11話 あけおめっす!ぼっちセンパイ!


「あけおめっす!!」とても元気に琴音は挨拶してきた。


「あけおめ。いやにテンション高いね」


「そらもう新年スから」


「たしかに?」


「センパイは別に元気にならなくてもイイっすよ! いつも通りでイイっス」


「そうするよ。……あれ?」僕は違和感を覚え、琴音の顔を見つめる。


「何かついてます?」


「いや、いつもと雰囲気が違う気がして」


「ああ。よく気づいてくれました! おめかしして来たんすよ! 正月ですし?」よく見ると化粧をしているのがわかる。化粧には全然詳しくないけれど、目がいつもより大きくみえて、肌も明るくきれいになっている。


「なるほど。どうりでいつもより美人なわけだ」


「え、そうすか? 照れるッス」彼女は頬を赤らめる。


 電車に乗り、二人で並んで座る。浅草へは地元の駅から一時間前後で着く。


「ところで、なんで浅草寺なの?」地元にも有名な神社や寺はいくつかあった。


「決まってるじゃないっスか!」ふふん、とちょいドヤ顔で琴音は言う。「食べ物がいっぱい売ってるからっスよ!」


「なるほどね」そういやテレビの正月特番で浅草寺が写っていたな、と思い出す。露店が祭り規模で大量に出店していた記憶があった。


「なんでお参りしたあと食べ歩きしやしょ!」


「いいね。ああ、だから朝ごはんあんまり食べるなって言ってたのね」


 今朝、琴音から「おはっス! 朝めし少なめにしてほしいッス」とメッセージが来ていた。


「いや〜楽しみッスねぇ」と琴音は僕の肩に頭をよりかからせる。


「今日なんか近くない?」


「まーいいじゃないッスか、正月ですし。ぼっちで寂しかったっしょ?」


「……なんでも正月で片付けようとしてない?」


「それに私もぼっちで寂しかったんでちょっとぐらい甘えさせてくださいよ〜」とグリグリ頭を押し付けてくる。


「おすなって。まあ、邪魔にならない程度だったら甘えてもいいよ」そう返しながら、昨日ぼっちとごまかしたことに心が痛む。


 そうしてそこから他愛もない会話をしながら浅草寺に向かう。


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