第2話 貴方は自分に自信を持ちなさい(大幅改稿)
何というかゲームのオフ会で会った仲良い男の友人の男のアバターの中身がまさかの真面目系の女子だった。
つまりどういう事かというとだ。
俺のクラスメイトで.....しかも役職は風紀委員。
律儀に全てを守る女子で校則を守る事なら鉄にでもなる少女がオンラインネットゲームの俺と仲良い男のアバターの中身だった、という事だ。
名前をユウキと言うのだが.....まさかだ。
男が女になり切る事はよくあるがその逆向き、つまり男子に女子が成り済ますのは有り得ないだろうと思ったのが誤算だった。
というかそんな怪奇現象があっていいのか。
俺は昔の事があるから女子は苦手なのだが.....。
何故かといえば俺は女子にイジメられたことがあるから、だ。
その為に嫌なのだが.....。
思いながら秋田と歩く。
秋田はオフ会を心から楽しみにしていた様だった。
その為、俺は仕方が無く秋田と歩く。
しかし気まずい空気が流れていた。
「.....秋田。何か話は.....」
「.....」
「秋田」
「.....」
俺も困惑する。
鉄の女の素性がバレた。
そして.....俺がクラスメイトだったのがよほど衝撃なのか。
ただただ困惑した表情で何も語らない。
俺自身も参ったと思いながら後頭部を掻く。
話題性を.....持つか。
取り合えず今の状況で、だ。
食いつくかどうかは分からないが。
「秋田。その。秋葉原は好きなのか」
「.....えっと.....。そうね。秋葉原は好きよ」
「.....」
「.....」
困ったもんだな。
会話が全然続かない。
考えながら歩き続けると目の前にア○メイトが見えてきた。
俺はその事に横の秋田を見る。
秋田は目を輝かせていた。
だが俺の視線を感じて直ぐに目を逸らす。
おや?コイツは.....もしやア○メイトが好きなのか?
「秋田。アニ○イトは好きなのか」
「.....わ、私はアニメ○トなんか.....」
「隠さなくても良い。俺も好きだからな」
「そ、そうなの?.....良いわよね。○ニメイト。色々グッズが売っているから。色々な.....本当に色々な特徴的なグッズが売っているから」
「.....熱烈だな」
ハッとして口を閉ざす秋田。
だけど今度は言葉が続く。
横を歩いている俺を秋田が見上げてきたのだ。
俺は首を傾げながら.....秋田を見る。
秋田は赤面でモジモジし始める。
「じゃ、じゃあその、寄っても良いかしら」
「.....寄ったら良いじゃないか。せっかくの秋葉なんだから」
「有難う。カズキ」
「.....え?」
またも自分の言葉にハッとした秋田。
それから.....口に手を添える。
そして真っ赤に赤面して俯いた。
こんな特徴があるんだなコイツ、と思える様な感じだな。
それからゆっくり俺の顔を見てくる秋田。
「ねえ。ここ秋葉だから.....互いにゲーム名で呼びましょう」
「.....え?マジに?」
「ええ。だってそうした方が.....何だか私も呼びやすいわ」
「.....わ、分かった。じゃあユウキ?」
「有難う。.....カズキ」
それから再度、俺を見上げてくるユウキ。
俺はその様子に苦笑する。
それから.....前の人が多いアニメ○トに入って行く。
そして店内を見渡した。
相変わらずだな。
土曜日なのもあるか、と思いながら少しだけ驚く。
ユウキは目を輝かせて店内を見ていた。
俺も何だかワクワクする。
「じゃあ何処のコーナーから寄る?」
「1階も2階も行きたいわ」
「.....そうか。じゃあ1階から行こうか?」
「そうね。じゃあ1階から行きましょう」
そうしていると歩き出して直ぐにユウキが立ち止まった。
それから俺を見てくる。
その。カズキはラブコメとか読むの?、と言いながら、だ。
俺は見開きながら、そうだな。でも俺は.....ん?それってラノベか?、と聞く。
ユウキは頷く。
「.....私はラノベだったらラブコメが好きなのよ」
「.....意外だな。お前は百科事典みたいなのしか読まないと思った」
「.....ぶっちゃけると私は息抜きだってするわよ。失礼ね。だからラノベを読むわよ。私だって」
「.....そうなのか。良いな。お前.....頭も良いだろうからいい息抜きだろう」
俺は少しだけ俯きながら居ると。
またそうやって、と怒った様な声がした。
俺は驚きながら顔を上げる。
そこにはいつの間にかこっちに近付いて来ていた秋田が居た。
俺を眉を顰めてジッと見つめている。
「.....またそうやってずっと卑下するのかしら。貴方は自分を。.....貴方の特徴は天然パーマね。それから貴方は小顔で顔立ちも整っている。全体的に全然汚くない容姿。だから人に好かれやすいけど。.....でも唯一貴方は汚い部分があるわ。分かるかしら」
「.....え?.....え?」
「私ね。貴方をずっと見ていたわ。クラスメイトといつか友達を作らないのかしら?ってね。私は風紀委員だから.....クラスメイトの人間関係を見つめているの。でも貴方はいつまでもボッチのままで何もしなかった。だから腹立たしかった。そしてもう1つ腹立たしかったのは貴方は自分を卑下している。自分自身の才能は無いものと思っている。それが気に食わないの。貴方は貴方なりの個性が有るんだから。それになにがあったかは知らないけど他人を避けちゃ生きられないわ」
「.....秋田.....?」
俺は衝撃を受ける。
周りが、何事?、と俺達を見ていた。
秋田はその事に大きく咳払いして俺を改めて見てくる。
とにかく、と言いながら、だ。
それから俺を見てきた。
「この際だから言うわ。私は.....貴方と友達になるわ。貴方が一人ぼっちのままで居るのなら。まだ卑下するなら私は貴方を許さないわよ。貴方は才能が有るから誇りを持って生きなさい」
「.....」
あの人以来か。
涙が浮かんできた。
それから俺の目の前の視界が歪む。
そんな事を.....言ってくれる人はずっと居なかった。
俺は.....嬉しくて仕方が無い。
秋田は慌てながら俺を見てくる。
な、泣かないで頂戴!?、と言いながら、だ。
「.....ごめんな。涙が出る。秋田。俺は.....嬉しかった。お前の言葉が、だ」
「.....え?」
「.....俺はずっと女子にイジメられていた。だからお前みたいな.....俺の事を考えてくれる女子は初めてなんだ.....」
「.....そうなの。.....そうなのね」
そして俺は涙を拭ってから笑みを浮かべた。
秋田もそんな俺を見ながら.....柔和な笑顔になる。
それから俺達は人込みに流されない様に.....ア○メイトの店内を見て回る。
本当に何が狙いなのかと思ったけど.....そんな事は無かった。
秋田はやはりユウキだ。
良い奴だったのだ.....ただ嬉しかった。
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