第4話 みすぼらしい剣士
ルースレス領サンカレン。そこから、旅商人の一団(馬車が3台)がドラゴニア(アリスティディス王国)に向かって出発していた。
その道中、トボトボと歩いている男を見つけた。
その男は、一本の剥き身の剣を携え、シンプルな麻地の服上下を着た、黒髪、黒い瞳で死んだ目をしている、みすぼらしい剣士?だった。
先頭を行く馬車が止まり、その男に声を掛けた。
「兄さん!あんた、ドラゴニアに帰る途中なんだろ、どうだ、乗ってかないか?」
「・・・ただなら・・・」
「残念ながら、こっちも商売なんでもって、無料って訳には、いかないんだ。兄さん、見たところ持ち合わせも少なそうだから、銅貨1枚で良いぜ。相場より格安だぜ、どうだい?」
「銅貨1枚ね・・・まぁ、いっか・・・お世話になるか。」
「おう!商談成立だ、ついでに俺の話し相手になってくれや!」
みすぼらしい剣士は、馬車を操る男に銅貨1枚を渡し、隣に座った。
「馬車ならドラゴニアまで半日かからない距離だ、ヨロシクな!」
「あんたの所は、人も運ぶのか?」
「場合によってはな。積荷に余裕がある時だけだけどな。兄さんは、付いてるぜ、荷台には、余裕がなかったけれど、丁度いい話し相手が歩いていたんで声を掛けさして貰ったぜ。」
「そうか・・・」
「本当なら銅貨3枚は貰うところだぞ~」
「ところで、何故、ドラゴニアに 『帰る』途中だと思ったんだ、只の旅行者かもしれんだろ?」
「ん?黒髪、黒眼の人種はこの辺じゃドラゴニアにしか居ないだろ、もしかして、旅行者だったか?」
「いや、間違ってはいないな・・・ちょっと聞いてみただけだ。」
「しかし、兄さんは本当に運がいい!今日も、たしかドラゴニアの学生さんがプリークネスの森で魔獣討伐の試験をしてるはずだぜ、休憩がてら見学させてもらおうと思ってるんだ。」
「へ~それはまた、タイミングの良いことで・・・」
「学生さんの初々しい戦闘が見れると思うと、胸躍りますなぁ!何せ、うちで雇ってる傭兵、いや、冒険者なんだけどね、腕は立つんだけど、色々と、殺伐としていてね、学生さん達で癒されたいんだよ!」
「・・・癒される・・のか?・・・」
「そらそうよ、14、15歳の若い男女があれやこれやとするわけでしょ。(じゅるり)たまりませんわ~」
「なんだ、変態さんだったか。」
「ち・がーう!!若い果実を愛でるのが好きなだけだ!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「おっと、そろそろ丘越えだ、揺れるから気を付けるんだぞ。」
(話し変えやがった。)
馬車はアカツキの丘を登り終わると、そこにある大岩に差し掛かった。
みすぼらしい剣士は、その大岩を見つめ、何か思うところがある様で複雑な表情を浮かべていた。
「なんだ兄さん、あの大岩に思い出でもあるのかい?まぁ、このアカツキの丘は、伝説記(レジェンダリー)にも出てくる史跡でもあるからな、感慨深い物もある。」
「あぁ、昔、ちょっと嫌なことがあった所なんでね・・・」
「まぁ、人間、色々あるもんさぁ・・・・もう少しで、プリークネスの森だぞ~学生さん達、今行くぞ~。」
(まだ、言ってるよ。このおっさん。余程好きなんだな・・・)
馬車は、一路プリークネスの森へと向かう。
そこで、シフォン=クレアと、このみすぼらしい剣士と出会ってしまう。それは、運命なのか、はたまた、仕組まれたことなのか・・・
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