第3話 出発前

 校庭には、試験を受ける生徒達が集まっていた。


武術科生徒は、一班5名の3班。魔導科は、一班のみの5名であった。そして引率の教師4名。


 その中には、シフォン=クレアの姿もあった。


 まだ、出発するには早く、教師も生徒も雑談するなど、各々の時間を過ごしていた。


 その中、教師達の話しがもれ伝わってくる。


 「最近、プリークネスの森に魔族が出没するって言う噂があるのを知ってますか?」


 「只の噂ですよ!魔族は、遥か南の地カパネッレを占拠してから、まるで動く気配がないんですよ!こんな所までは来ないでしょう。」


 「しかしなぁ、旅商人達が見たって言うんだ。彼らが嘘をつくとは思えないだがなぁ・・・」


 「魔族もそうなんだけど、私は神族の方が問題だと思うんですよ。」


 「あぁ、それもそうですね、北方の国タビーが神族の庇護下に入ってから神族は、そこを拠点としている様ですし、地理的にも近いですからねぇ。」


 「まぁ、前の五日間の実地試験は、何事もなく終わってますし・・・問題ないでしょ!」


 そんな話しを横目にしていた、シフォンは思った。


 そう、数年前、突如として神族と魔族が地上に現れた・・・

それは、今まで伝説上の存在だった、神族と魔族を現実の存在と知らしめた・・・

だがそれによって、今まで御伽噺の様な扱いを受けてきた、伝説記(レジェンダリー)が歴史書としての価値を上げる結果になった。


 伝説記(レジェンダリー)、伝説の時代に書かれたとされる現存する最古の書物。

著者アーネスト=ヒストリー・・・とされているが、そもそも実在した人物かも不明。

現在、66篇が伝説記(レジェンダリー)として承認されている。未だ未発見の伝説記(レジェンダリー)が世界の何処かに眠っている・・・


 わたしは、純粋に世界を自分の目で見てまわりたい・・・と同時に伝説記(レジェンダリー)の発見の旅に出たいと・・・この想いを今日、試験が終わたら姉さまに打ち明けよう。



 そうこうしてると、一人の教師が号令をかける。


 「班ごと全員集合!!」


 生徒達は班ごとに整列すると。


 「全員揃っているな!そろそろ出発するぞ!」


 シフォンは、班のメンバーを確認する。

ユーワ(女)、シルク(女)、シチー(男)、ダイナ(男)の4人だ。

ただ単に近くに居たってことだけで組んだ5人だ。

仲良しグループと言う訳でもないが仲が悪い訳でもなく、いい意味で自然体と言う感じな班だ。


 「何度もやってる事だからって油断するなよ!お前ら!!」


 一同は、審判の門に向かうため学院正門を出ようとしたときである。

制服を着た金髪碧眼でスタイルの良い美少女がシフォンに近づいて来たのだった。


 「シフォンさん!これから最後の試験ですのね。」


 「ごきげんようコリーダさん。」


 「まぁ、あなたの事だから試験は、問題ありませんね。それはそうと、卒業前に明日もう一度、勝負よ!」


 その様子を見ている生徒達がヒソヒソと話をしている。


 「まーた、コリーダの奴、シフォンさんに絡んでるよ・・」

 「一度も勝ったことないのに・・・」

 「もう、諦めればいいのに・・・」

 「ヤレヤレデスー。」


 「あなたたち!!聴こえてますわよ!」

 生徒達はソッポ向いてその場をやり過ごす。


 「コリーダさん、明日は用事がありますので・・・又、今度と言う事で・・・」


 「あら、逃げますの?」


 シフォンはため息を付くと・・・

「それでは、コリーダさんの勝ちってことで宜しいでしょうか?」


「ふ、不戦勝ですか、それも悪くありませんけど、やはり、直接、叩き潰さないと気が済みませ・・」

とその時、一人の教師が割って入ってきた。


 「こらぁ!コリーダ=セルシス!! 又、お前か。これから試験なんだぞ!邪魔をするんじゃない!」


 「あら、先生。邪魔なんかしてませんわ、これから試験を受ける学友に激励しに来ただけですわ。」(まだ、移動中なんだから、構わないでしょ。)


 「わかったわかった!とにかく、君は、家に帰れ、授業はないんだから。」


 「では、皆さんごきげんよう。」コリーダは、すごすごと帰っていった。


 コリーダさんは相変わらずですね。何かとちょっかいを出してくる・・・嫌いではありませんけどね・・・わたしに真正面からぶつかってくるのは彼女だけだったから・・・


 一同は、審判の門へと向かうのだった。




 審判の門。アリスティディス王国南にある関所である。


 審判の門、その名が示す通り龍の結界による裁きが下る場所である。


 中に入ると、入出国者は、一つの通路を通る事になる。その通路は、天井がぽっかりと開いていて、大きな吹き抜けとなっている通路で地面には無数の焼け焦げた跡が残っていた。

龍の結界によって、外敵と判断されたものに龍の鉄槌が下される。(落雷が降り注ぐ)

外敵に寄生されたものにまで、効果が及ぶ、優れものである。


 審判の門を出ると、すぐにプリークネスの森が広がる。小型の魔獣が生息するが、危険度はさほど高くもない場所だ。


 プリークネスの森を抜けると、アカツキの丘そしてグロースターク平原へと続く。その先には、ルースレス領サンカレンにたどり着く。サンカレンは、大図書館で有名な街である。



 学院の生徒達は、審判の門に着いていた。


 審判の門は、入出国する人々でにぎわっていた。通路を通りながら生徒達は、話をしていた。


 「俺、龍の鉄槌ってヤツを一度でいいから、直接、見たいんだよね。」


 「何言ってんの、何度も見てるでしょ。」


 「それは、外からカミナリが落ちているのを見ているだけで、見たとは言えないだよなぁ・・・だから、ここに来るたびに思うんだ、今ここで見たいんだと。いつも期待してるんだけどなぁ。」


 「・・・・あんたに落ちてしまえばいいのに・・・」


 「・・・酷い・・・」


 「あんたが、酷いこと言ってるからでしょ!」


 「ユーワさんとシチーくんは、本当に仲がよろしいんですね。」


 「シフォンさん!な、なにを言ってるですか、あんな奴と仲が良い訳ないですわ。」


 「こ、こいつとは、何でもねーし。」


 「・・・おふたりがお付き合いしているのは、皆、知っていますよ。」


 「えぇ!!ウソ・・・本当に?」


 「むしろ、何故、気づかれていないと思ったのでしょうか・・・」


 「そうだぞ、おまいら、隙あらばイチャ付きやがって!!爆発してしまえ!」


 「ウラヤマデス~」


 「い、いやそのなんだ・・・あ、あれだよあれ・・・」


 「はい!お付き合いしてました!これで宜しいでしょうか、皆様方。」


 「そ、そんなハッキリと・・・」


 「こういう事は、ハッキリとさせた方が、すっきりしますわ!」


 「ナレソメ キキタイデス~」


 「はい!告白されました!学院裏庭の大きな木の下で!」


 「だから、そんなハッキリと言わなくても・・・」


 「爆発しろ!爆発しろ!爆発しろ!爆発しろ!爆発しろ!」


 「ダイナクンノ ココロノ ヤミガガガ・・・」


 「皆さん、遅れてしまっています、急ぎましょう!」


 そんな日常的なやり取りをしつつ、審判の門を無事、通過するシフォン達であった。

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