18話 おっぱい、好きッスか?


「大吉でますように〜!」琴音はがしゃがしゃとくじ棒の入った箱を振っていた。振り過ぎな気もする。それを横目にぼくもおみくじをひく。お、大吉だ。


「あ………」と彼女は少し涙目になっていた。


「どしたの」


「凶……引いちゃいました」


「ありゃ……」


「あ、でも恋愛運だけは良いっす」


「どれどれ」僕はのぞき込む。『待ち人:あらわれている。自分からいくべし』と書いてあった。たしかに他の運勢に比べたらいい方だ。


「センパイは……?」と僕のおみくじをのぞき込んできた。まずい、と隠そうとしたけれど間に合わない。


「あー、大吉!? ずるいスよ〜!」と僕の腕を掴んでブンブン振り回す。


「それやめい。ずるいって……どうしようもないよ」


「私にもその運わけてくださいよ〜」


「別にいいけど、どうやってわけるの?」


「わかんないっス!」琴音はあっけからんにいう。 


「これなら運吸収できるかも?」彼女は僕の腕を抱きかかえるようにする。ふにゅ、とやわらかい感触が肘に伝わってくる。


「お、何か吸収できてる気が?」更に強く抱きしめる。むにゅう、と感触が強くなる。あまり経験がない僕でもわかる、これは胸だ。


「……当たってる」


「ふぇ?」


「その、ことねの胸が……僕の腕に」指摘するのもなんだか恥ずかしい。


「あ……」かあっ、と琴音の顔が紅潮し、少しうつむく。しかし、抱き締める力を緩めたものの、離そうとしない。ふに、と柔らかな感触は続いたままだ。


「え、あの……だから胸当たってるって」僕は困惑しながら再度告げる。


「……」琴音はうつむいて黙ったままだ。


 ――少し、沈黙が流れる。気まずい。


「……センパイは、好きっすか?」蚊の鳴くような声で僕に聞いてくる。


「へっ?」


「その、わたしのおっ、おっぱいすっ、好きッスか……?」つっかえつっかえ、上目遣いで僕を見つめながらいう。顔もまっかっかだ。ふにふに、と押し付けてくる。


 困る。僕も男だ、興奮しないといえば嘘になる。しかも好きになりかけている相手からされればなおさら。


「……好きだよ」少し返答に迷ったけれど、素直に答える。


「そっすか……嬉しいッス……」きゅ、と僕の腕を抱きしめる。


「もっと、ちゃんと触ってもいいっスよ……」と上目遣いで僕を見つめてくる。瞳を少し潤ませ、すりすりと

身体を押し付ける。むくり、と本能が暴走を起こしかけ、心臓が高鳴る。


「いや周りの目もあるし……また今度でいいよ」心の中で必死に本能を抑え込み、答える。


 まだ今の状態は仲の良いカップル、で片付けられるけれど、揉んだりしたら流石に変態だ。しかも境内の中でなんて、神様激おこになってバチが当たっても文句は言えない。


「はっ! そうッスね……じゃあ今度で」琴音は我に返り、きょろきょろと周りを見回しながら抱いた腕を離した。


 今度……今度かぁ……嬉しいけれども素直に喜んでいいのだろうか。

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