猫笛(ねこぶえ)
登場人物
カマセ「ふぅ……今日の仕事も無事終了。残業もなくてヨカッタネ、と。……よしっ、帰りに一杯やってくか! おい、園田! カツシカの串カツ食いに行こうぜ」
ソノタ「…………」
カマセ「ん? おい、なにやってんだ、園田?」
ソノタ「…………あっ、先輩、いたんですか?」
カマセ「いたんですかじゃねぇよ。いたよ。ずっといたよ。お前のすぐ目の前のデスクに」
ソノタ「すいません、集中してたんで気づきませんでした」
カマセ「……まあ、いいんだけどよ。で、なんだ、その手に持ってる棒みたいなの」
ソノタ「あ、コレですか?
カマセ「…………猫笛?」
ソノタ「はい、猫笛です」
カマセ「猫笛っていうのは……あれか? もしかすると、犬笛みたいなもんか?」
ソノタ「ええ、そうですよ? 知らないんですか?」
カマセ「知らん。お前はなぜか、さも知ってて当たり前みたいに言うが、知らんものは知らん。聞いたこともない」
ソノタ「遅れてますねぇ……だめですよ、先輩。日本の
カマセ「伝統工芸だっていうなら、『遅れてますねぇ』ってセリフはおかしくない?」
ソノタ「時代は巡るんですよ、先輩。今はこの猫笛がトレンドです」
カマセ「…………まあ、いいや。俺が時代に乗り遅れたのかどうかは別として、なんでお前はその猫笛をいじくり回してたんだ?」
ソノタ「うちは明治初期から続く犬笛職人の家なんですけど……」
カマセ「……犬笛職人?」
ソノタ「言ってませんでしたっけ?」
カマセ「聞いてねぇよ。ていうか、聞いてたらその時にもっと根掘り葉掘り聞いてるよ」
ソノタ「まあ、それで代々一子相伝の技を受け継いできたんですけど」
カマセ「よく
ソノタ「でも僕の爺さんは大の猫好きで、猫とコミュニケーションを取りたいが為に50年かけてこの猫笛を開発したんです」
カマセ「……半世紀、か。……お前の爺さんの人柄は知らんが、とにかく執念を感じるな」
ソノタ「ええ、スゴイ人ですよ。だから僕も爺さんの技術を絶やすまいと、こうして暇を見ては猫笛作りに励んでるんです」
カマセ「いい話……なのか? ていうか、一子相伝の犬笛の技はどうなったんだよ」
ソノタ「ああ、爺さん犬が嫌いだったんで、教えてくれませんでした」
カマセ「途絶えてんじゃねぇか!」
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