態であった。
そしてそれはそのまま不安に繋がり、堕天要因増幅という結果に陥らせた。——そう、裏切りである。
「ヘッ、へへ……オイラはもう限界だ! いっそこのまま堕天使になっちまった方が楽になれらァ!」
「あ!? 何言ってやがるルシフェル! お前そんな、お前そんなやめろそんな! やめろそんな!」
——既に堕天は連鎖していた。マグナムはレジスタンスが崩壊していた事実に今気がついた。だがもう遅い、そう、本来ならば——
「オッ! おけけけけけけけけけけ…………!!!!!」
「ぴょぴょぴょぴょぴょぴょ!!!!!!」
「ぼるんぼるんぼるん————ッ!!!!!」
襲いかかる堕天レジスタンスたち。マグナムは血涙を流さんばかりの形相でアサルトライフルを構えた。そう、堕天してしまうと鎮静剤は効かないのだ。
「クッ、許せお前ら————……!」
その時である!
「おれバカだからわかんねえけどヨ——」
マグナムの前に金髪の青年が立った!
青年は両の拳を構え、臨戦態勢に入っている。だが堕天使は引くほど強いため、普通に殴り合っても勝てない。ゆえにマグナムは思わず青年に叫んだ。青年が言葉の続きを話していたが、それ以上の声量でマグナムは叫んだ!
「バカ野郎! 死にたくなけりゃ離れろ!!」
——だが。
——青年は。勝利した。
「「「ぐがあああああ!!!???」」」
青年の拳ラッシュによって吹き飛ばされる堕天使たち。その光景にマグナムは唖然とした。
「あり得ねえ……ただの人間が単独で堕天使を倒すなんて——」
その認識はなにもマグナムだけの感覚ではない。その場にいた市民、その全てが現状を「あり得ざる光景」と捉えていた。だが、青年はそのようなこと歯牙にも掛けない様子で口を開いた。
「だから言ったじゃんよオッさん。おれバカだからわかんねえけどヨ——先に当てれば勝てんだよ多分なァー」
「!?」
マグナムは最早何も言えなかった。青年が全くもって理屈じゃなかったからだ。
先に当てれば勝てるというわけでもない。堕天使相手にそれはない。そのはずだったのだ。
「——いや、もしや……」
しかしマグナムは、一つある仮説が胸に浮かんだ。
——そう、『バカにつける薬はない』だ。
はるか古の時代、とある東の国でまことしやかにささやかれていた
バカには薬——いや、正確にはそのマイナス面、つまりは毒を無力化する能力があったのではないか? あらゆるマイナス要因……堕天要因を無効化することができるのではないか? マグナムはそのように考える内、いつしか絶望の感情が薄れていくのを感じていた。——気づけば、青年に声をかけていた。
「アンタ、名前は?」
青年は感慨もなさげに答えた。
「おれか? おれはバッカ。バッカ・ノ・ヒトツオヴォエってんだ」
この時マグナムは確信した。この男こそが世界を変える希望であると。今、堕天使とバッカの大いなる戦いが始まろうとしていた……!
堕天の翼vs破天のおバカ、了。
堕天の翼vs破天のおバカ 澄岡京樹 @TapiokanotC
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