第10話 戦いの終わり
プリークネスの森の上空で待機していた天使2人が異変に気付く。
「隊長!ランニングさんとの通信が途絶しました!おそらく気を失ったのかと。」
「あの馬鹿、油断しすぎだ!」
「人間なんかにやられるなんて、全く何をしているんですかね。」
「不味いな、人間はともかく、今、魔族に襲われると、ひとたまりもないぞ!すぐに救出に向かうぞ!」
「了解。」
天使は、仲間を救出すべく急降下するのであった。
天使を沈黙させた人間達だったが、大急ぎでその場を離れようとするただ中、新たに2人の天使が舞い降りてきた。その姿を見た人間達は、再び混乱に陥る。
「参りましたね、こんなに早く御登場しますか・・・さて、どうしたら良いものやら。」
「もう、戦う力なんて残ってないわよ・・・」
「まぁ、戦いになるのが決まった訳ではないから・・・・祈りましょ。」
「・・・祈りましょって・・・・祈ってどうにかなる問題じゃないでしょ!」
「だからといって、何も出来ないでしょ、大人しく見守りましょ。」
動きを止めた天使の両脇に、2人の天使がゆっくりと降り立った。周辺を警戒しつつ停止した天使の両脇を抱え上げると、上空に飛び上がった。
「見逃してくれたの・・・・・?」
「助かったって事でいいんじゃね。」
天使は、上空高く舞い上がると高速で飛び去って行った。人間達は只々見守るしかなかった。
「人間共をあのままにして良かったのですか、隊長。」
「構わんさ、人間などほっとけ。今は、未確認の魔族を警戒すべき。ここから離れる事の方が先決。」
天使は、速やかに帰途についた。 人間達は、天使が戻るのを警戒しながら、撤退準備を進めていた。
「おい!そこの学生魔導士、こっちにヤバい状態の人が居る。回復魔法は使えないか?」
「わたしが行きます。」 シフォンは、向かおうとするが、よろめき倒れそうになる。
「シフォンサンハ、ヤスンデテクダサイ。ワタシ、イキマス。マダ、マリョクニ ヨユウアリマスシ。」
「シルクさん・・・お願いします。ありがとう。」
シルクは、重傷者の所に行き回復魔法を試みる。
「嬢ちゃん、こいつ助かるんか?」
「ダイジョウブデス。モウ、キズハ フサガリマシタ。アトハ、アンセイニ スルダケデス。」
「良かった!本当に有難うお嬢ちゃん。」
「イエイエ、ドウイタマシテ。」
商人の馬車の積荷を降ろし重傷者から順に乗せて審判の門へと向かわせた。
「向こうに着いたら、大至急、応援を呼んでくれ、うちの馬車だけでは全員、運べないからな。」
「わかった!すぐに応援を連れて戻って来るからな!」
慌ただしい周りを尻目にシフォン達は、腰を下ろし休んでいた。
「私達は、外傷も無いし・・・又、一番最後になるみたいですね。」
「そうですね、怪我人が先なのは、当然ですからね。」
「・・・みんな、死ななくてよかった・・・・」
「でも、シフォンさん!凄いです!あの天使を倒してしまうんですもの。」
「あれは、倒したと言えるのでしょうか・・・・」 シフォンは、何か気づいたのか、辺りをキョロキョロ見渡した。
「そう言えば、あの剣士の姿が見当たらない・・・何処に行ったの・・・・」
「確かに見当たらないですね。」
「何か、ちゃっかりしてそうだったから、怪我人と一緒に馬車に乗り込んだんじゃねーの。」
「そうなのかしら?」
「あの訳のわからない男の事なんてほっときましょうよ。」
「・・・・色々と聞きたい事があったのだけど・・・」 審判の門で捕まえて問いただせば良いか・・・それにしてもあの男、何者なの。マジックショットの事といい、生きていた時代がなんちゃら言うし・・・それにあの覇気も活力もまるでない癖に妙な動きをするし・・・・おまけに死んだ目をしていたし。
暫くすると、何台かの馬車が駆けつけると、速やかに残っていた生徒全員と商人達を馬車に乗せると審判の門に向かった。
審判の門に着いたシフォンは、あのみすぼらしい剣士を捜したのだが、その姿を見つける事が出来なかった。
怪我の無かった生徒達は、簡単な診断を受けるとそのまま家路に着く事になったのであった。
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