嫌な世界
第10話 お姉ちゃんと結婚して下さい!
放課後になったので家に帰って来た。
そして、ただいま、と言いながら玄関を開けると親父が.....何故か居る。
親父は俺を見てから不愉快そうに眉を顰める。
俺はその姿に目を逸らした。
「.....親父。何で居るんだよ」
「.....ここは俺の家だ。居て何が悪い」
「.....」
相変わらずの風貌。
白髪交じりの黒髪をオールバックにした髪の毛。
そして灰色のレンズの眼鏡。
更に.....身長は180センチぐらい有り大きい。
圧巻されるとかそんな意味は無い。
ただ.....嫌な物を見てしまった。
そんな親父は俺を無視で靴を履き始める。
「では行って来る」
「.....」
奥に立っていた美空が悲しげな顔で俺と親父を見る。
親父は俺には何も言わずにそのまま玄関から出て行った。
その様子に俺は苛ついて床に通学鞄を投げる。
何だってんだ相変わらずだけどあの態度。
無茶苦茶に気に食わない。
「お兄ちゃん.....」
「.....美空。何で親父が居る」
「あの、聞いて。.....お父さん。お兄ちゃんの様子を伺っていたよ?」
「.....そんな訳あるか?.....あんな親父が」
「.....嘘じゃない.....本当だよ?」
泣きそうな顔をする美空。
幾ら何でも.....それは冗談がすぎる。
俺は思いながらそのまま腹立たしく台所に行ってからジュースを飲む。
美空が俺の背中に顔を寄せてきた。
お父さんと仲良くしてほしい、と呟く。
「美空は悲しい。.....こんなの家族じゃない」
「嫌だ。あの親父だけは。俺を馬鹿にするし、オンラインネットゲームですら.....」
「.....お兄ちゃん。もしだよ?.....もし。お父さんが.....心配していたらどう思う?」
「.....無いって言っているだろ」
「.....」
可能性は0だ。
絶対に有り得ない。
俺は思いながら美空を見る。
それから、2階に上がるわ、と通学鞄を拾ってから。
俺は、お兄ちゃん、という呟きの中で2階に上がった。
☆
「.....クソッタレ。忌々しい」
ゲームをしよう。
思いながら.....居たが。
勉強をしないとマズいかと思い、勉強道具を広げた。
強迫観念が頭を覆う。
むしゃくしゃする。
「.....」
それから数学の問題を解いていく。
その中で.....俺は行き詰った。
この問題が分からない、的な感じで、だ。
俺はホットラインを、スマホを取り出した。
それからユウキにメッセージを飛ばす。
(ユウキ)
(何かしら?カズキ)
(.....数学の問題が分からなくてな。教えてくれないか)
(数学の問題?分かったわ。どこら辺が分からないのかしら。私だったら大体分かるわ)
流石は頭が良い少女だ。
俺は思いながら、えっとな教科書のページ234だ。
とホットラインに答える。
それからユウキから教えてもらった。
(ねえ。カズキ)
(何だ?ユウキ)
(もし良かったらだけど教えに行ってあげましょうか?テスト近いし)
(それは.....有難いな。じゃあ来てくれるか)
(え!?ほ、本当に!?)
そっちが言った癖に何でそんなに驚くのだ。
俺は思いながら、ユウキなら歓迎するぜ妹も、と送る。
すると嬉しそうな顔文字と共に、有難う、と来た。
本当に嬉しいんだろうな。
(あ.....でもうちの父親に確認しないと.....)
(え?何をだ?)
(.....言ったかしら。分からないけど.....とても厳しいの。うちの親)
(.....そうなんだな)
クラスメイトの家に行くにしても.....男の子だから.....。
と気にするユウキ。
俺は、でも俺と秋葉で会ったよな?、とメッセージを送る。
するとユウキは、それは貴方が女の子だと思ったからよ、と帰って来た。
成程。
「今度はそうはいかないわ。だから許可がいるかも知れないから」
「.....成程な。許可取れると良いな」
「.....そうね」
そうしていると。
インターフォンが鳴った。
俺は?を浮かべて、すまんユウキ。ちょっと席を外す、と打って送信してから。
そのまま1階に下りた。
それから玄関をやって来た美空と共に開けると。
「.....?」
「初めまして。私、山口リコと言います」
「.....山口.....リコ?」
そこには少女が立っていた。
ランドセル姿の、だ。
黒髪のボブで、顔立ちはかなり可愛い。
でも未成熟って感じだ。
大人になったら更に可愛くなりそうな顔.....。
小学生じゃないか.....ってそういう問題か!
何だこの少女!?
と思ったが山口、と言う名が引っ掛かった。
「お前、もしかして山口の妹か?」
「はい。お初です。.....私、香織お姉ちゃんの為にやって来ました」
「.....え?山口の為に?何の為にだ」
「はい。要件としては是非、お姉ちゃんと結婚して下さい!」
「.....」
聞き間違いだろうか。
結婚して下さいと聞こえた気がする。
俺は、ハァ!!!!?、と愕然としながらリコを見る。
リコはニコニコしながら俺を見ていた。
それから愕然としている美空を見てからリコに向く。
「おま!?何を言ってんだ!」
「だって.....お姉ちゃんとお兄ちゃんって愛し合っているんですよね?じゃあ結婚して下さい!」
「.....そんな訳にはいかないんだが.....山口の差し金か?」
「いえ、違います。私はお姉ちゃんに幸せになってほしいんです。お姉ちゃんと結婚するまで私はこの家にろうじょうします」
「.....」
ろ、籠城?
その言葉の傍ら、玄関から上がり始めたリコ。
ちょ、何をしてんだ!
勝手に上がるな!、と思いながらリコを止める。
「私はお姉ちゃんの味方ですから。だから籠城します」
「意味が分からん!!!!!」
「ちょ、ちょっとリコちゃん.....」
「駄目とは言わせませんよ。私はイエスと言うまで帰りません」
「親が心配するって.....」
あ、大丈夫です。
私の親は放任主義ですから、と笑顔で告げてくる。
そういう問題じゃ無いんだが。
俺は直ぐに美空に俺のスマホを渡して指示を出す。
「美空!電話してくれ!山口に」
「は!?駄目ですよ!それじゃ意味無いですよ!」
「駄目だっつってんだろ!」
「せっかく来たのに!」
ぎゃいぎゃい大騒ぎする俺達。
そして美空が電話してこの後に。
山口が心配しながら俺の家に来た。
当の山口曰く。
家族に黙ってリコはこの場所にやって来たという。
オイオイ。
「でも.....リコが一生懸命なのは伝わりましたね」
「.....山口.....お前な」
「アハハ。でもリコ。勝手に来たら駄目でしょ」
「ムスッ」
最近の女子小学生って怖いですね。
思いながら俺は顎に手を添える。
そしてイヤイヤ言うリコを連れてからそのまま山口は帰った。
山口も大変だな.....。
と思う最中だったがまだ事件は終わらなかった。
何故ならリコが俺の通学路に居たから、だ。
お姉ちゃんと結婚して下さい、と言いながら、だ。
俺はもう唖然とするしかなかった。
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