第11話 森の奥で

 プリークネスの森の奥深くで、みすぼらしい剣士が何者かに話しかけていた。


 「そろそろ、姿を現してくれないかな?この追いかけっこ終わりにしません。」


 辺りは静まり返っている。剣士の他に誰もいない様だった。


 「おや、又、移動するんですか?もう、止めましょうよ。いい加減無駄だって気づこうよ。」


 しかし、答えは返ってこない。


 「自分から出てきて欲しかったけど・・・仕方ありませんね。捕まえてしまいますか。」


 みすぼらしい剣士の姿が揺らぐとその姿を消した。



 「やあ!魔族のお嬢さん。」 


 「な!?・・・・なんだ貴様は!!」


 姿を現す魔族。そしてその後ろには、みすぼらしい剣士が居た。


 「お前はいったい何者だ!何故、あたしの居場所が解る。」 こいつ瞬間移動でもしたのか?でも何かがおかしい・・・


 「おぉ!やっと答えてくれましたね。そうですね、私の質問にも答えてくれるなら、私もお答えましょう!」 なるほど三つ目族ですか、特殊能力持ちですね。


 「・・・・・お前は本当に人間か・・・」


 「うん、人間ですよ。」 のつもりですが・・・。


 「どうやってあたしの居場所が解った。神族にさえ、居場所の特定させなかったのに。」


 「そんなの視えてるからですよ。」


 「・・・・・・貴様も瞬間移動できるのか・・・」


 「そんな事できる訳ないですよ・・・・もってことは、お嬢さんは瞬間移動的な事ができるって事で良いんですね。」


 「くっ!!お前はいったい何なんだ!!」


 「私の事なんてどうでも良いでしょ。今度は、こっちの質問にも答えて貰いましょうか。」


 「ふん!貴様などに答える義務は無い。」


 「まぁ、一つだけ答えて下さいよ。目的は何となく察してますんで・・・あなたのバックには、魔族の王が居るのですか?」


 「そんな事を聞いてどうする?」


 「興味本位で聞いてるだけですよ。」


  人間が魔族の王を知っている?・・・・こいつは、いったい何を企んでいるんだ・・・得体の知れないヤツだ・・・これ以上は関わらない方が得策か・・・かと言ってこいつに本当の事を話す必要はないのだが・・・・だが、これは願ってもないチャンスかもしれない。


 「あたしの主は、魔族の王では無いが、主が魔族の王の配下って事はあるだろう。・・・これ以上は、何も言えない。」


 「そうですか・・・・・まぁ、良いでしょう。ところで、これからどうしますか?戦いますか?それとも・・・そちらも何やら思惑が有りそうですし、できれば、このまま退散してくれると有り難いのですが。」


 「こちらも戦う意志は無い。」 目的は、ほぼ果たしているし、ここに残る意味は無い。


 「いやー助かるね。面倒な事に成らなくて良かった良かった。」


 「なら、あたしは、もう消えても構わないな?」


 「ええ、構いませんよ。でも決して戻らぬ様に・・・とんでもない事になってしまうかもしれませんよ。」


 「あぁ、わかった。」 とんでもない事?・・・・まぁ、良い。あいつが主を殺ってくれれば、あたしは解放される。


 その魔族は、自身の影の中に沈み、そのまま姿を消した。


 行きましたね、気配も完全に消えてるし、転移しましたか。三つ目の魔族で空間系の特殊能力・・・厄介な能力ですね。好戦的な娘じゃなくて良かった・・・戦ったらやられてましたね。

 さてと、アリスティディスに向かいますか。おもし・・・大変な事に成りそうですし。


 何時の間にか剣士の姿は無く、森はただ静まり返っていた。

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