第76話 試験結果を見に行きます!
昇進試験が終わって1週間が過ぎた。
そして私は祈るような思いで今目の前の掲示板を眺めていた。
とにかくまずは昇進してますように、昇進してますように!!祈りながらも恐怖でまったく掲示板を見れていない。
早く見ないと近衛隊の配属希望時間を過ぎてしまうのに……。もしこの時間を過ぎたら今年近衛隊に入る事は出来なくなってしまう。
それなのに私は掲示板を見る為に目を開けて、また祈る為に目を瞑るを繰り返していた。
「あ!俺昇進してるし、近衛隊の入隊資格圏内に入ってるよ」
ポソリと隣で呟いたライズについ顔を見上げてしまう。
私はライズの希望は知らないが、それでも圏内に入れたと言うことはとてもめでたい事で、お祝いせずにはいられなかった。
「え!ライズおめでとう!!」
「え?クレアは?」
「わーまだ言わないで!まだ見てないの!!」
「いや、そんなに祈らなくても大丈夫だよ。ほらっ」
つい、ライズの指差す方を見てしまう。
すぐに気がついた私は叫んだ。
「いや見たくないわ!!」
なんとか直前で目を瞑り、今見る事を回避した。
よかったと、ホッとため息をついているというのに、こちらに近づいてくる男がまた余計な事を言ったのだった。
「あーあ。なんだクレアも昇進してるし、近衛隊の入隊資格圏内にもちゃんと入ってるじゃないか」
その声に目を見開き、すぐさま相手を確認すると、思った通りヨシュアが面白くなさそうな顔をしていた。
その顔にさらにイラッとした私は、ヨシュアの服を掴むとそのままヨシュアを揺らし、文句を言った。
「あんた!私が今から見ようって大事な時になのに、何で余計な事を先に言ってくれちゃってるのよ!!?今は空気を読んでよね!!」
「は、はぁ?な、な、何言って、やがる……お、おい!これ、以上揺らされたら……吐く……!」
「まあまあクレア落ち着いて」
ヨシュアがもう限界と口を抑えたそのとき、ライズは私の手をそっと握った。
そのことにドキッとしてしまった私はつい手を離してしまい、ヨシュアがそのまま地面に倒れ込む音がした。
「いってぇ!!」
そう叫ぶヨシュアの事は気にも止めず、私は優しく見つめるエメラルドの瞳に目を奪われた。
「あのままだったら、クレアは一生結果を見る事ができなかっただろうし、そしたら近衛隊の所属希望を出しに行く時間に間に合わなくなってたよ?だから圏内に入ってて本当によかった」
いつものようにライズは優しく微笑んでくれている。やっぱり、私はこの笑顔が好きだわ。
たがらその事が嬉しくて私も笑顔で返していた。
「ライズ……!そうよね、見る事よりも結果が大事よね!!じゃあ、結果がわかったところで早速所属希望を、出しに行きましょう!」
「うん。そうだね」
歩き出そうとして違和感に気がついた。
ん?そう言えばまだライズに手を取られたままだけど、何故かしら?
なんだかライズの笑顔と相まって、凄く恥ずかしい事をしているような気がするのだけど!私が意識し過ぎなのかしら……?
顔が赤くなるのを感じながら、私はいまだに動かないライズに確認する。
「ところでライズ、どうして手を握ったままなの?」
「あ、ああ。ごめん!咄嗟に握って離すのを忘れてたみたいで……嫌だった?」
何故かしょんぼりしたライズに、罪悪感を感じて嫌と言える訳もなく、更に顔が赤くなるのがわかる。
「い、嫌な訳じゃないの!なんだか凄く恥ずかしくて……」
「あ、確かに。そうだよねごめん!」
パッと手を離すライズに、実は私のことを女だと思ってないのでは?と聞きたくなってしまう。でもいつもライズは保護者目線だから……きっとそれは変わらないのだろう。
それなのに赤くなるなんて馬鹿みたいと、なんだか気まずくなって俯いてしまう。
そして有難い事にその空気を壊したのは、先程まで死にかけてたヨシュアだった。
「よし!復活したぞ!!よくわからないが、絶対にお前と同じ隊には入らないからな!絶対だそ!いいか覚えとけよ!!」
そう言うとヨシュアは1人、先に歩いて言ってしまった。一瞬ポカンとした私とライズは、顔を見合わせるとおかしくて笑い合っていた。
「ヨシュアはあのままでいて欲しいわね」
「確かに、そうだね」
互いに顔を見合わせるとまた私達は笑い合った。
こういうところが私とライズは相性がいいと、凄く安心してしまう。
でも本当は、恋愛の相性がいい方がよかったのに……だけどそこまで求めちゃ駄目よね。
「じゃあ、今度こそ俺達も行こうか」
「そうね」
そして私達も希望を出すため、指定されている共通講義室に向かう事にした。
そして私は、一緒に歩くライズを見る。
ライズはどこを希望するのかしら?
その事を考えると胸が痛くなる。
ライズと別れるのが寂しい私は、ずっとそれを聞く事が出来ずにいた。
だってライズと離れ離れになったら、もうこんなふうに普通に話し合ったりできなくなるんだもの。
そうなれば、この恋心も簡単に忘れてしまうのかしら……。
そう思うと余計に聞き出す事なんて出来なくて、私は共通講義室に着いたその後も中々触れる事ができなかったのだった。
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