第74話 戦いの後はご飯で決まり!
「はぁ~。隊長達の決勝戦、今思い出しても最高だったわ!」
昇進試験後の帰り道、私はライズを誘って早速ご飯を食べに来ていた。
ご飯を食べていても思い出すのは先程戦っていた。隊長達の戦いである。
「本当にクレアのお母さんが、最後に氷塊で決めた所は痺れる程凄かったよね」
このやり取りをしたのも何度目だろう。
でも何度でも言わせて欲しいのだ。
「お母様は本当にいつ見てもカッコいいわよね~」
今の私は、自分の母親にゾッコンだった。
でもお母様が戦う前まではライズに気を取られ過ぎてて、ちゃんと見れてなかったなんてとてもじゃないけど言えない。
だからとにかく今は、母の話をする事でライズの事を意識しないようにしていた。
因みにそんなお母様は国王陛下の近衛隊隊長をしていて、さらに騎士団の副団長もやっている素晴らしいお方だ。
女性だからお飾りで役職を貰っていると思われる事が多い為、あの様な形でたまに実力を世間に知ってもらう場を作っている。
そうやって負けず嫌いな所がお母様らしい。
でも本当にカッコイイから、昔はよく周りに自慢したものだ。
そして昔から手ほどきをしてくれたお母様は厳しくも、ときに優しい人だった。
いつから憧れの人に変わったのかはわからないが、戦っている最中のお母様は本当にカッコ良かった。
「私もお母様見たいな人物を目指していたけれど、あれは無理よ」
「そうかな?俺は戦ってる最中のクレアは同じぐらいカッコいいと思うけど……?」
「……もう、お世辞はいいわよ」
相変わらず素で恥ずかしい事を言うライズに顔を背ける。
ただでさえライズの事を意識してしまっているのに、このまま畳みかけられても困るので私は話を変える事にした。
「そういえばずっと聞こうと思ってたけど、あの商人のことだけど?」
「え、えっとそれは……」
「ライズにも理由があるのはわかるけど、でも捕まえるために私を騙したんだから、ちゃんと話して貰わないと困るわよ?」
「クレア、その件は本当にごめん!!」
ライズは手を合わせ私に頭を下げる。
別に謝って欲しい訳じゃないのだけど、私はどうしても確認したい事があった。
「そんなのもうどうでもいいの。私は理由が知りたいの。それにライズはなんであの商人の居場所を知っていたの?」
その問いに、ライズは一瞬考える様な素振りを見せると、改めて私を見た。
「クレアが覚えているかわからないけど、俺の実家って男爵でしょ?その関係で俺の家って伯爵家の手伝いをしてたりするんだよね」
男爵家は貧乏だと、上位貴族の元へ従者や侍従として働きに出る者達は結構いる。
それと同じ様に、ライズの家も伯爵家と縁があるのだろう。
「そのお世話になっている伯爵様に、あの商人が近づいたんだ。まあ、あの商人は結構色んな家に出入りしていたみたいだから、たまたまだったんだろうけどね。でもまた迷惑かけられるのはごめんだったからさ、騙されているフリをして誘い出したんだ」
「へ、へぇー。そこまでする程その伯爵様には御恩があるのね」
なんだか踏み入れちゃいけない話だったのかも知れないけど、でも知りたかったのだから仕方がないわよね。
「……そうなのかな?」
俯きながら小声で呟くライズの言葉が聞き取れず、私は首を少し傾げた。
でも顔を上げたときにはいつもの優しい笑みを浮かべていた。
「まあ俺の話はとりあえず置いといて、あの商人について俺は少し調べたから知ってる事があるんだけど、クレアは気にならない?」
「え?それは気になるけど……」
あの商人が何者なのかは、ずっと気になっていた所だ。
それに魔力増強剤に暗示魔法、それに魔法封じと私にはわからない事が沢山あり過ぎる。
「知ってると言っても噂程度の話なんだけどさ、クレアはあの商人が暗示魔法を使ってるのはわかってると思うけど、魔法封じについては何か聞いたことある?」
「全く聞いてないわ。魔法封じどころか、暗示魔法だって本当にそんな物あるの?って気分だったのに……」
「実はね、暗示魔法は闇魔法の一種とされてるんだよ」
「闇魔法?確か使える人があまりいない魔法の総称ではなかったかしら。でもそれなら魔法封じもその闇魔法なの?」
私の疑問に、ライズは静かに首を振った。
「それが噂では、あれは魔力増強剤と同じ成分でできた魔法道具らしいんだよ」
「魔力増強剤と同じ成分?」
「粉状の物を相手にかけると、かけられた人は魔法封じを受けるらしいよ、俺も噂でしか聞いた事ないから詳しく無いけど」
そんな恐ろしい物が今まで出回っていたことに、驚きを隠せない。
そして思い出すと、暗示にかかっていた騎士達は私に粉を投げつけていたし、ヨシュアと決闘したときも耳鳴りの前に白い何かが舞っていた気がする。
そのとき何故気にしなかったのかと、私は頭を抱えたくなっていた。
それにしても摂取し続けると魔力をなくし、振りかけられるだけで魔力を一瞬でも封じ込める薬。
本当に今回の事件で全て解決できたのならいいのだけど……。
そう思ってもやはり少し不安になってしまった私は、眉をひそめてしまったのだった。
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