良いのかこれ

第13話 理想郷

秋田がお弁当を作って来ていた。

俺は驚愕しながら秋田からお弁当を受け取る。

しかし.....中身がどうなっているのだろうか。

秋田は料理が苦手だという話だったが。


「実はここ最近に先輩の元に行って無かったのは秋田先輩の元に料理のお手伝いをしに行っていたんです」


「.....マジか。お前と秋田が?」


「.....はい。だって.....戦友ですから」


「.....!」


俺は山口の言葉に、そうか、と柔和な笑みを浮かべる。

それから頷いてそのまま弁当箱を開けると.....そこには形があまり整ってない色々な料理が入っていた。

だけど.....本当に色々入っている。

彩り豊かだ。


「.....頑張ったな。秋田。そして有難うな山口」


「はい」


「.....食べてみて」


「.....有難う」


それから俺は食べてみる。

卵焼きが砂糖が少し多いのか甘かった。

ミニハンバーグは焼き過ぎたのか少し苦い。

だけど.....こんなに味わい深い料理は.....初めてかもしれない。

俺は何だか涙が出てきた。


「.....な、泣くほど美味しいのかしら?」


「.....これは美味しいと言えると思う。頑張ったな」


「良かったですね。秋田先輩」


「.....そうね」


それから.....秋田と山口は笑み合った。

そして秋田と山口はお弁当を取り出してから。

そのまま開けてから食べはじめる。

暖かい感じがして本当に幸せな感じもする。


「.....そういえば山口。御免な。部活に入ってもらって」


「.....いえ。私、部活をどうしようと思っていたので.....逆に丁度良かったです。有難う御座います」


「うーん。俺としては山口には入ってほしくなかったけどな.....いや、嫌いとかじゃ無いんだけど危険を感じる.....」


「え?」


目を丸くする山口。

秋田を見ると秋田は苦笑していた。

それから、そんなに警戒しなくても大丈夫だと思うわ、と笑みを浮かべる。

俺は、うーん、と悩みながらも、そうか、と一応、回答しておく。

そうしていると.....ホットラインが入ってきた。


(こんにちは、だ)


(.....どうしたんですか?大泉先輩)


(どうかね?山口ちゃんは納得しているかね)


(山口は大丈夫ですよ。納得してくれています)


(そうかね。ならば早速、君だけに内容を話そうかね)


俺は目をパチクリしながら文章を読む。

それから大泉先輩はこの様に話してきた。

eスポーツ部だが.....簡単に言えば君達と私達の親睦を深める為に作る。


隠れては香織などが君ともっと仲良くなっていくのが目的だ。

その為に作るのがまず第1の目的。

そして2つ目に.....私と香織と菜穂と君が青春を謳歌する為に創る。

君は.....私の目に似ているからな。楽しんで無いだろう?、と大泉先輩はメッセージをくれた。


俺は見開きながら.....そのメッセージを読む。

そうしていると、え?先輩?どうしたんですか?、と山口が聞いてきた。

俺は、いや。大泉先輩に部活の事を聞かれたんだ、と答える。


「.....」


(君が思っている以上にこの世界は素晴らしいと思う。康太。一部だけを除いてな。だから楽しめ。今は全てを忘れて現実を忘れて。楽しむんだ)


「.....大泉先輩.....」


俺はふと、過去を思い出す。

その時に.....俺に手を差し伸ばしてくれたあの女の子を、だ。

あの優しかった彼女はもういない。

何故ならこの場所から何処かに夜逃げしてしまったから、だ。

借金苦で、である。


「.....懐かしいな」


「山彦君。大丈夫かしら」


「.....ああ。すまん。飯食おうか」


そして俺は飯を食べていく。

何だか先輩の言葉が身に染みた。

俺は.....気楽になったかも知れないな。

大泉先輩の言葉で、だ。


「それにしても先輩。忙しいですね」


「.....何でだ?」


「この前もスマホ弄ってましたもん。一緒にご飯食べていた時」


「.....ああ、すまんな。あの時は」


まあちょっと失礼でしたが.....先輩ですからね。

アハハ、と笑う山口。

俺はその姿を見ながら秋田を見る。

秋田もゆっくり笑みを浮かべた。

楽しむ、か。


「そういえば秋田が使ってきたこの弁当箱、何だか見た事あるな。.....何でだろう」


「.....え?そうなの?何でかしら」


「.....ああ。昔の事だけど同じ弁当箱を見た事があるんだ。.....でもいつだったっけなこれ」


弁当箱なんて量産されて何処でも見るよな。

何だかこの弁当箱だけは強く記憶に残っている。

一体何故だろうか、と思いながら俺は顎に手を添える。

それから、まあクソガキだった頃の昔の事だからな、と特に考えなかった。

そうしていると山口が、あ、と声を発する。


「そういえば先輩。私、部活をするなら部屋を装飾したいなって思うんです」


「それはつまり?」


「.....簡単に言ってしまえば飾り付けですよ。せっかくなので.....です」


「.....ああ、成程な。それも良いかもしれないな」


「ですです」


俺は考えながら笑みを浮かべる。

そうしていると秋田が、でも装飾ってどうしたら良いのかしら?、と顎に手を添えて首を傾げる。

俺はその事に、あまり深くは考えなくても良いんじゃないか、と言った。

個性溢れる様な部活にしていけたら.....それで、と。

俺は告げる。


「ですね。先輩」


「.....貴方らしいわね」


「俺らしいか。有難う」


そしてそのまま時間は放課後になった。

俺と秋田と山口は大泉先輩に呼ばれた場所に向かう。

それから大泉先輩に会うと。

そこには裕子先生も居た。


「.....それでは部室に案内しようと思う」


「先輩。部室って何処にあるんですか?」


「部室は2階だ。そして.....パソコンを色々配属した」


「.....え?」


「パソコンは私がワンキャッシュで買ったものだ」


いや、ワンキャッシュって。

ここ学校なんですけど.....。

と思いながら苦笑いを浮かべる俺。

それから勝ち誇った様な大泉先輩を見る。


「.....大泉先輩。それって良いのですか?」


「よく分からんが学校の規則ぐらいぶっ壊したい」


「裕子先生.....」


「あらぁ。まぁいいんじゃないかしらぁ?」


本当に良いのか。

考えながらも用意してしまったものは仕方が無いか、と思い。

そのまま部室に向かう。

そして開けると.....ゲーミングパソコンの最新型が置かれていた.....すっげぇ!


「す、すごい!!!!!これ.....最新のしかも手に入らない分のゲーミングパソコンじゃない!!!!!いいわぁ!!!!!」


「.....秋田?」


「はっ!」


「秋田先輩もそんな顔をするんですね。アハハ」


パソコンに頬ずりをしていた秋田。

秋田は立ち上がって咳払いをしてから。

大泉先輩に向いて、こう話す。


それで.....ここが部活拠点ですか?、と。

周りは教室をぶち抜いたフロア。

そして横には畳があり、寝れそうだ。

最新型ゲーミングパソコンは6台在り接続されている.....。

ちょっと待て、良いのかこれ。


「うむ!これこそ私の望んだ理想郷だ!」


「いや.....理想郷を学校に作るなよ.....」


「ハッハッハ!堅苦しい事を言うな。因みに私が全部出費する。校長も私の意見に納得したからな!」


「金持ちだな!でもやり過ぎだ!何をした!?」


でも何となく。

楽しめそうな気はしてきた。

だけど幸先が.....不安だ。

校長を買収したって事か.....?

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