30話 婚約ッスか!?


「にゃああああ〜!」突然の叫びがその空気を割る。驚いてそっちを見ると、琴音が恥ずかしさのあまり、ゴンゴンと机に頭をぶつけていた。


「お、おちついて」僕は彼女の肩を掴む。


「ごめ、ちょっとからかいすぎた……」「だね……ことねごめん」リコとスイの二人も驚いたようで体を離しこっちを見ていた。


「うぅ……先輩、私をひと思いにころしてくださいっス……」琴音は涙を流しながら僕の手をとり、自分の首に持っていく。


「そんな大げさな」といったが、気持ちはわからないでもなかった。もし自分が琴音の胸をもんでる姿を同級生に見られたら衝動的に死にたくもなる。


「大好きな先輩にころされるなら本望です……」僕の手を首にくっつける。


「ちょ、落ち着きなってことね……」スイはとめにはいろうとする。


「こんな恥ずかしい姿みられて、もうお嫁にいけない……」ぷるぷると震えながら涙をこぼす。


「大丈夫だって、本当にいなかったら私らがもらってやっから。ね、パイセン?」リコは琴音の肩に手を置き、慰める。


「あー、うん。結婚してあげるから」僕も琴音を落ち着かせるために、調子をあわせようと、両手で彼女の頬を包み込んでそう告げる。


「へ?」「は?」「にぇ?」リコ、スイ、琴音がそれぞれ変な声を上げる。全員ポカンと、口を開けている。


「ん? どうしたの……」急に時が止まったようになって僕は困惑する。琴音から手を離しきょろきょろと三人を


「……ぶっ」とスイが吹き出す。「あはははは」リコも大笑いし始めた。


「こ……こんやくッスか……? まだキスも、初夜もまだなのに……」よくわからないことを琴音は口走ってる。……顔は相変わらず真っ赤だけれど、涙は止まっているから、まあいいか。

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