第2話 アリスティディス王国

少女は自室の窓から外を眺めていた。そこへコンコンと扉を叩く音と共に一人の人物が勢い良く入ってきた。


 「入るわよ!シフォンちゃん。」


 「・・・もう入ってますよ。姉さま。ノックの意味がありませんよ。」


 「あら、ごめんなさいね。そんなことよりも、今日なんでしょ卒業試験。」


 「・・・姉さま、そんなことよりもじゃありません。わたしが返事をしてから部屋に入って下さい。確かに今日は、卒業試験の日ですけど、卒業試験とは、名ばかりの儀式のようなもです。意味がありません。」


 「まあ、それはそうなんだけど、でもこれで正式に学院卒業が決まるだもの。おめでたい日じゃない。これでクレア家三兄妹そろって宮廷魔導士になるのね。」


 シフォンは表情を曇らせると 「あ、うん、そ、そうですね・・・」


 「シフォンちゃん、浮かない顔しちゃってどうしちゃったの?」


 「姉さま・・・試験が終わったら聞いて欲しい話があるの・・・」


 「あら、今じゃダメなの?」


 シフォンはうなずくと 「えぇ、終わった後でいいです。」


 姉は何かを悟ったかのように 「わかったわ、試験後、聞かせてちょうだい。」


 その後、シフォンと姉はしばらく他愛のない話しをした。



 「じゃあ、シフォンちゃん、試験に遅れない様にね。なんだったら爺やに送ってもらったら?」


 「大丈夫です。歩いて行きますから・・・姉さま。」


 姉が部屋を後にすると、シフォンはサッと準備をすまし学院へと出発したのだった。






ここアリスティディス王国は山間にある小さな都市国家である。


このアリスティディス王国は、諸外国からは、別の名前で呼ばれいた。

龍に護らせし国『ドラゴニア』と。


建国の祖であるアリスティディスは、龍と7日7晩戦い打ち負かし、龍と盟約を結んだとされている。


 そして龍に強力な結界を張らせ国を覆わせた。

それに加えて周囲の険しい山々によって自然の要害と化しているのである。



 この国に入るには、二つ方法がある。

国の南にある審判の門と呼ばれる関所から入る正規ルートと山越えの裏ルートである。


 何故、裏ルートが存在するのか、それは、隣国であるルースレス王国が亜人の入国禁止しているからである。入国を許されるのは、奴隷としての亜人のみだからだ。



 アリスティディス王国は、亜人に対する偏見、差別がほとんどなく、奴隷制度もない、亜人の自由が保証されている数少ない国の一つである。

そのため、多くの亜人達がこの国を目指すのだが、正規ルートでの入国はほぼ不可能なため、裏ルートを選択するしかないのだが、その成功率は極めて低く、数多くの命が失われていると言う。



 アリスティディス王立学院は唯一の王立の学校である。

一般科、武術科、魔導科の三つの学科あり、修業課程は4年間、11歳で入学することができる。

生徒の大半は一般科に在籍(6割)武術科(3割)、魔導科(1割)が生徒の内訳である。


 卒業に際して武術科と魔導科には、実地試験も実施される。


 そして今日、最後の班の魔獣討伐の卒業試験日だった。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る