12話 センパイ、コクれたんすか?
「わ〜いつ見てもでっかいっスねえ」雷門を見上げながら琴音は呟く。
「たまにくるの?」
「確か三回目ぐらいッスかね? 食べ歩きしたい時たまにくるっス」
「そうだ、ことねさ……ことね」僕は彼女を呼び止める。
「ん?」
「ひとつ、謝っておきたいことがあって」
「え、何スか? あんまりお金持ってきてないとか? 別におごるッスよ」きょとんとした顔で琴音は答える。
「違うよ、お金はある……実は昨日、初詣に行ったんだ」
「あ、そうなんスね。ぼっちッス?」
「いや、気になってる人と、その妹で」
「ほー。よかったッスね!」琴音はなぜか少し嬉しそうにする。
「だから初詣じゃないんだ」
「確かに? まー私と一緒に行くのは今年初めてだから初詣って事でいんじゃないスか? 二度詣とか言いづらいですし」
「それに、昨日はぼっちって嘘ついてごめん」そういって頭を下げる。
「いやいや、別にいいっスよ〜今日来てくれたんですし。謝る必要なんて……あ、それなら許す代わりに一つ聞いていいっスか?」
「……何?」
「告白のセリフ、ちゃんと言えました?」
「うん、上手く言えたよ」
「それは良かったっす! 私が練習台になったおかげっすね!」どやっ、とことねは喜んだ。
「でも……」と僕言葉に詰まる。
「あ~いいっスいいッス! それ以上は言わなくていいッス!」慌てたように琴音は僕の腕を掴む。
「とりま、今日の初詣たのしみましょ! 食べたいものたくさんあるんスから!」そう言って僕の手を握り、ぐいぐいひっぱっていく。
「いたいって。てかお参りは?」
「腹が減ってはお参りできぬッスよセンパイ!」
「確かに? ……戦じゃないっけ」
「こまけえことはいいんスよ。あ、ほら揚まんじゅう食べに行きやしょ」
「はいはい、わかったよ」
そんなこんなで僕と琴音の初詣が始まった。
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