第6話 プリークネスの森

プリークネスの森では、学院の生徒達が、魔獣討伐の卒業試験が始まっていた。


 今は、武術科の班の一つが魔獣討伐を始めていた。その様子をシフォン達魔導科班は、眺めていた。


 「わたし達は、一番最後ですか・・・」


 「武術科は、時間がかかるのだから、俺らが先にやらせてくれればいいのにな・・・」


 「仕方ありません、ゆっくり待ちましょう。」



 そこにアカツキの丘方面から旅商人の馬車がやってきた。少しだけ離れた場所に馬車を止めると、一人の男が教師の所に歩いて行った。


 「こんにちわ、先生。」


 「おや、ブライアン商会の・・・」


 「休憩がてら見学させて貰って良いですか?」


 「構いませんけど、サボってて良いんですかい急ぎの仕事じゃないんですか?」


 「ハハハ、休憩ですから、休憩。」


 「見ていて楽しいモノではないと思うんだけど・・・」


 「そんなこと無いですよ、学生さん達が頑張ってる姿を見るだけで、励みになるんですよ。」


 「そんなもんですかねぇ?」


 「そんなもんですよ、では、皆を呼んでくるんで、宜しくお願いします。」


 男は、馬車に戻って行くと、仲間を呼んだ。すると、数名の人達が馬車を降りてきた。その中には、みすぼらしい剣士も居たのであった。



 降りてきた、みすぼらしい剣士は、しばらく天を仰いでいた。



 1、2、3・・・厄介な事にならなければ良いのだが・・・・まぁ、ヤバくなったら、早々に退場すればいっか・・・



 「兄さんもボーとしてないで、こっちこっち!」


 「今行くって。」


 みすぼらしい剣士も商人達と共に、魔獣討伐の見学する事になったのであった。





 アリスティディス王国北側の山脈を飛翔する3つの物体があった。


 その物体は、白銀の体に2つの翼を持ち、装飾はなく、スッキリとした形状をしていた。人々は、そのモノを天使と呼んだ。



 天使達は、山脈を迂回しつつ南下をしていた。



 「ランニング、結界に近づきすぎだぞ!もっと離れろ!」


 「忌々しい結界だなっと。」


 「いちいち、回り込まないとならないと面倒くさいですね。」


 「魔族共は、なんでこんな所をうろついてるんだなっと。」


 「おそらく、ドラゴニアを狙っているんだろーよ。」


 すると、ファンファンと警戒音が鳴り始めた。



 「ステイジー隊長!魔族の反応来ました。」


 「わかってる、位置の特定をしろ!」


 「了解です。・・・・・ドラゴニア南に広がる森周辺です。」


 「来た来た来たっと!もっと詳しい位置情報くれっと。」


 「ここからでは、これ以上は無理です、もっと近づかないと・・・」


 「警戒態勢取りつつ近づくぞ!」


 3人は、更に南下しプリークネスの森を目視できる位置までやってきた。


 「隊長!魔族の反応とは別に人間の反応を複数確認・・・・その数30.」


 「魔族の他に人間も居るのかよっと。」(これは、面白くなってきたなっと。)


 「肝心な魔族の反応は、どうなっている!」


 「それが、反応はあるんですが・・・特定が出来ないんです。」


 「チッ!隠れ潜んでるか・・・反応はするが、特定することができないって訳か。」


 「隊長、どうしますか?」


 「特定が出来ない以上これ以上の接近は、危険かもしれんな・・・しかし・・・魔族は確認しときたいが・・・・・」


 「どうでしょうっと、俺が威力偵察に行ってきますよっと。」


 「威力偵察?」


 「あの人間共を襲撃してきますよっと、そうすれば、潜んでる魔族を炙り出せるかもしれませんよっと。」


 「それだったら、私が行きます!」


 「プライム、おめぇは、索敵だけしてろよっと。」 こんなおいしい役、譲れるかよっと。


 「・・・・いや、ここは、様子見だ。しばらく待機する。何らかの動きが無ければ、そのまま帰還する!」


  何言ってるんだよっと、こんなチャンス逃してたまるかよっと。


 「了解です。」 「了解っと。」


  やったもの勝ちだよっと、徐々に高度を落としてっと、頃合いをみてアタックっと!




 天使達は、遥か上空、プリークネスの森を視界に収められる位置に待機した。しばらくすると、一番後ろに位置した天使が高度を落とし始めた。


 「ランニングさん!高度が下がってますよ!!早く戻りな・・・」


 そう声を掛けようとした瞬間、高度を一気に下げ、プリークネスの森に一直線に向かった。



 「ヒャホォォォイっと!!威力偵察にいってきまーすっと!」



 「ちょ!待ちなさい!!私、追います!」


 天使の一体が追おうとした天使を制止した。


 「待て!プライム。我々は、待機だ!」


 「あんな勝手を許して良いんですか!」


 「構わん行かせてやれ・・・・まぁ、これで魔族の出方がわかるやもしれん。」


 「しかし、隊長・・・もし、強力な魔族が潜んでいたら、只じゃすみませんよ。」


 「それはそれでしょうがない、技術班には悪いがな・・・魔族の発見を優先する。それに魔族が出てくるとは限らないからな。」


  それって、捨て駒って事よね。ランニングさん・・かわいそプークスクス


 プリークネスの森へと高速で向かう天使。



 「およっと、追って来ないし、通信も来ないっと。・・・これは、お許しが出たって事で良いのかなっと。」

 誰が出世をあきらめてるって、俺は、いずれ主に取って代わるモノだよっと。その為に実績を重ねるんだよっと。それにこの新型の性能テストにも、もってこいてなもんよっと。


 「見えたっと!人間共、じっくりといたぶってやるっと!」



 天使がプリークネスの森へと舞い降りるのだった。

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