17話 願い事何にしたんスか?

 そっと、賽銭を入れる。ちゃりん、と小さく音が聞こえる。


 静かに合掌し、目を閉じる。僕はこういうとき、願い事はしない。何も考えず、ただ心を無にする。いつもはそうだ。


 ……でも今回は一つだけ、願いを思い浮かべた。叶いますように……というよりはいつか叶えよう、と決意を込めて。


 三十秒程して目を開ける。一礼をし、本尊をあとにする。ことねも終わったようで、僕の後ろをついてきた。


「ことねは願い事したの?」


「そりゃもうたくさん!」ふふん、と自慢気な表情をする。


「どんなの?」


「たくさん甘いものを食べられますように!」


「ことねらしいね」


「スイーツをたくさん食べられますように!」


「ほぼかぶってない?」


「それにたくさん食べても太りませんようにって」


「んな無茶な……」


「あと、最後にセンパイと仲良くなれますようにって」


「それもう叶ってない?」


「え、えへへそうっスかね?」ちょこっとにやける。


「てか、今までことねは僕と仲良くないと思ってたんだーショックだなー」肩を落としわざとらしくため息をつく。


「いやそういうわけじゃないっスよ!! 好きに決まッてるっス!!」僕の腕にしがみつき首をぶんぶんとふる。


「あはは、ありがとう」


「センパイはなにを願ったッス?」


「ひみつ」


「えーズルいっすよ。教えてくださいよ〜!」軽く頬をふくらませる。


「……ことねと似たような願いだよ」


「え、食べまくりたい感じっスか?」


「さあてね。あ、おみくじあるから引く?」僕は話をはぐらかす。


「お、いいっスね!」とことねはあっさりとおみくじの方に興味を向けた。


 ……なんか申し訳ないから後で教えよう。

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