24話 学校でデートするっスよ!

 僕はこれからの天気を調べることにした。校内で調べられる場所といえば……図書室かな。たしかネットに繋がってるパソコンがあったはず。


 そういえば、図書室は冬休みの間、改築工事をしていたはずだ。ホームルームのとき、工事が終わって今日から使えるようになりました、とか言ってた気がする。


 図書室の入り口には新しく自動のゲートが設置されていた。学生証をかざすと通れるシステムらしい。鞄を漁り学生証を探しつつ、周りを見回す。


「わ、広くなったっスね〜」僕の気持ちを代弁するかのように横から聞き慣れた声がした。そちらに目をやると琴音が立っていた。


「えっ、なんでいるの?」


「暇だしついてきたッス。それにもうちょっとセンパイと一緒にいたいですし〜」琴音はニコニコと笑顔で言う。


「……まあいいけれど」僕は学生証をゲートに通す。


「本でも借りるんです?」琴音もゲートを通りついてくる。


「いや、これからの天気を調べようと思って」


 情報検索コーナーも大きく様変わりしていた。前は大きな机にパソコンがたくさん並べられていただけだった。でも今はそれらに仕切りがついて箱型の個室のようになっていた。入り口にドアはないけれどネットカフェのBOX席みたいだな、と思う。中も広く、三人ぐらいまでなら余裕で入れるほどだった。


「へー。こんな場所できてるんすねぇ」


「椅子一つしかないから、本でも見てていいよ」


「嫌っス」琴音は軽く頬を膨らませる。


「嫌って……」僕は少し困る。


「こうすればいいッス」琴音は一つ隣の席から椅子を持ってきた。


「なるほどね」まあ、誰も使ってないから別にいいか。


 パソコンを立ち上げる。


「てか、スマホで調べりゃ良くないっス?」


「いやいや学校の中だから校則で禁止されてるでしょ」


「真面目なんすねぇ」


「一応ね。それに今は時間余ってるし」天気のサイトを検索し、雨雲レーダーを確認する。


「雨止みそうです?」


「うーん、だんだん強くなるみたい。あ、でも二時間後にはきれいに止むね」


「それなら良かったっす」


「うん。止むまで校内で待つかなぁ」


「じゃそれまで私とデートしましょうよ〜」とすりよってくる。


「にぇへへ……センパイと密室、二人きり……」琴音は僕の肩に頭を寄りかからせてだらしない笑顔を見せる。


「何も起こらないよ。そもそも密室じゃないし」


「え〜せめておっぱいぐらいもんでくださいよ〜」


「せめてのハードル高くない?」


「ほら前今度おっぱい揉むって言ってたじゃないッスか。今がその時っスよ!」


「いやいや絶対今じゃないって。学校の中だよ? 不純いせいなんちゃらになっちゃうって」


「いや、私は純粋にセンパイ好きっすから、不純じゃないッスよ!」


「多分そういう不純じゃないと思うけどな……」


「まあまあ、細かいことは気にせずおっぱいいきましょうよ」そう言いながら琴音は僕の腕をとり、抱きしめる。ふに、と柔らかい感触が伝わる。思わず体がこわばる。


 ……触ってみたいけれど流石に学校じゃなぁ、と踏みとどまる。


 「ん?」何か……視線を感じる。琴音じゃない。僕は目だけを動かしちらりと上をみやる。


 ――個室の仕切りの上、二つの顔が覗いていた。にまにまと、にやつきながら。

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