31話 手をつなぐっすよ。

「雨上がったねぇ」「だねぇ」スイとリコは空を見上げながら言う。


 僕達はカフェをでて、校門にいた。


 まだ曇り模様だったけれど、ところどころ晴れていて、青い空がのぞいている。


 琴音も同じように空を「晴れてるっすねぇ」と見上げていた。


 その横顔を見て僕はすこし、ときめいてしまう。かわいさの中に……ちょこっと、色っぽさがある。


 手を……つなぎたいな。そんなことを思ってしまう。そろそろと手を伸ばしてみる。何気なく、彼女の手を握ってみよう。


 ……視線を感じる。じー。スイがこちらを凝視していた。僕と目が合い、にんまりと笑みを見せる。うんうんと、うなずいてくる。


 「リコ、ちょっと」「ん?」スイはリコに何事かを耳打ちする。「んーいいあんだね」リコもにやにやとしはじめる。


「パイセン、お近づきの印に手つなぎましょ」スイはこちらに来て、手を僕の前に差し出す。軽くウィンクして


「へっ?」僕はあっけに取られる。


「そーそー。仲良く手をつないで帰りましょ」とリコも同調し、手を差し出してくる。


 琴音はその後ろでぽかんとその様子を見つめていた。少しして状況を理解したのか、慌てだして「わっ、私もつなぎたいっ!」とさけぶ。


 その琴音の言葉を聞いてスイとリコはにやり、と笑う。「「どうぞどうぞ」」と譲る。


 「えっ……あ、うん」と琴音は少し拍子抜けしていた。


「じゃあスイ、私達で手を繋いでかえろっかぁ」リコはスイに手を差し出す。


「お、いいね。夫婦水入らず的な感じ的な?」ぎゅ、とスイはその手を取り、繋ぎ「ほら、ことねっちもつなぎなよ」とうながす。



 なるほど、二人が繋ぐことで僕達も手を繋ぎやすくしてくれくれるのか、うまいなぁ。


「あ、うん」と琴音はうなずき「し、失礼するッス……」とおずおずと手を繋いだ。僕ではなくリコと。


 ………沈黙が流れる。僕は手を繋いだ仲良し三人組を眺めていた。ほのぼのとして良いけれど、さびしさも感じる。




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先輩、クリスマス予定空いてます? 〜可愛い後輩に聞かれてこれはフラグかと答えたら〜 金魚屋萌萌(紫音 萌) @tixyoroyamoe

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