サラリーマン園田(そのた)の日常

布施鉱平

昼休み

登場人物


園田そのた──どこにでもいる地味顔のモブリーマン。でも、ちょっとずれてる。


蒲瀬かませ先輩──面倒見のいい園田の先輩。











カマセ「ん~……っ、あぁっ、ようやく昼飯か。今日は渋屋しぶやで天丼……いや、それとも世田ヶ屋せたがやでカツ丼にするか……

 流石に毎日近場で食ってると、マンネリ化してくるんだよなぁ…………よしっ、今日は園田に決めさせるかっ! 

 おう、園田~! 飯食いに行くぞ……ってなんだ。おまえ、それ手作り弁当か?」


ソノタ「はい。この辺りで食べるのも飽きてきたんで、たまには自分で作ろうかと」


カマセ「彼女とかじゃないのかよ……しかし、お前料理なんて出来たのか」


ソノタ「まあ、一応。一人暮らしも長いんで」


カマセ「へぇ~……おっ、きんぴら、ミニハンバーグ、卵焼きにほうれん草か。けっこうバランス考えて作ってるんだな」


ソノタ「ええ、なんか作るって決めたら気合い入っちゃって。昨日の夜から下ごしらえとか頑張っちゃいましたよ」


カマセ「本格的だな、おい……。なあ、ソノタ、それ一口くれないか?」


ソノタ「いいですよ? せっかくだから人の意見も聞きたいですし」


カマセ「おっ、さんきゅ~。じゃあ、ハンバーグを……もぐもぐ……ん、なんか、これ……」


ソノタ「あれ? 不味かったですか?」


カマセ「いや、不味いというか、複雑というか………………スマン正直に言うと不味いわ……なあ、園田。このハンバーグ、何入ってるんだ?」


ソノタ「普通ですよ? 合い挽き肉とタマネギと卵とパン粉です」


カマセ「味付けは?」


ソノタ「下味は塩こしょうと、砂糖とハチミツとオリゴ糖で……」


カマセ「なんで甘いの三回入れた?」


ソノタ「ソースはケチャップと中濃ソースと、タバスコと一味と七味です」


カマセ「だからなんで辛いのも三回入れるんだよ。ていうか、七味入れたら一味いらないし」


ソノタ「先輩……甘みは愛情。辛みは愛情の裏返し。僕の料理には、愛情がいっぱい詰まってるんですよ?」


カマセ「裏返しの愛なんていらねぇよ…………じゃあ、この酸っぱいのは何なんだ」


ソノタ「酸っぱいの……? 酸っぱいのなんて…………あぁ」


カマセ「おい、ひとりで納得してんな。なに入れた、園田」


ソノタ「入れたって言うか…………そのハンバーグ作ったの、昨日ですから」


カマセ「腐ってんじゃねーか!」

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