現代篇
第1話 新学年(期)
オレの名は、「
だがそれは世間を欺く仮の姿での話しだ。 オレの本当の正体は―――…………ヌミマセン、話し完全に盛っちゃいました。
いやホント、現実世界に於いてのオレみたいな存在は、「オタク」だの「引き篭もり」だの「ニート」だのの称号が似つかわしい存在なのである。
しかし、こんなオレにも取り柄の一つもあったもんでして、オレやその仲間達やその他大勢が熱狂的にプレイをしていた「ゲーム」の世界では、『魔王』として称されもした
そんなオレや、オレの一党である『悪党』の団員達が、何の因果かオレ達がやり込んでいたゲームの世界に「召喚」され、召喚主からの依頼を無事達成させた事により、こうして元の世界に「
ここでひとつ、良い子の皆に説明しておかねばなるまい。
それは、オレ達が「召喚」された時期の事である。 以前の話しの流れでは、その時期の事に関しては触れられた事はなかったのだが、まさかこんな「行き当たりばったり」なお話しが「現実世界」にも及ぼうなんて一体誰が予測しただろうか。
{*いや本当に……}
お……おぅぅ……まさか「
まあ今はその事はどうでもいい、「これから」のお話しでは割とオレ達が「召喚」された時期は大切なので、ここで“サラッ”と述べてしまおう。
……と、言うより、最早この「第一話」の題名を見ても判る様に、オレ達がゲームの世界(?)に「召喚」されたのは、新学年(或いは新学期)が始まる前、そう「春休み」の時期だったみたいなのだ。
あの当時オレは高校1年生……そして妹の「ノエル」は中学3年生、そんな妹ノエル……「
「兄さん、一緒に学校に行きましょう?」
「んーーー?んーーー……なんだか、かったるぃなあ……。」
「そんな事言ってるから、兄さん友達が出来ないんですよ。」
今一瞬、これを読んでいる君達は、読んでいる作品を間違えたのではないか―――と、思った事だろう。
なぜならば、以前のお話しに於いてはオレの事を散々罵倒し、更には隙あらばマウントを取ろうとして来る不届きなヤツが「ノエル」だったからだ。
だが―――現実世界に戻ってしまえば、「引っ込み思案」で「
まあーーーそれはそれでいいのだが……
「あのなあーーー乃亜、お前いまなんつった? 『オレに友達が出来ない』? はんっ!違うね……オレには友達が『出来ない』んじやなくて、『作ろうとはしない』のさ! なぁーーーぜならば、このオレの話題についてくるヤツがいないからだあぁぁ……」
「兄さん、兄さん、止めよう?現実逃避なんて哀しくなるから……だって兄さん、涙を流してまで力説する必要なんてないんだよ。 だって兄さんには……の、乃亜がついているんだから。」
うんっーーーよく出来た妹だ。 兄ちゃん感動して涙出てくらい!
しかしなんだよなあーーーなんでこいつは、ゲーム内と現実内とではオレの扱いに対してこうも
それにしても、今ひとつ判らんのは、オレの妹である乃亜は「兄貴」としての
しかも中学生の時には「陸上部」に所属しており、短距離走のエースだったことからも判る様に、地元の割りと有名で特待優遇してくれる高校(公立・私立問わず)からの
「なあーーー乃亜、なんでお前オレが通う高校にしたんだ? 他にさあ、有名な選抜高校や進学率の高い私立の高校から特待生優遇で勧誘受けてたんだろう?」
「うふふ、さてどぉーーーしてでしょ~~ね。」
「まさか……じゃないけど、『オレが通ってる』からだけじゃないよなあ?」
「おお~ーーー凄い、兄さん。 半分は正解、と言っといてあげる。」
「(は?)『半分』?……って、もう半分はなんなんだよ。」
しかし、その「もう半分」は妹の口から語られることはなかった……とは言え、大体は判っちゃっているんだけれども、な。
* * * * * * * * * *
そうこうしている内に「始業式」も終わり、オレ(達)はそれぞれに割り当てられた教室へと散らばって行った。
さてその前に、先程からオレはやたらと「オレ(達)」等と言う言い回しをしているわけなのだが……何故だか判るだろうか?
