第9話 魔力弾
みすぼらしい剣士は、ゆっくり歩いてシフォン達のそばにまでやってきた。
「これは・・・死屍累々ってヤツですね。」
「あなたは、最初にやられた・・・・しょっぼい剣士・・・」
「・・・しょっぼい剣士ってちょっと酷くね・・まぁ、事実だから別に構わないけど。しかし・・・戻って来たは良いけれど・・・・不味くね。」
「あなた、何で戻ってきたの。無事だったらそのまま逃げていれば、あなただけでも助かったのに・・・」
「いやなに、凄い物を見せてくれたんで、思わず出てきてしまいました。あれが、キョーチョー魔法ってヤツですか?始めて観ましたよ。うん、うん、私の『生きていた時代』には無かった魔法の概念ですね、興味深いですね。」
・・・この人、何を言っているの・・・ふざけているの・・・
「ゆっくりお話しをしている場合では、ありませんでしたね。傭兵の方々も、もう幾らも持ちそうにもなさそうですし・・・・で、お嬢ちゃんまだ、戦う意志は残ってますか?」
「あなたも見ていたのでしょ、あの魔法が防がれた時点で、わたし達には、もう何も出来やしないわ!」
「・・・そっか・・・・でも私はそうは思いませんけどね。」
「・・・じゃぁ、あなたがあの天使を倒せるとでも言うんですか!」
「・・・・私が?いやいやいや、私がなんとか出来る訳ありませんよ!!なんとかするのは、お嬢ちゃん君だよ。」
やっぱりこの人、どこかおかしい・・・特に頭の方が・・・
「仕方ありませんね。もう、あきらめてしまわれている様なので私は消えますか・・・折角、良い物を見せてもらったのでお礼でもと思ったのですが・・・・このまま座して死を待つのも悪い選択ではないとは思いますが・・・ここは、だまされたと思って、私の言う通りやってはみませんか?ダメ元ですよダメ元。何もしないで死ぬよりましだと思いますよ。」
「今のわたしに何が出来るって言うですか!」
「簡単、簡単。アレをどうにかするには・・・魔力弾(マジックショット)で充分ですよ。」
「マジックショット??何を言ってるんですか、そんなの牽制とか威嚇にしか使えない代物じゃないですか!」
「そうか?私の古い知り合いの魔導士曰く、魔力弾(マジックショット)は、最強の魔法の一角だと言ってたぞ!まぁ、今の時代ではそんな扱いだわな・・・兎に角やるのかやらないのか早く決めないと終わってしまいますよ。」
シフォンは少し考えると。
「・・・わかったわ・・・やれば、いいんでしょ、やれば・・・」
「うむ、では手短に説明する。ただ、魔力を打ち出すのでは駄目です。魔力を濃密に濃縮したモノを放出するだけですよ。」
「魔力を濃密に濃縮する?そんな事して何に・・・」
「ツベコベ言わずサッサとやりましょ。」
シフォンは魔力の濃縮を試みる。 なかなか上手くいかないわね。でも何となく解ってきた様な・・・ 大きめの魔力の塊が姿を現す。
「うーむ、大きすぎますね。濃縮ですよ濃縮。もっと小さくしないと・・・やっぱりいきなしは無理がありましたか・・・・」
言いたいことばっかし言って・・・何なのあの人は。
「仕方ありません。ちょっとだけアドバイスしましょ。その魔導士曰く、上手くいかない場合は、魔力に流れの様なモノをイメージすると良いと言った様な言わなかった様な。」
「・・・言ったか言わなかったかハッキリしなさいよ!」
「あっ!早々、こんな事も言ってた様な・・・渦を巻くイメージだとか・・個人差があるみたいな事も・・・」
流れ・・・渦を巻く・・・今は集中するだけ。
「おお・・・マジか・・・」 ちょっとアドバイスしただけで、もう形になりかけてやがる・・・これだから天才ってヤツはよー・・・
シフォンの魔力はみるみるうちに凝縮して行き、拳ぐらいの大きさへと変わっていった。
初めてでコレですか・・・まだまだですが、アレを何とかするには充分かな・・・
「それをそのまま維持して下さいね。そいつを確実に当てたいんで、あの白いのの動きを止めて来ますんで、止まったらぶちかましちゃってくださいな。」
「あなたにそんな事できるんですか!」
「んにゃ、出来る訳ないでしょーが。」 普通にやったらね。
みすぼらしい剣士は傭兵達の加勢に行った。
これ、維持するのも結構、キツイ・・・早くして・・・
天使は傭兵達をもて遊んでいた。
「もう時間なんで終わりにしよっかなっと。」
「クソが・・・」
傭兵達が最後の抵抗するさなか、みすぼらしい剣士も参戦した。
「なんだその雑魚はっと。」
「それはないでしょ、最初に殴っといて。酷いよ。」
「だったらもう一度消えなっと。」 再び天使の拳がみすぼらしい剣士を捉えようとした。
「危ないな~当たったら痛いじゃないですか。」
「なぁ!?」 かわされた?ありえないなっと・・・
「まあまあ、そんなにいきり立たないで、話し合いしましょ、話し合い。」
「今度こそ消えなっと。」 もう一度、天使の拳が振り降ろされる。
その拳は、みすぼらしい剣士をすり抜けるかの様に空振りをした。
「ぼーりょく反対!ここは話し合いで解決しましょうよ。」
こいつ何かしているのかよっと。 天使は、思考を巡らすと共にほんの一瞬、動きを停止しさせてしまう。
「シフォンさん、動きが止まりましたわ!」
「こんなモノで何とか出来るとは思えないけど・・・・いっけーーー!!」
シフォンは、天使にめがけて魔力弾(マジックショット)を放った。天使は、みすぼらしい剣士に気を取られていた為、意図せず不意打ちの形になり、対応が遅れた。
「そんなモノがこのエンジェルコートに効く訳な・・・・・・」
見事に魔力弾は天使に命中し轟音が響き渡った。するとみすぼらしい剣士が叫ぶ。
「撤収!撤収!まだ自分で動ける者は、すぐにここから離れるんだ、余力のある者は、動けない者を運ぶのを手伝うんだ。」
その一方、シフォン達は、呆然としていた。
「シフォンさん・・・これって、どうなっているんですか?」
「・・わ・から・ない・・何がどうなっているのか・・・さっぱり・・・」
そこには、天使が膝をついて沈黙する姿があった。
「はいそこ!呆けてないで撤収、撤収。早くしないと次がきてしまいますよ。」
「あなた、アレはどう言う事なの?」 天使を指さす。
「ん!?見ての通りですけど・・・何か?」
「だ・か・ら!!どうして天使が動かなくなっているのか聞いてるのよ!」
「やれやれ、今は、そんな事を説明している場合じゃないんだけど・・・・簡単に説明するならば・・・外装は無事でも中身は別って事ですよ。」
「・・・中身は別・・・・何を言っているの・・・」 意味が解らない。
「・・・要は、天使には中身が居ると言う事です・・・・・ですが、無駄話している場合では無くなった様です。」
みすぼらしい剣士は、天を見上げた。シフォン達も空を見上げると、戦慄が走る。
そこには、更に2体の天使が舞い降りてきたのである。
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