技術

登場人物


園田そのた──どこにでもいる地味顔のモブリーマン。でも、ちょっとずれてる。


蒲瀬かませ先輩──面倒見のいい園田の先輩。海外ドラマのDVDを見過ぎて最近寝不足ぎみ。











カマセ「あ~……めんどいな、毎回毎回……」


ソノタ「どうしたんです? 先輩」


カマセ「いや、このパソコン、少しの間操作しないでいると勝手にロックかかるだろ?」


ソノタ「どこに産業スパイがいるか分かりませんからね」


カマセ「……うちみたいな下請け会社、どこの誰がスパイするんだよ。誰得だれとくだよ」


ソノタ「用心ですよ、用心」


カマセ「いや、まあ、別に用心するのはいいんだけど、ロックかかる度にアクセスコード入力するのが面倒でな」


ソノタ「あれ? 先輩って、音声認識機能使ってないんですか?」


カマセ「音声認識機能?」


ソノタ「声紋とキーワードを登録することで、喋りかけるだけでアクセスできるようになるシステムですよ」


カマセ「なんでそんなハイテク機能がうちの会社に必要なの?」


ソノタ「僕も使ってますよ。キーワードは『センパイ』です」


カマセ「……なんか用もなく呼ばれる時があると思ったら、あれキーワードだったのかよ」


ソノタ「先輩のパソコンにも音声認識機能は入ってますから、設定してあげますよ」


カマセ「おっ、そうか? じゃあ頼むわ」


ソノタ「(カタカタカタ)…………はい、じゃあ、この小型マイクに向かって『愛してる……』ってささやいて下さい」


カマセ「なんでっ!?」


ソノタ「はいOKです。これでもう、いちいちアクセスコード入力しなくても大丈夫ですよ」


カマセ「…………えっ、ちょっと待って。今の『なんでっ!?』が登録されたの? ていうことは、これから毎回、パソコンがロックされる度に『なんでっ!?』って言わなきゃならないの……?」


ソノタ「いいじゃないですか。先輩がそう言ってるの、よく聞きますし」


カマセ「お前のせいだよっ!」

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