第2話 いつか、どこかで見たよな あの子
今オレは、ある「制裁」を受けている。 そう、始業式が終わって教室へと戻る際、「学年のアイドル」と言っても差し支えない一人の女子同級生からのお誘いを断った(様に見えてしまった)からだ。
そうつまり、今オレは源野巴惠様を敬愛して已まない連中(男女問わず)から“フクロ”にされている最中なのである。
「イテぇ……」
「何が『イテぇ』じゃコラ!」 「おおよ、我等の巴惠様からのお誘いを「無視する」と言う素っ気ない態度してくれやがって!!」 「オレ達だって声かけてくれない……やりたくとも出来ないって言うのによおぉぉ……」(オォーイオイ) 「おう、手前ぇーら、このナヨ男にヤキいれてやんな……けど顔は止めときな、ボディーにしときな!ボディーに!!」(← 一応ぢょしである)
「「「ヘイ!姐さん!!」」」
ケッ……なにが『姐さん』だよ……それにしても、痛ぇなあ…………
ゲームや、突如「
ゲームの世界やあちらの世界では、『10000回討伐』したそのご褒美にと“あいつ”から授けられたオレの強力で特殊な『
そのお蔭もあってオレは『魔王』を名乗れていた。 けれど、これがオレの“現実”―――所詮は引き篭もりの……
畜生―――悔しいなあ……こいつらゲームの中だったら、何人いたって屁でもないのになあ……
手痛い洗礼を受け、口の中が切れて血の味はするし、手や足は打撲で内出血してるし、骨も……折れてるかもしんないないあ―――
あーーーあ、つまんねえ……最後の「憩いの
そりゃ両親には迷惑かけるかもだけど、家を出た途端に周りが敵だらけじゃ、オレに言わせてみれば『リアルと言う名のクソゲー、まぢクリア無理なんですけどーーー』て感じだなあ……。
それに、乃亜の奴にも申し訳ないよな。 なんてったってあいつ、オレと同じ高校に一緒に
などと、様々な事を頭に思い浮かべながら、折角始まった新たなる
「そこのあなた達、何してるの―――止めなさい!」
オレへの
それにしてもみっともねえとこ見せちまったもんだ、ゲームやあの世界じゃオレの言う事に不満や愚痴の一つも零さず従ってくれた、
1コ上の先輩だから詳しい実態までは知らないが、やっぱその
しかし―――で、ある。 オレが巴惠の親衛隊共からの
「げっ!あいつ安倍の幼馴染じゃねえか!」 「者共散れ―――散れぇえい! バカが移るぞ~~!」
「ム・キーーー!失礼しちゃうわね! こんな聡明な私を捕まえてバカとは何よ!バカとは!!」
…………えっ?オレの「幼馴染」?? いや、ちょっと待ってくれ?オレには幼馴染の……それも同い年の女子と言うイイ感じのものなんていなかったハズの気がするんだが??
それに、そんなイイ感じの子がいるんだったら、それまでのオレの
いや―――だが、しかし…………この子どこかで見たことあるぞ?
それに『オレの幼馴染』って言う情報が本当だとしたら、今の感想なんて少しおかしいんだが……なんて言うか、こう―――
「大丈夫?どこも怪我は無い?? あっ……ちょっと口中切れてるし、殴られた痕もあるわね。 だったら一緒に行こう?」
「あっ…ああ―――」
「けど良かった、ちゃんと繋がってて……そのお蔭で見つけられたんだけどね。」(ぼそ)
その子は、随分とおかしな言動をしていた。 もしかすると「不思議ちゃん系」?かもと思ってしまったけど、その枠では収まり切らない不思議さに、オレは……
* * * * * * * * * * *
「―――ここが現場ね。」
「その様で……それにしても申し訳ありません、姉さま。」
「今は、あなたのした事に関しては不問にすると致しましょう。 ですが……一体どこの誰が、私がお慕い申し上げている竜児様を、どこへ連れ込んだのだと?!」
「恐らくは……怪我を負ったのだとしたら保健室に駆け込むのが常道―――ですが……」
「彼の一報を耳にした時、即座にそこへと行きましたからね……だけど―――。」
「保健室は
「兄さぁ~~ん!!」
「乃亜どの―――。」 「乃亜ちゃん―――。」
「兄さんはどこにいるんですか?! それを教えてくれたら取り敢えずは抑えておきます。」
「乃亜殿、それが判らないのだ……判っていたなら―――」
「源野様……いえ、巴惠さん。 私は今回の、私の兄さんへのリンチの件、忘れませんよ……あなたがあの余計な一言さえ発しなければ、あなたの親衛隊だと称するクソなヤロウ共は、私の兄さんへのリンチもなかったのでしょうから。」