それは、だなあーーー
「コラ、そこ!無駄口を叩かず教室へ戻りなさい! それに、そこのあなた、そんな華美なモノをつけて勉学に励めると思っているのですか。 弛んでいると言うなら……その性根、叩き直して差し上げてもよろしいのですが?」
「雷鳴一喝」と言う表現も似つかわしく、生徒指導の先生よりも厳しいと言われている『怜悧の風紀委員長』……「
なんでもこのお人のお家柄と言うのは、古式ゆかしきお武家さまの出なのだとか。 しかもその先祖から受け継がれている武道―――「居合道」を継いできており、ご多聞に洩れずこの「靜香」と言う高校3年生の先輩も、高校1年生の時に「師範代」の資格を獲得したのだとも言う。
しかも―――
「姉さま、もうその辺で許してやっては頂けませんか。 彼ら彼女も広く
実は今のが、源野靜香の妹である「
もう察しの良い人には判ったかもしれんが、この二人こそが「イザナミ」「イザナギ」の“
そうーーーなんとこの高校には、偶然かはたまたは運命の悪戯か、例のゲームでのオレの一党のメンバーが揃いも揃ってしまっちゃっているのである。(それと、乃亜がオレの高校を選んだ理由もどことなく“お察し”出来たものと思う。)
それと―――気にはなったものだとは思うが、“あと一人”欠かせないヤツがいることを忘れてはならない。
そーーーう……以前の話しやゲームの世界では、“オレの嫁”を僭称して病まない実に困ったサン、「クローディア」である。
あいつの経歴を紹介した時、大きな「?」が頭上に浮かんだことだろう。 それというのも、あいつの“
だから勉学に励む―――よりも、もう既に手に職を持っているわけなのだ。
この事は、実はオレにとっては幸福の極みである―――と、言っていいだろう。
だって、以前の話しにもある様に,あいつときたら所構わず……と言うより、時間も状況も考えずにオレ(の貞操)を
オレとしては日頃の疲れを癒す為にゲームの世界(観)に浸っていたいのに……これじゃ本末転倒なんだよなあーーー。
だから、「学校」と言う場所は、今やオレにとっての格好の「憩いの場」でもあるのだ。
ただ―――「憩いの場」だとしても、油断は
* * * * * * * * * * *
―――と、言うのも……
「竜児殿、この学年からは同じ教室で共に学ぶ身。 一緒に勉学に、遊興に愉しもうではないか。」
以前から言っている事なのだが、「イザナギ」の
そんな“リア充ぢょ子高生”サマが、
ヤメろぉ~~!ヤメるんだあぁ~!ヤメてくれえぇぇえ~!! おまいにしてみればゲームの延長線上だと思っているかもしれないが、これは割とオレにしてみれば死活問題なのだぁあ~!!
ぬぁぜならば……
うおっ!早速きやがったぜぇ……オレを視る、刺す様な視線―――
いや、そうですよねえーーー判ります、判りますよ? オレみたいな学校カーストの底辺にいるような
しかし、ここで対応の選択を誤ってしまってはならないのである。 もし誤ってしまおうモノならば、この後の惨事は回避できないだろう……からだ。
だから―――オレは―――無視をした。
これ以上こいつと関わってはならんと、オレの内の警鐘が鳴り響くのだ。
それに、あいつとはまたゲームの中で会ったりもするしなぁ、だから必要以上の接触を避けたのだ。
* * * * * * * * * * *
“避けた”―――の、だが、これが最悪の結末を招こうとはあぁぁっ!
それというのも、連れない態度をしたこのオレに対し、巴惠が―――巴惠が……巴惠があああっ!!
その、整ったお顔立ちの頬を、
……て、ええっ? ゲーム内では
それがどぉーーーして涙流しちゃうのぉ? いやしかし……これは割とピンチである。
判っているだろうか?今の状況を……周りにはオレと巴惠だけじゃなく、
『涙は女の(最大の)武器』とはよく言ったモノで―――立ち待ちの内にオレを取り巻く視線は「殺意」の籠ったモノにぃいい?!!
や……ヤベえぞ、何か今日がオレの「リアル終了」の日になる予感がしてきちまった……。
「先輩―――源野先輩、なら途中までですが私と一緒に参りませんか?」
「ああ……確か君は。」
「安倍乃亜と言います。 今後ともよろしくお願いしますね。」
「安倍……ああ、竜児殿の妹か。 この学校に来たようだな、これからもよろしく頼む。」
なんとか―――公開処刑は回避されたが……今のやり取り、事情を知らない
そう、今のやり取りにしても事情を知らない
それというのも、以前のお話しにもあったように、こいつらは(何故か)オレの占有権を獲得する事に関してだけは互いを譲らない処があると言うか……
まあーーーこれが、クローディアのリアルがこの場にいない事でオレには一時の安らぎが得られていると言う事の外ならないワケなのだが……???
なんか今…………イヤな予感してきたの、オレの気のせいか?
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