第36話 これが友情なのね!
私の頭は混乱していた。
目の前で同じ見習い騎士であるヨシュアに、詰め寄られていたのは間違いない。
だとしても突然現れた人物は、ここに居るのはおかしい。
………ライズ!?どうしてここに?
後ろ姿しか見えないが、その声は間違いなくライズだ。
でもその姿と声にドキっとしてしまう自分が一番信じられなかった。
いやいやこれは、ピンチなときにいきなりライズが現れたからドキドキしてしまっただけ……だから特にそういうのじゃないわ。
私は頭を振り、その事を頭から追い払う。
そして腕を掴まれて喚いているヨシュアの姿を、ライズの背中から覗き見た。
「いっ!!う、腕を離せ!」
「じゃあ、その炎を消してもらえるかな?」
とても痛いのかヨシュアは呻きながら、すぐに炎を消していた。
そしてライズは完全に消えた事を確認すると、ようやくその手を離したのだった。
「ふん!お前の騎士気取りがきやがったか……。興が冷めた。いいか、次こそは覚えておけよ!!」
鼻で馬鹿にしながら、ヨシュアと一緒に取り巻きが去って行ったのを確認して、ホッとため息をつく。
気まずい私は、すぐさまライズにお礼を言った。
「えっと、ライズ……助けてくれてありがとう。あのどうしてここに?」
「丁度お昼ご飯に向かうところで、あそこの二階に居たんだ。クレアが沢山の男性に囲まれてるのに気づいて、余りに驚いて飛び降りてきちゃったよ」
「えっ!あそこから飛び降りて!?」
食堂に向かうための回廊は一階の天井がとても高くなっているため、2階とはいえ実質3階ぐらいまである気がするのだが……あれを軽々飛び降りれるだろうか?
いや、普通ならありえないわよね。でもその危険をおかしてまで助けに来てくれたライズ……。
はっ!わかったわ、これが友情ってやつなのね!
私の中でその行動力は、友情ゆえの素晴らしい行為であると書き換えられていた。
そしてそんな事を呑気に考えていたために、ライズが質問できる時間を与えてしまったのだ。
「ところでクレア、さっきのはどういうことかな?」
「さ、さっきのって?」
「ごまかしても無駄だよ?なんでクレアはあの人達に囲まれていたの?あの人達クレアと同じ班の人達だよね?」
「ソ、ソウデスね……」
爽やかに笑顔で問いかけるライズの目は全く笑っていない。そこがとても怖い!絶対に怒ってる。
どうしてライズがこんなに怒っているかと言われたら、私が同じ班の見習い騎士から嫌がらせを受けている事を、全く伝えてなかったからに違いない。
だってライズが友達だからといって、そこまで面倒を押し付ける訳にはいかないわ。
自分の事は自分で解決出来る様にしないと、今後も女性だからって馬鹿にされ続ける事になるもの。
だから私はライズから目をそらしながら、言い訳を考えようとした。
「え、え~っと……」
「ちなみにちゃんと教えてくれないと、さっきの事を先輩達に言っちゃおっかなぁ~」
「はぇっ!?」
それはもっとまずい!!
そんなことをされたらまたお説教からの無限ループに陥って訓練時間が減る!それすなわちハロルド殿下の近衛への道のりが遠のいていく悪循環!!
このルートを避ける為にはライズに説明した後、一人で解決する事を強く強調するしかない。
私は意を決してライズに全てを話した。
全てと言っても、片付けを押し付けられている事ぐらいしかされてないのだけど……。
「それでも十分嫌がらせだよ?」
そう感想をこぼしたライズは、眉間に皺をつくりながら盛大にため息をついたていた。
それを見て私は焦りながら続けて解決策を話し始めた。
「ライズ、私だってこのままやられっぱなしと言う訳にはいかないから安心してほしいの!」
「いや今の何処に安心できる要素があったのさ?」
「まだ話は終わってないわ。さっきヨシュアに言われて気がついたのよ、騎士として真の解決方法を!!」
「騎士としての解決方法?」
首を傾げているライズの顔に、本当にクレアが解決できるの?と書いてあるのがわかる。
だからこそ私は自信満々ライズに指を指した。
「決闘よ!!」
「決闘!?」
「ええ、騎士らしく決闘をするの。騎士にとって一番大切なのは強い事よ!!やはり強さこそ全てよね。だからヨシュアとの決闘で私の力を対戦相手であるヨシュア、そして取り巻きをしている他の見習い騎士達にも見せつけてやるの!すると私の強さをみた皆が私を認めてくれて、下に見られなくなるってわけ!」
「成る程、ある意味筋は通っているように思えるけど……クレア、そのヨシュアって人の強さ知っているの?」
─── ん?ヨシュアの強さ……?
私、ヨシュアのこと全然知らないわ!!!
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