「…………申し訳次第もない―――。」
「乃亜ちゃん、今はそのくらいにしておきましょう、いま大切なのは……」
「はい―――兄さんの行方……それで、目撃情報とかないんですか。」
「不肖だが私の親衛隊を称する者からは、乃亜殿……少なからずそなたにも関わりがある―――と、思っている。」
「私も?? それってどう言う……」
「どうやらその者が言うのには、竜児殿へのリンチを止めさせたのは―――乃亜殿、そなたの兄の幼馴染と言うのだ。」
私はその時、一種の違和を感じた。 なぜなら私の兄に幼馴染などいなかったからだ。
けれども……なぜか、こう―――不思議な感覚……私の兄には幼馴染の女の子なんていないと判っているのに、急に「いる」と思ってしまえているからなのだ。
* * * * * * * * * * *
ひどい
けれど…… 今度は 私が護ってあげる。 だから―――大丈夫よ……私の……
「〖歪み生じたる場所を癒し、治し給え〗」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「(あ……)あれ?痛くねえ、それに……」
「どう?痛みは治まった?」
「ああ……悪ぃありがとな。」
「いえいえ、どういたしまして♪」
「それより……お前誰だ? 見ず知らずのオレを……」
「もう私の事を忘れちゃったの?傷付くなあ……昔はあれほど私の事を「好き」って言ってくれたのに。」
あれ?そうだっけ?? けどそうは言われても記憶にないんだよなあ……こんなにも綺麗で可愛い系の女子に「好き」だって
その時のオレは、丁度身体の痛みが引いたから目を覚ました。 それも大きな木の陰で。
その大きな木陰の
その同級生は黒い髪……だったが、一束だけ蒼色のメッシュを入れた特徴のある容姿をしていた。
普通なら、こんなにも特徴的なモノを持ち合わせる他人の事を、忘れるはずなんてないのになあ……
「それにしても、綺麗な目をしてるなあ……まるで―――」(すやぁ~z)
……びっくり―――しちゃったなあ……されちゃったなあ。
私がこちらに来させてもらう時も無理言ったけど、まだそれ以上の無茶―――例えばこの彼とは「幼馴染」と言う設定にしてもらい、その他にも色々と
それに……距離―――なんて、こんなに近くなるってこれまでにも無かった事だしぃ~~~なんだか顔から火が出てきそう……。
それに―――これがこの世界での……“彼”の
全然印象が違うなあ……だけど共有する部分もある。 だって“彼”には、この私を「10000回討伐」したという証しに譲った“あるモノ”。
「
そして今、
……フッフッフ、ハッハッハ、アーーーーーッハッハッハ!
どうよ?あの小娘達から一歩出し抜いてやったわ?! 全く―――『ヤハウェ』ったら何の予告もなく「
けど……まあーーー『サンダルフォン』の取り成しもあってアベル達の世界に来れはしたんだけど。
何と言うか、アベルは
それはともかくとして―――なんだけど、一番警戒を払わなくちゃいけない人……私達の世界でも「アベルのお嫁さん」を僭称していた“あの
* * * * * * * * * * *
「やはりおかしいわ……心当たりのある場所を探ってみても、こうも見つからないなんて。」
「……もしかすると“誘拐”??」
「巴惠、何をバカな事を―――!」
「確かにバカな事ですが、こうなると最悪の事態を考えなくては……!」
「それにしても……その竜児様の幼馴染という女、一体何者なのでしょう。 幼馴染と言う
「姉さま……どうか「負のオーラ」を鎮めて下され。 それより……乃亜殿は何を考え込んでおられるのです?」
「いえ……何かこの感じ、以前にも感じたことがあるような―――ないような……」
「『以前にも感じた事のある』?? 一体どこで―――」
そう……この“感じ”―――「
けれどそれは現実世界ではあり得ない事、私の兄さんが持っている『
だけどこの“感じ”……私は知っている―――いや、私だけじゃなくて、この2人も知っている。
私の兄さんが持っている『
その時私(乃亜)は思ったものでした。 「まさか、そんな事は有り得ない」―――と……
“
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